スクウェア・エニックスのオンラインゲーム「ファイナルファンタジー(FF)14:新生エオルゼア」が人気だ。8月27日にPCとPS3版が発売されると、予想を上回る売り上げを記録してアクセスが集中し、サーバーの負荷軽減のため、異例の販売制限を実施して話題となった。だが、3年前サービスを開始した旧FF14は一度失敗し、ゼロからの出発を余儀なくされている。再生の道のりを振り返った。(毎日新聞デジタル)
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2011年11月の同社中間決算説明会。説明に立った和田洋一社長(現会長)は同年9月に発売されたばかりのFF14について「サービスが満足のいく状態でなく、急ピッチで改善中」と失敗を認め、その後、12年3月に発売予定だったPS3版の無期延期を発表した。原因はゲームの完成度の低さ。高性能のPCでもうまく動かないことがあったり、遊ぶ内容がすぐに底をつくなど、ユーザーからの不満が殺到したためだ。
この発表でシリーズ累計1億本を売る人気シリーズの看板は傷ついたが、信頼を回復するため、同社は徹底した情報開示をするとともに、稼働中のFF14を改善しながら別にまったく新しいFF14の開発を行う「同時並行開発」という業界では前代未聞の挑戦に取り組んだ。
そして、改善を続けたFF14は昨年12月に「世界が崩壊する」というストーリーを用意して終わらせ、新作「FF14:新生エオルゼア」は「旧FF14の5年後」という世界にして、物語をつなげるようにして見事にバトンタッチした。もちろん旧FF14を遊んでいたファンは、新FF14を無料でダウンロードできる救済策を取った。
今年から始まった新FF14のテストプレーには、育てたキャラクターが正式サービススタート時には消えるにもかかわらず、1時間以上プレーしたユーザーは50万人に上り、平均プレー時間は30時間。中には300時間遊んだユーザーも出た。正式サービスがスタートすると、同時アクセス数は、最盛期に55万人の会員を集めたオンラインゲーム「FF11」を上回り、販売やアクセスを制限するほどの爆発的人気を博している。
新FF14はFFシリーズの売り物でもある美しいゲーム画面はもちろん、快適な操作性、多彩な遊びが用意されており、1人でも、複数による協力プレーでも遊べるようにするなど、旧FF14で指摘された問題点を解決。現在の人気は、ゲームとしての魅力を取り戻したことももちろんだが、「これまで閉鎖的だった開発方針を改め、ユーザーとコミュニケーションを図り、透明性の高い開発を行うことで、コンテンツに対しての信頼感、期待感を獲得できた」と同社が分析するように、失敗を失敗と認めることで原点に戻り、信頼回復を果たせたことが大きい。
ゲーム業界に詳しい国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表の小野憲史さんは、ゲームを立て直せたのは非常に珍しいケースとした上で、「きっかけは単純にゲームの質の高さ。(同時並行の開発という)前代未聞の離れ業を実現させた開発陣のこだわりはすごい」と称賛する。
ゲーム開発の指揮を執った吉田直樹プロデューサーは8月に行われた新FF14の発表会で「5年、10年と愛されるゲームを目指したい」と語った。失敗から学んだFF14が今後、どのような展開をみせるか目が離せない。
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