女優の池脇千鶴さんが、山田孝之さん演じる主人公の妻役で出演した映画「凶悪」(白石和彌監督)が、公開中だ。2人の凶悪犯と対峙(たいじ)するジャーナリスト・藤井(山田さん)を支える妻・洋子について、演じた池脇さんは「普通の人」だというが、義母の介護に疲れ果てていくという難しい役どころ。池脇さんに役柄についてや女優という仕事に対する思いを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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映画は、ノンフィクション書籍「凶悪 −ある死刑囚の告発−」(新潮45編集部編)が原作。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で、すし屋の大将を演じているピエール瀧さんが、今作では一転、事件を告発する死刑囚の須藤役に挑み、事件の首謀者で“先生”と呼ばれる男・木村をリリー・フランキーさんが演じている。
出演作は、基本的に役では選ばず、台本で選んでいるという池脇さん。「エグいけれど、こういう映画があったら面白い。山田君とかがやるんだったら、絶対すごいものができそう、できるならやりたいと思いました」と目を輝かせた。過去にも共演したことがある山田さんの演技については「彼の吸引力はすごかった。彼は藤井としてそこにいるんですよ、もう山田君じゃない」という。「みなさん1カ月くらい前に撮影していて、私が山田君と再会したときには、狂った目をして憔悴(しょうすい)しきって、藤井そのものでそこにいました」とその演技を絶賛した。
自身が演じた洋子は、仕事にのめり込んで家庭を顧みなくなった夫に傷つき、劇中での描写はないが、自宅で介護している義母に手を上げてしまうという役どころ。洋子と自身との共通点は全くないという池脇さんだが、「役としても洋子という人物がとてもちゃんと描かれていたので、『これはできるな』と思いました」と語った。役作りについては「想像でしかないんですが、洋子という人の苦しさはすごく身近に感じられた」といい、「自分自身にもいつ起こるか分からない。親に介護が必要になったとき、どこまで優しくいられるか。私も優しくいられないと思うんです。虐待してしまうかもしれないという恐怖が想像しやすかった。その素直な感情に沿っていけば大丈夫だった」と熱く語る。
洋子の心情や演技について、白石監督からのアドバイスは?と聞くと、「監督はほとんど演出していないですね。他の人にもそうだと思います。『池脇さんが思うようにやってください』と言われました」と明かした。しかし、撮影期間は「地獄だった」と振り返る池脇さん。「全部がすごく苦しいシーンばかり。タイトな期間でそんなシーンを一日に何度も撮る。精神的にも肉体的にも苦しいんですけれど」と苦笑しつつ、女優の顔を見せる。
同作品に限らず、演技については「基本的に演技の心情については相談しないんですよ。それは私にしか分からないから。違っていたら監督が修正して導いてくれるので、私は私が思う役をそこに出すだけ」と心のままに演じている。女優の仕事は池脇さんにとって「他の人生を歩ける仕事。なかなかない状況だと思いますね。仕事は好きです」と笑顔で語った。
次回は、池脇さんの休日の過ごし方や将来について、またプライベートなどについて聞く。
<プロフィル>
いけわき・ちづる。1981年11月21日生まれ、大阪府出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。97年、8代目三井のリハウスガールに選ばれデビュー。99年に「大阪物語」(市川準監督)で映画デビューを果たし、同作で数多くの新人賞を受賞。その後、2001年はNHK連続テレビ小説「ほんまもん」で主演し、03年「ジョゼと虎と魚たち」(犬童一心監督)、04年に「きょうのできごと」(行定勲監督)など映画のほか、07年はNHK大河ドラマ「風林火山」に出演した。13年は、映画「凶悪」に出演し、主人公を支える妻・洋子を演じている。今後は10月26日公開「潔く柔く」(新城毅彦監督)、14年には「神様のカルテ2」(深川栄洋監督)、「そこのみにて光輝く」(呉美保監督)の公開が控えている。
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