超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、ゲームのデジタル配信について語ります。
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ゲームビジネスのデジタル配信への移行が止まらない。米ゲーム会社大手のエレクトロニック・アーツ(EA)は7月31日に開催された定期総会で、家庭用、PC、モバイルを含む全世界のゲーム市場が、2005年の250億ドル(約2兆4000億円)から、2013年は600億ドル(約5兆9000億円)に拡大、そのうち70%がデジタル流通によるものと分析した。自社の2013年度におけるデジタル流通による売り上げも、前年対比36%増の17億ドル(約1600億円)と発表しており、これは全売上高の37億ドル(約3600億円)のうち、45%を占めている。
市場の拡大を支えているのが、モバイルゲームやソーシャルゲームで、ビジネスモデルはF2P(フリー・トゥー・プレー=基本プレー無料・アイテム課金型)が主流だ。家庭用ゲームにおいても、パッケージによる売り切りビジネスから、追加コンテンツの有料配信と組み合わせる複合型が増えてきた。EAにおいても、デジタルの売り上げのうち、約半分弱を占めるのが追加コンテンツだ。次世代ゲーム機でも、この傾向が進むと思われる。
ただし複合型のビジネスモデルでは、その中途半端さゆえにユーザーの批判も受けやすい。PS3向けにバンダイナムコゲームスから発売された「ジョジョの不思議な冒険 オールスターバトル」もその一つだ。前評判が高く、約50万本のヒット作となったが、ビジネスモデルの告知が不十分だったことも手伝って、発売後にインターネットで批判を浴びた。ユーザーに気持ちよく課金してもらうための配慮が不足していたのだ。
ビジネスモデルの変化は、コンテンツに影響を与える。100円を投入して遊ぶアーケードゲームではアクションやシューティングが中心だったが、家庭用ゲームでは長時間遊べるRPGが人気を集めた。FP2はソーシャルゲームと結びつきやすい。しかし、一部のコアゲーマーには、ビジネスモデルやコンテンツの変化を敬遠する保守的な傾向もみられる。今回の例も、そうした潜在的な不満が背景にあったと言えるだろう。
もっとも、時計の針は元には戻らない。特にF2Pゲームでは、できるだけ多くのユーザーに無料でゲームを遊んでもらい、ネット上で話題を集めて、課金アイテムの販売につなげる施策が求められる。一方で炎上につながるようなネガティブな反応には、迅速かつ適切に対応することが肝心だ。ユーザーコミュニティーの健全な育成や、企業としての付き合い方が求められているのだ。
そのためにはタイトル単位ではなく、企業として横断的にユーザーコミュニティーと向き合うセクションが重要になる。多くの企業では宣伝・広報がこの役割を担っているが、一歩進んで「コミュニティーマネジャー」としての位置づけが必要だろう。もっとも、ファミコンブームのころには多くの「ゲーム名人」が活躍し、自然と役割を担っていた。今こそデジタル流通時代に即した、新たな「ゲーム名人」が求められるのではないだろうか。
おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長をへて2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚し、妻と猫3匹を支える主夫に“ジョブチェンジ”した。11年から国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表に就任、12年に特定非営利活動(NPO)法人の認定を受け、本格的な活動に乗り出している。
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