37年前、1976年に製作されたブライアン・デ・パルマ監督によるサイコホラーをリメークした「キャリー」が8日から全国で公開された。デ・パルマ監督版ではシシー・スペイセクさんが演じていたヒロインを、「キック・アス」(2010年)や「ヒューゴの不思議な発明」(11年)に出演していたクロエ・グレース・モレッツさんが演じている。地味で内気な女子高校生という設定に、モレッツさんは可愛過ぎるのではないかと思われたが、そこは持ち前の演技力でカバーし、プロムの夜、惨劇を引き起こすヒロインを堂々と演じている。「ボーイズ・ドント・クライ」(1999年)のキンバリー・ピアース監督が手掛けた。
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原作はスティーブン・キングさんの同名小説。学校でいじめられ、家では狂信的な母マーガレットに厳しく育てられているキャリー(モレッツさん)は、あるときを境に自分には特別な力があることに気付く。そんな中、キャリーへのいじめで教師にこっぴどくしかられたクラスメートは、プロムパーティーを利用してキャリーへの仕返しを企てるが……という展開。
いじめっ子の憎たらしさや人間の残酷性はオリジナルに比べてパワーアップしているが、デ・パルマ監督版をなぞったような展開で、前作を知っている人には衝撃度は低い。その一方で、デ・パルマ監督版では見境なく人をあやめていたキャリーは、今作では助けるべき人を助ける“良識”を見せたり、いじめの手段にスマートフォンが使われるなど現代性がアピールされ、細部には変化がつけられている。母と娘の関係性がより強調されているのも今作ならでは。その母マーガレットを演じているのがジュリアン・ムーアさん。色がまだらになったボサボサの髪の毛に、世俗から少しでも自分の肉体を隔絶しようとしているかのような地味な洋服を着て登場し、一心不乱にミシンを踏んだり、裁縫道具で自分の足を突き刺したり。モレッツさんより、むしろムーアさんの鬼気迫る演技の方が怖かった。8日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌の制作会社、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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