2014年にデビュー10周年を迎える歌手のBENIさん。最近は、男性ボーカリストの名曲を英語詞でカバーしたシリーズがヒットし、累計60万枚のセールスを記録している。その第3弾となる「COVERS 3」を18日にリリースした。その「COVERS 3」について、また10周年を迎える気持ちを聞いた。(榑林史章/フリーライター)
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−−「COVERS 3」は、どんな作品になりましたか?
過去2作を出させていただいて、それでもまだ歌いたい曲が残っていたので、それを思い切って出し尽くそうと。第3弾ということで……よく3部作という言い方をしますし、自分の中で一つ区切りを付けるような気持ちもあって。そこでBEGINさんの「島人ぬ宝」など、以前からずっとカバーしたいと思っていた曲を収録しました。あと、ネットでファンのみなさんが聴きたいと思う曲を募集して参考にしたので、すごくみなさんとの距離が近い作品になったと思います。
−−先行シングルとしてリリースしたレミオロメンの「粉雪」のカバーは、ファンのみなさんからのリクエストですか?
リクエストもたくさんありましたが、私が個人的に歌いたいとずっと思っていた曲の一つです。最初はラジオか何かで聴いたと思うのですが、「これって誰の曲?」とすごく驚いたことを覚えています。メロディーもきれいだし、抑えていた感情がブワッとあふれ出すようなところがすごく好きで、毎年冬になると聴きたくなるんです。
−−「粉雪」は、キーが高くてカラオケでも難曲として有名ですよね。
私もカラオケで何度か歌って難しいと感じたことがありましたが、本気のレコーディングとなると、さらに大変でした。とにかく音域が広いし、そのときののどの調子がバレバレになってしまうので、ボーカリストとしてすごく試される曲ですね。とはいえ、感情の部分もすごく大事で、パーフェクトに歌えば伝わるかといったらそうではなくて。頑張って歌っている感があったほうが、むしろ感情が乗りやすいんです。
−−今までは「粉雪」というとサビにばかり耳がいっていましたが、BENIさんのカバーを聴いて、改めてメロディーのよさを実感しました。
「COVERS」ではそういう発見が毎回あって。この曲はすごく日本っぽいなとか、この曲はもともとがすごく洋楽っぽいなとか。それも(カバーアルバムを)作っていて楽しいことの一つです。「粉雪」は日本語の歌詞があってこそというイメージが強いですが、英語で歌ってみたら実はすごく洋楽っぽくて、意外でした。
−−タイトルの「粉雪」を叫ぶサビの部分など、印象的なフレーズに英語の歌詞を当てはめるのはすごく大変だったでしょうね。
悩みましたね。単純に直訳にして「Powder snow」にしようかとも思いましたが、実際に歌ってみるとちょっと違うんです。それで「私を白く染めて」という意味を英語にして、「粉雪」と語感が近いもので「Come color me in~」としました。
−−毎作大人っぽい仕上がりですが、今回は「ランナウェイ」や「WON’T BE LONG」「ワインレッドの心」など、40代以上の大人が楽しめる楽曲が収録されているのもポイントですね。
聴く季節や場所、世代さえも問わないところが「COVERS」シリーズの最大の魅力で、それは今回も変わっていません。こういう古い曲は、私も知らないうちにたくさん耳にしていて、気付いたらメロディーが頭に入っていたので、変に意識することなくノリノリで歌えました。どれもいい意味でシンプルな曲だけに、それをどうBENI風に装飾するか考えるのがすごく楽しかったです。遊び心のあるサウンドも楽しんでください。
−−BEGINさんの「島人ぬ宝」は、BENIさんの出身地である沖縄色豊かなナンバーなので、特に思い入れがあるそうですが。
10代のころから聴いていた思い出深い曲なので、今回歌うことができてすごくうれしかったです。でも、この曲に込められたメッセージがしっかり伝わるものにしたいと思ったので、英語詞はすごく慎重になりました。
ーー沖縄の方言は、標準語にするのも難しいですからね。
はい。そこで「島人ぬ宝」は、「treasure of my home,our island dream」と訳しました。みんなで輪になって、これが私たちの宝ものだと歌っているイメージです。曲に込められているメッセージは非常にシンプルでストレートなのですが、島以外の人には分からない部分もあって。その部分で、原曲では言っていないけど、きっとこういうことなんじゃないかという私なりの答えを入れたりして、より分かりやすくなるように工夫しています。
−−沖縄色はなくて、むしろ極上のソウルミュージックに仕上がっていますね。
沖縄っぽさって三線の音とか掛け声とかいろいろありますが、あえて入れませんでした。それは沖縄という先入観を持たずに聴いてほしかったからです。最初はそれで伝わるか不安もありましたが、メロディーの美しさが際立って、原曲とはまた違ったよさを引き出せたと思います。曲に込められている魂は変わらないので、英語で歌っていてもウルウルしますね。
−−さてBENIさんは来年でデビュー10周年ですが、この10年、BENIさんの背中を押してきたものはなんですか。
音楽に対する“愛”です。今もそうですが、そのときどきの自分を作っているのが音楽の存在だといえるほどです。あと、負けず嫌いで100%満足することができない性分なので、次へ次へと走ってしまう自分がよくも悪くもいるというか……。言い方を変えると、ずっと自分探しをしているとも言えますね。
−−では、今後の活動で具体的にやりたいことや、残したいものはなんですか。
もっと大きなステージで、もっとしっかりと、そのときの時代に合ったメッセージを伝えていきたいです。私の歌で一人でも多くの人の心を動かしたり、背中を押したりすることができたら、それだけでも幸せです。あと、ワールドツアーをやるのが小さいころからの夢なので、将来的には実現させたいですし、今度はカバーではなくオリジナル曲で英語のアルバムを作ってみたいし。まだまだやりたいことがいっぱいありすぎます!
<プロフィル>
沖縄県出身。2004年にデビュー。08年のシングル「もう二度と…」がヒットしたほか、13年7月にリリースした最新アルバム「RED」は、オリコン週間ランキングで7位というヒットを記録。12年のカバーアルバム「COVERS」はオリコン1位を記録し、「第27回日本ゴールドディスク大賞 企画・アルバム・オブ・ザ・イヤー」など多くの賞に輝いた。ファッションリーダーとしても活躍し、多数のファッションアイテムのプロデュースも手がける。来年2月15日には、大阪城ホール(大阪市中央区)で開催されるイベント「LIVE SDD 2014」に出演。