2人のF1レーサー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントの宿命の対決を描いた「ラッシュ/プライドと友情」が7日から全国で公開された。2人にとって運命を懸けた対決となった1976年のグランプリを、圧倒的なスピード感で撮り上げたのは、「アポロ13」(95年)、「ビューティフル・マインド」(2001年)などの作品で知られるロン・ハワード監督だ。主人公の2人、ラウダとハントに「グッバイ、レーニン!」(03年)のダニエル・ブリュールさんと、「マイティ・ソー」(11年)、「アベンジャーズ」(12年)でおなじみのクリス・ヘムズワースさんがふんし、「クィーン」(06年)や「フロスト×ニクソン」(08年)のピーター・モーガンさんが書いている。
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かたや、自由奔放で酒もたばこも女も好きな英国人のハント(ヘムズワースさん)と、かたや冷静沈着で完璧主義者、「走るコンピューター」の異名を持つオーストリア人のラウダ(ブリュールさん)。76年のグランプリ(GP)は、ラウダ優勢で進んでいた。ところが、8月のドイツGP。悪天候を理由にレースの中止を求めたラウダだったがレースは決行。ラウダの車はクラッシュし、彼は重傷を負ってしまう……というストーリー。
30台を超えるカメラが、レースシーンの圧倒的臨場感を作り出した。ドライバーのヘルメットにもカメラを搭載することで、観客もF1レーサー気分をひととき味わうことができる。F1ファンにとって“伝説的”といわれる76年の富士スピードウェイでのレースシーンも忠実に再現された。来日した際、ハワード監督はこのシーンについて「観客がたとえ結果を知っていてもそのシーンに入り込んで、ハラハラドキドキしてもらいたい、そう思って撮った」と語っていた。レースシーンがそうした疾走感と緊張感を与える一方で、主人公2人の細かな仕草が、彼らの内面を浮き彫りにしていく。事故後、肺にたまったうみを、痛みに耐えながら吸引するラウダの目は、テレビに映るハントを追っている。そこに浮かぶ表情に、彼の焦りと闘志が見て取れる。
映画にはまた、ありし日のハントとラウダの写真も映し出している。その中には、2人が親密そうに話し合っているものもある。反発し合いながらも引かれ合う2人。死と隣り合わせの過酷な状況だからこそ、そこで生まれた友情は、特別なものだったに違いない。7日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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