ガッチャマンクラウズ:時代の変化に合わせて“リブート” 中村監督が語る裏側

(C)タツノコプロ/ガッチャマンクラウズ製作委員会
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(C)タツノコプロ/ガッチャマンクラウズ製作委員会

 「科学忍者隊ガッチャマン」から生まれた33年ぶりの新作テレビアニメシリーズ「GATCHAMAN CROWDS(ガッチャマンクラウズ)」。昨年9月まで放送され、日本テレビでは、金曜深夜2時台の放送にもかかわらず、番組平均視聴率で最高2.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録するなど人気を集め、第2期の制作も決定している。SNSが浸透した現代社会を描いたストーリーやガッチャマンのイメージを覆す斬新なキャラクターデザインを採用したことも話題となり、時代の変化に合わせて旧作を“リブート(再起動)”したなどと評価する声も多い。企画当初、「東日本大震災が大きかった」と振り返る中村健治監督に制作の裏側や今後の展開などを聞いた。

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 ◇旧作は時代を反映した作品 現代に合わせて強度を与える

 「ガッチャマンクラウズ」は、2015年初夏の東京都立川市を舞台に、超科学を持つ宇宙人に力を与えられ、人間を害する異星犯罪者や未確認物体を秘密裏に処理する影のエージェント・ガッチャマンの活躍を描いた。1月には第1期のブルーレイ(BD)・DVDボックスが発売。本編で描かれなかったシーンのスペシャル映像なども特典として収録されている。

 「科学忍者隊ガッチャマン」は昨年、松坂桃李さんや剛力彩芽さんら豪華キャストによる実写映画も話題になったが、「クラウズ」は、実写版とともに復活を盛り上げるために企画された。中村監督は、白羽の矢が立った当初を「そもそも『ガッチャマン』に強い思い入れがあったわけではなく、子どものころ、テレビでやっていた……くらいでした。話も覚えていなかった」と振り返るが、同作について調べる中で「公害問題を扱うなど、社会性があった。一見、子ども向けだが、時代を反映した作品」と気付いたという。

 企画は、「主人公が必ず変身する」など最低限の決まりはあったが、「基本的に好きなように作っていい」と告げられたという。中村監督は旧「ガッチャマン」が内包していた社会性に目を付け、「現代に合った強度を与えたいと考えた。ハリウッド映画は社会問題を取り上げつつ、エンターテインメントにしているものもあるが、僕らはなぜやらないのか? 刺激的だったり、ネタっぽい作品にとどまらせるのではなく、現代の日本人のために作ることを考えた」と作品の方向性を決めていった。

 ◇きっかけは震災 みんなが当事者と気付く社会に

 「クラウズ」は、GALAX(ギャラックス)というSNSが普及した社会が舞台となっており、誰もがフェイスブックやツイッターで情報を発信、共有するようになった現代と通じるところがある。中村監督はSNSに着目した経緯を「東日本大震災が大きかった。SNSでさまざまな情報が飛び交う中、誰の意見を信じたらいいのか分からない。判断能力がないことに気付いた。それに、SNSから本音がドロドロと出てきて、日本人ってこうだったんだ……と思ったんですね」と明かす。「ただ、今は絶望は必要ないし、ポジティブになりたい。無責任かもしれないが、ファンタジーとして未来を描ける。生きていくためのヒントになればと考えた」と話すように、希望のある世界を描こうとしたという。

 「クラウズ」でSNSは、政治家が市民の意見を集めたり、市民が社会参加できるようになるという描かれ方をした。一方で、SNSは悪意を増幅させることもあるという一面を暴き、警鐘を鳴らした。ネット社会や政治が大きなテーマとなっているが、中村監督は「作品で政治を変えるとかは考えていない。身の回りのできることから考えよう。世の中はすごいスピードでは変わらない。みんなが当事者だと気付く……ということを描きたかった」と語る。

 ◇デザインは旧作を意識せず タツノコ作品のリスペクトも

 主人公・一ノ瀬はじめらガッチャマンの変身後の姿となるGスーツのデザインも話題になった。旧「ガッチャマン」は鳥をイメージしたデザインで統一されていたが、「クラウズ」では、はじめはピンクと白を基調としたゴスロリ風、リーダーのパイマンは手に大きな車輪を装備し、変形する……というようにキャラクターによってバラバラで、旧作のイメージを覆すデザインが採用された。中村監督は「もともとのデザインは意識はしていなくて、一体がそれぞれ主役になるようなものを目指した。ただ、羽根があったり、Gマークがデザインされている。デザイナーさんが『ガッチャマン』世代だったからでしょうね。パイマンのGスーツは(タツノコプロの)『タイムボカン』シリーズ風にも見えますしね」と説明する。

 現代性を内包したストーリーと斬新なデザインを採用した「クラウズ」。中村監督によると、旧作のイメージを白紙にして新たな作品を作ったという意味で「リブート(再起動)した」という評価もあるという。また「(舞台の)立川市の中学生や小学生からサインを求められることがあるんですよ。DVDを買ってくれる層ではないのですが、アニメに興味をもってもらえるのはうれしいですね。普段、深夜アニメを見ない人にも見てもらえるような作品を作りたいので」と話すように、幅広い層の支持を集めたようだ。

 注目が集まる第2期について「どのようなものが敵になるかは見えています。物語は終わったと思うかもしれませんが、終わっていません。1話を見たときにドキドキしてほしいですね」と語る中村監督。次なる“リブート”はどのように行われるのだろうか? 今後の展開に目が離せない。

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