注目映画紹介:「ニシノユキヒコの恋と冒険」 モテ男を竹野内豊が雰囲気たっぷりに演じた

(C)2014「ニシノユキヒコの恋と冒険」製作委員会
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(C)2014「ニシノユキヒコの恋と冒険」製作委員会

 川上弘美さんの同名連作短編集を映画化した「ニシノユキヒコの恋と冒険」を、ロングランで好評を得た「人のセックスを笑うな」(2007年)の井口奈己監督が手がけ、モテモテの主人公ニシノユキヒコを竹野内豊さんが好演している。ニシノを取り巻く7人の女性を、尾野真千子さん、成海璃子さん、木村文乃さん、本田翼さん、麻生久美子さん、阿川佐和子さん、中村ゆりかさんが演じる。真実の愛を求めて紆余(うよ)曲折するニシノの恋愛模様が描かれる。

ウナギノボリ

 ニシノ(竹野内さん)の周囲にはいつも女性たちがいた。ルックスがよくて仕事も順調、セックスもよく、女性の扱いもうまく優しいニシノ。みなみ(中村さん)は、ニシノの過去の不倫相手の娘。かつて料理教室でニシノと仲よくなった主婦のササキ(阿川さん)と出会い、ニシノの恋愛遍歴を聞くことになる。会社の上司のマナミ(尾野さん)と元カノだというカノコ(本田さん)とはダブッた時期があったようだし、マンションの隣人の昴(成海さん)を夢中にさせながら、タマ(木村さん)にちょっかいを出したりもする。真実の愛を求めて恋愛を繰り返すニシノだが、女性たちはなぜだか最後には彼の元を去っていってしまうのだった……という物語。

 女性に警戒心を与えず、母性本能をくすぐる行為が自然にできてしまうニシノ。甘えるような目つきと低音の優しい声で竹野内さんが雰囲気たっぷりに演じている。飄々(ひょうひょう)とした雰囲気ながらも、どこか寂しさをまとい、まるで猫のような男性だなと思っていると、原作に出てくる隣人が飼っている猫が突然登場し、映画的な効果を生み出している。女優陣は可愛らしさが全開し、せりふや動作が自然な時間の流れの中にあって、女性を可愛く描く井口監督の演出がさえわたる。中でも尾野さんは表情豊かに、風貌も会社員になりきっていてその演技の自然さに舌を巻く。引きで長回しを多用したのちに見るラスト近くの中村さんのアップが、このラブストーリーの終焉(しゅうえん)を告げるかのようで切ない気持ちにさせられた。8日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほかで公開中。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。

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