地方自治体や商工会のアニメ関連のイベントへの出展が増加している。東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された国内最大級のアニメ展示会「AnimeJapan(アニメジャパン) 2014」には10団体以上が出展し、アニメやマンガの舞台になった町をファンが訪れる現象“聖地巡礼”をPRしていた。中には、既存の作品に頼るのではなく、自治体がアニメ制作に携わり、自ら“聖地化”する動きもあり、聖地巡礼ビジネスは多様化している。
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アニメジャパンでアニメ関連のイベントに初出展した富山県南砺(なんと)市は、市内を舞台にしたオリジナルアニメ「恋旅~True Tours Nanto」を紹介。同市を舞台としたアニメ「true tears」を手がけたP.A.ワークスが制作した作品で、声優として吉野裕行さんや井口裕香さんらが参加している。同作が斬新なのは、一部は同市内にいないと見ることができないところだ。視聴には、GPS(全地球測位システム)機能を利用した専用スマートフォンアプリが必要で、第1話の前編は全国で見ることができるが、後編は同市を訪れなければ再生できない。続きが気になるファンが同市を訪れ、“聖地巡礼”をしながら作品を楽しめるようにしたわけだ。
同市の交流観光まちづくり課の山口泰弘さんによると、市内には世界遺産の「白川郷・五箇山の合掌造り集落」があることから、年配の観光客が多かったというが、アニメの配信後は若いアニメファンが増え、「観光客が3倍になったスポットもある」という。アニメジャパンに出展したのは「若い人は、ネットを使った発信力もあり、リピーターになる率が高いので、どんどんアピールしたい」と、さらなる知名度アップを目指すのが狙いだ。同市の取り組みは、新たなビジネスモデルになるかもしれない。
地方自治体ではないが、札幌市のアニメ制作会社「ハートビット」のブースも“聖地化”をPRしていた。同社は、北海道石狩振興局の公式PRキャラクター「フランチェスカ」を制作しており、7月から道内で同キャラクターが登場するアニメの放送がスタートすることが決まっている。同社の熊谷仁志社長は「地域密着型のアニメが今後は増えると思う。ご当地アイドルだけではなく、ご当地声優も生まれるのでは」と話しており、地方から人気に火が付き、全国区になる……という展開も考えられる。
また、全国の聖地やマンガ、アニメに関する施設を紹介するブース「アニメ&キャラクター列島JAPAN」を出展。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)」の埼玉県秩父市、「Wake Up Girls!」の仙台市、「かんなぎ」の宮城県七ケ浜町などの聖地を一挙に紹介し、展示に見入ったり、写真を撮るファンの姿も多く見られた。
聖地巡礼が観光資源として注目される一方で、行政の知名度アップや経済効果のための露骨な仕掛けに対し、そっぽを向くファンもいる。また、「アニメの放送前から行政が期待して聖地をPRしたが、アニメが人気を集めず、製作したグッズが全然売れなかった……という話も聞く」という関係者の声もあり、作品がファンの心をつかめなければ、観光資源にはならない。南砺市のような斬新なアプローチも作品自体が支持されなければ、ファンが聖地巡礼に訪れることもないだろう。今後も各自治体の手腕が問われそうだ。
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