ゲーム業界では近年、個人や少人数で開発される「インディーズゲーム」に注目が集まっている。3400万本以上を売り上げた「マインクラフト」のような大ヒットソフトも出現。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)やマイクロソフト(MS)もインディーズゲームの開発者を囲い込むべく動いている。インディーズゲームが注目を集めている背景を探った。
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インディーズゲームとは、個人や小規模な人員で開発されるゲームソフトのことだ。PC用ソフトとして開発されるのが普通で、同人ソフトと呼ばれるものも含まれる。ゲーム販売店などに並ぶ家庭用ゲーム機向けのパッケージタイトルとして発売されるものは極めてまれだ。音楽業界で「メジャー(大手レコード会社)」と関連しない小さな制作会社やアーティストを「インディーズ」と呼ぶが、「大手レコード会社」を「大手ゲームメーカー」に置き換えれば、インディーズゲームのイメージがつかめるだろう。
インディーズゲームが注目されるのは、現在のゲーム業界が抱える問題と関係している。家庭用ゲーム機向けのソフト開発は、ゲーム機本体の高性能化に伴い、多額の費用がかかるようになった。ゲームで表現できる映像や音響の幅が広がった分、必要となるデータ量も増えるからだ。ファミコン時代の開発費は数百万円だったが、今は億単位の費用が必要。ゲーム開発は、今や失敗は絶対に許されない“一大プロジェクト”となった。
その結果、ゲーム会社は販売数が予測しやすい続編ゲームを開発し、大規模なプロモーションをかけて出す傾向が強まった。背景には、ゲームソフトが返品できない日本国内特有のビジネスモデルも影響しているのだが、いずれにしても意欲作が生まれづらい状況になった。
オリジナルの新作や、斬新なゲームは売り上げを予測しづらいうえ、ゲーム販売店からも在庫を圧迫する可能性が高いため、敬遠される。意欲的な開発者は、斬新なアイデアを盛り込んだゲームの企画書を提案するが、冒険的な企画ほど却下されてしまう。そこで「それなら自分たちで作る!」と考える開発者が現れ始めたことで、インディーズゲームが注目を集めている。
ゲーム業界の課題克服のため、インディーズゲームに白羽の矢が立った理由は二つある。一つはインターネットの普及により、ゲームのダウンロード販売が可能になったこと。物理的な在庫を持つ必要がなくなり、少量の販売も低リスクで行えるからだ。スマートフォンやタブレット端末といったゲーム機以外でゲームが遊べることも追い風になっている。
もう一つは、ゲーム業界にただよう閉塞感だ。ハードは高性能化したが、ソフト自体は複雑で分かりづらいものが増えた。「ゲームはマニア向けのもの」というイメージは、残念ながら決して的外れとはいえず、「昔はゲームを遊んだが、最近はね……」という人も多い。昔のゲームファンを呼び戻すかは業界全体の課題となっている。
そこでSCEとMSは、インディーズゲームの投入で、誰でも手軽に遊べて、ゲームの面白さを思い出させる作品を、安価に提供するべく動いている。両社は、プレイステーション4(PS4)やXboxOneでインディーズゲームを積極的に売り出すため、開発体制を支援。有力なインディーズゲームの開発者を獲得するために力を入れている。
ただ、インディーズゲームがゲーム業界にどこまでのインパクトを与えるかは未知数。日本国内では、SCEがPSVitaやPS4向けの国産インディーズゲームをようやく仕込み始めたところで、本格的なリリースは年末ごろになる見通し。一方のMS陣営は、XboxOneがまだ日本で発売されていないこともあり、具体的な動きはまだ見えてこない。参加を表明するインディーズゲーム開発者の数もまだ限られている。各社とも期待を寄せてはいるが、どう広めていくべきかを探っている段階だ。
そもそも店頭に並ばないインディーズゲームを、ゲームから離れ、専門誌も読まなくなった消費者にアピールするのは至難の業だ。インディーズゲームは、革新的な作品が生まれて業界の起爆剤、救世主となる可能性を秘めている半面、失敗すると誰の目にも留まらないまま消えていく危うさも抱えている。どのような手段で認知を高めていくのかが成功のカギを握りそうだ。(石田賀津男/フリーライター)
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