名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
今年で連載20周年を迎える青山剛昌さんのマンガが原作の人気アニメ「名探偵コナン」の劇場版最新作「名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)」が全国で公開中だ。高層タワーで起きた狙撃事件をきっかけにコナンが謎のスナイパーと対峙(たいじ)するミステリーで、女子高生探偵の世良真純や、コナンの正体である工藤新一の家に居候している謎の大学院生・沖矢昴といった重要キャラクターが劇場版に初登場することでも注目を集めている。原作者である青山さんに、劇場版やキャラクター作りについてなど話を聞いた。
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「いつも爆発じゃないですか」といって豪快に笑う青山さん。今作では劇場版シリーズでスナイパーが初の犯人として登場することについて、「今回はちょっと爆発じゃないものにしたいなと。スナイパーはいつかやりたかった。向こうは見えているのにこっちは見えないというのがスナイパーは怖い。でもコナン君は(犯人追跡)メガネで見えているじゃないかと(笑い)。コナン君もスナイパーみたいなものですよ」と新たな試みをジョークを交えながら語る。
スナイパーとの対決も初めてなら、世良真純や沖矢昴といった重要人物たちが劇場版に登場するのも初めてとなる。青山さんは「こんなにサービスしたのは初めてかもしれない」といい、「まだ原作ではやっていないことを、だいぶネタバラししちゃっている。映画を見ないとマンガが分からないというわけではないですが……」と今作の内容が原作の今後の展開に大きくからんでくることを明かす。
原作者が劇場版に参加する形はいくつかあるが、「原作ファンに楽しんでもらおうと思って、1作目からすごく関わっています」と青山さん。続けて「モンキー・パンチ先生みたいに『僕は見るのが楽しみだから』と、お任せでもいいと思うこともありますが(笑い)、これはこれで楽しいです」と劇場版への原作者としてのスタンスを語る。製作にも大きく関わっているという青山さんにとって、劇場版はどのような存在かと聞くと、「バイオリズムみたいなもの」という答え。その理由を「(劇場版公開の時期は)原作でも盛り上げなければと、(劇場版に)怪盗キッドが出てきたら原作でも怪盗キッドを出して盛り上げる。バイオリズムみたいな感じで、五輪選手が五輪に向けて体調を整えるのに似ているかもしれない。一番盛り上がる感じの話を持ってきます」と話し、「今回みたいに原作と同じネタで盛り上がるのは初めてかな……」と劇場版での初の試みがあったことを明かす。
印象に残っているシーンとしてクライマックスでの対決シーンを挙げ、「ベルツリーでの撃ち合いはカッコよかった」という。またゲスト声優として出演した俳優の福士蒼汰さんと、お笑いコンビ「パックンマックン」のパックンことパトリック・ハーランさんの声を「よかったです」と気に入った様子で、「パックンさんもよかったですが、特に福士さんのクライマックスの演技がカッコよかった」とたたえた。
原作は連載20周年、劇場版も18作目と歴史を重ねてきているが、アイデアはどのようにして生まれてきているのだろうか。青山さんは「映画を見ていたりドラマを見ていたりするとき」がアイデアの生まれるきっかけになることがあるという。どのようなジャンルの映画を見るかと聞くと「ミステリー系が多い」と答え、「最近では『パシフィック・リム』が好きで、いつもレンタル店で借りるだけが多いのですが、面白いと思ってブルーレイディスク(BD)を買っちゃいました。あとは(ジョニー・デップさんが主演の)『ローン・レンジャー』は列車のアクションが面白かった。ミステリーとか謎を解くものは思わず買っちゃいますね」とミステリーものが気になってしまうと告白。そして「気になるせりふや演出があったら止めて戻してメモします」と研究に余念がないという。
魅力的で個性的なキャラクターが数多く登場する「名探偵コナン」。キャラクター作りでは「みんなには言っていない裏設定をいっぱい考えます」と青山さん。「裏設定があるのにもう死んでしまった人もいますが、『実はこうだったんだよ』というのを考えているから、たまに出すと深まるのかなと思います」とキャラクター作りについての持論を展開。そして「(裏設定を)考えるのも楽しくて、今すごく裏設定があるのは世良ちゃん。今回の劇場版でもそれを盛り込んでもらっています」と劇場版を見る上での新たに楽しみな要素を打ち明ける。
現在はポップカルチャーを提供する側の青山さんだが、自身が子供のころに熱中したものとして「『ルパン三世』はハマりましたし、マンガはちばてつや先生が好きでした。『あしたのジョー』より『おれは鉄兵』が好きで、作品を見て剣道を始めたぐらいです。あとはあだち充先生の『タッチ』とかですね」と作品名を挙げながら語り、「結構、みんなが好きなものが好きなんです」と笑う。自身がハマったものとして挙げた「ルパン三世」とのコラボが実現し、今後どのようなコラボをしたいかと質問すると「まさか実現するとは思っていませんでしたが、ルパンとはやっちゃいましたからね。秋には20周年を記念したスペシャル企画を用意していて、大きなコラボをやる予定で、面白くて正直、オススメです」と詳しくは明かさなかったが相当な自信作と見えて発言にも熱がこもる。
今作の出来栄えを「いい出来でカッコよくできていると思います」という青山さん。続けて「(週刊少年)サンデーを読む前に見たらもっとサンデーが楽しくなるかもしれませんが、まあどちらでも大丈夫です」とちゃめっ気たっぷりに笑う。「4月23日発売の週刊少年サンデーに掲載されている『名探偵コナン』では『緋色シリーズ』という入魂の新シリーズが始まったので、劇場版と一緒に楽しんでください」とファンにメッセージを送った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1963年6月21日生まれ、鳥取県出身。86年に小学館新人コミック大賞にて「ちょっとまってて」が入選し、翌年、同作が「週刊少年サンデー」合併号(小学館)に掲載されデビュー。87年に週刊少年サンデー増刊号での「まじっく快斗」連載を経て、88年には、後に第38回小学館漫画賞児童部門を受賞しテレビアニメ化もされた「YAIBA」を「週刊少年サンデー」で連載。94年からは現在も連載中の「名探偵コナン」の連載がスタートし、幅広い層から人気を集めて2度目の小学館漫画賞を受賞。同作は96年からテレビアニメ放送、97年には劇場版第1作となる「時計じかけの摩天楼」が公開された。連載20周年を迎える今年は、さまざまな企画が用意されている。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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