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11月3日(日)放送分
テニスの世界4大大会(グランドスラム)の一つ「全仏オープンテニス」。WOWOWでは、25日から6月8日にかけて行われる同大会の模様を連日生中継する。開幕を前に、解説を務める日本テニス協会強化副本部長の松岡修造さんとナビゲーターを務めるフローラン・ダバディさんが対談。日本男子選手初の世界ランキングトップ10入りを果たした“日本のエース”錦織圭選手ら注目選手や大会の展望について語り合った。
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ダバディさん:25日から全仏オープンが開幕しますが、昔と今の戦い方で違う部分はありますか?
松岡さん:この全仏オープンでは、選手たちの体力が試されます。昔と変わってきたのはスピードが出てきたことです。その中で、あのラファエル・ナダル選手でさえも、クレーコートではプレー方法を変えないといけない。今の状況だと、誰が勝つか分からないですね。
ダバディさん:体力勝負ということですが、ロジャー・フェデラー選手が「クレーコートは、技術的に完璧でなくても勝てるコート。一方で体力とメンタルが人一倍求められる」と話していました。スペイン育ちの選手はスライディングが得意ですが、ハードコートで育ってきた選手はそれを見習うべきでしょうか、それとも自分の戦い方をするべきでしょうか。
松岡さん:全仏オープンで、米国の選手やハードコートで育った選手が勝つのは難しいでしょう。クレーコートの魅力は、普段とれないボールがとれることです。それはスライディングがうまくないと難しい。錦織選手はクレーコートが好きだと言っていましたが、スペインの選手のような柔らかいスライディングの使い方はまだまだ。彼らはクレーコートでの勝ち方、フットワークに関して全然違うと思います。
ダバディさん:また、全仏オープンはコートだけではなく、四つのグランドスラムの中で一番天候に左右されやすい大会ですね。ずっと晴れていたのに、途中で雨が降ってくると流れもガラッと変わる。あとはパリのファンも勝負を占う要素の一つ。さまざまな要素が優勝を左右する全仏オープンですが、この大会でナダル選手は史上最多優勝と初の5連覇がかかっています。彼の強さを改めて教えてください。
松岡さん:一言でいうと、人間じゃないと思っています(笑い)。同じテニス選手とは思わないようにしています。彼はずば抜けて体力にたけている。私がナダル選手であの動きをしたら、1試合中10回は棄権していると思います。彼は多くのけがをしてきましたが、それを怖がらず全力で走りますよね。テニス界を変えた男、まさにアスリートです。
ダバディさん:ノバク・ジョコビッチ選手はナダル選手と戦う方法を見いだした選手の一人で、全仏オープンも優勝の期待がかかります。しかし、スタニスラス・ワウリンカ選手が全豪オープンで優勝したり、錦織選手とグリゴール・ディミトロフ選手がエキサイティングな試合を見せたりと、ビッグ4が強い時代の中でも多くの選手が活躍しています。修造さんが見る、今年さらに伸びそうな選手はいますか?
松岡さん:この人というよりも、時代が変わったと感じています。「いくら頑張ってもビッグ4がいるから無理なんだ」という時代は終わると思います。それが今年なのか分かりませんが、全仏オープンで崩れたら一気に変わるでしょう。それには、運が必要です。ビッグ4のうち誰かが早めに負けるとか、けが人が出るなど、いろいろな要素はあると思います。そのチャンスの中に錦織選手もいると思います。
ダバディさん:錦織選手といえば、1989年の全仏オープンで優勝したマイケル・チャンさんが昨年末からコーチにつきました。彼が錦織選手にクレーコートの攻略法をどう教えるのか注目が集まります。
松岡さん:日本人だけではなく、錦織選手には世界が注目しています。錦織選手と話したとき、彼は一番変わったのがストロークだと話してくれました。チャンコーチは、ダメ出ししながら30分以上打ちこませるんです。単に打つのではなく、ステップをいつもよりも細かく確実にやらせる。それをこなしていくことで、錦織選手自身も強くなっていると感じているようです。チャンスボールが入ったときにより相手の視野も見ているし、パワーショットも打てている。これはチャンコーチが教えてくれた基本的なショットですね。これを忠実にやることが、クレーコートでは一番必要です。
ダバディさん:グランドスラムでは2週間、戦いが繰り広げられます。フルパワーのときもあれば、省エネで乗り越えなければならないときもあると思いますが、秘訣(ひけつ)はありますか?
松岡さん:チャンコーチは、力を抜くということはさせないと思います。より早く、正しく勝てと教えるでしょう。中途半端なプレーをコーチが許さないからこそ、今までにない錦織選手を、この全仏オープンで見られると思います。
ダバディさん:この前のデビスカップで活躍したダニエル太郎選手は、初のグランドスラム予選突破を目指します。彼はバレンシアのクレーコートで育っている選手です。彼の進化をどう見ていますか。
松岡さん:彼は将来トップに行く力を持っていると、デビスカップを見て感じました。彼はスペインにいてフェデラー選手やナダル選手と一緒のパーティーに呼ばれて一緒に食事をしたりして、いつも彼らといた。私が彼の立場だったら怖くて行くことなんてできないですよ。
ダバディさん:トップ選手に対しても平常心でいられることは、デビスカップで見せてくれた強いメンタル、逆転するタフさからも分かりますね。彼はスペイン語も話せるし、ジュニア時代から世界の中に入っていく環境にいるのは、一番の強みだと思います。
松岡さん:テニスについては私より背が高くて動きもいいですが、狙いどころやサーブの使い方がもったいないですね。彼の武器になるはずが、弱点に見えてしまう。サーブを打つときのリズムやプレーする際のコートでのポジション取りがもう少しうまくなれば、相当手ごわい選手になる気がします。
ダバディさん:女子の日本勢についてお聞きします。やはり代表的なのはクルム伊達公子選手で、メキシコの大会でも活躍してくれました。ベテラン選手になると、リカバリーやコンディションの維持が重要になります。彼女の1年ごとの目標はなんなのだろうと私たちは不思議に思いますが、修造さんはどのように見ていますか。
松岡さん:私はテニス以外のアスリートの方と話す機会もあるのですが、伊達選手ほど不思議な人はいないです。彼女は本当に負けず嫌いですね。試合に負けたときの悔しさが、彼女に現役を続けさせているんだと思います。年齢的なものを考えると、グランドスラムの本戦にいるだけでもすごいのに、彼女はそれだけでは納得していない。まだ勝てると思っています。あのライジングショットは誰一人として打てないですし、あの速い展開は今の女子選手の中にいないと思います。
ダバディさん:若い世代にも頑張っていただきたいのですが、フェドカップで日本は森田あゆみ選手がけがでいなかったこともあり、苦戦しています。一方で奈良くるみ選手が、南米でいい成績を残し、クレーコートでの優勝を果たしました。日本選手で男女問わずクレーで勝てることは、本当にすごいと思います。彼女にはぜひその波に乗ってほしいですね。
松岡さん:奈良選手は、本人も分かっていると思いますが、今年が勝負の年です。このままトップに行くか、ランキング100位の選手に戻るか大事な時期です。奈良選手が強くなった背景には、プレーの中で攻撃するようになったことがあります。思い切ったプレーをしますし、信じて戦い続けてほしいですね。
ダバディさん:日本勢の活躍に期待したいですが、大会の優勝候補選手の一人が、セリーナ・ウィリアムズ選手です。彼女はサーブが持ち味なのですが、パワーだけではなくキックやスライスもできる。あのサーブをどう攻略するのかが、女子選手たちの課題ですね。
松岡さん:私は、サービスのトスの上げ方を見て、どこに飛んでいくか予測して解説するのですが、彼女は最も読みにくいですね。だから選手は、本当に戦いにくいと思います。しかもフォームがよくてパワーや回転もある。普通パワーがある選手は力で押したくなるのですが、彼女はいたって冷静にプレーをする。しかし、崩れる要素は多くなってきていると思います。今の若手の選手が粘りとともに、プレーでじわじわとセリーナ選手を追い詰めるでしょう。
ダバディさん:女子選手はスライスだったりいろいろ工夫すればいい。私は子どものころから(会場の)ローランギャロスで見ていました。記憶が定かではありませんが、当時見た試合では、何度もダイブしたり、ステファン・エドベリ選手がスライスを打ってずっと工夫していた。それを見てすごくおしゃれだなと思っていました。私がフランス人だからかもしれませんが、全仏オープンというのは特別な存在だと思います。修造さんは今回、現地フランスに行かれるとのことですが、視聴者の皆さんにどんなことを伝えていこうと思いますか。
松岡さん:全仏オープンの雰囲気を生で感じられるというのは、非常にワクワクします。今回は私がフランスから情報をお伝えしますが、その役割として絶対的に必要なのは、クレーコートだから戦い方が違うということだと思います。全仏オープンは、爽やかに晴れるときもあるし、一気にどんよりするときもある。その様子は、画面を通して伝わってくると思います。どういう伝え方をすれば、みなさんが大会を感じられるのか? フランスで起こる、さまざまなことを伝えていきたいと思います。
ダバディさん:ワクワク、ドキドキしますね。ありがとうございました。
*……全仏オープンテニスは25日~6月8日にWOWOWライブ、WOWOWプライムで連日生中継(初日は無料放送)。また特別番組「全仏オープンテニス 錦織圭 激闘スペシャル!」は6月1日午後5時にWOWOWプライムで無料放送される。
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2024年11月06日 01:00時点
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