真鍋昌平さんの人気マンガの映画化第2弾「闇金ウシジマくん Part2」(山口雅俊監督)が全国で公開中だ。2010年にテレビドラマが放送され、12年には第1弾映画の公開、今年1~3月にドラマ「闇金ウシジマくんSeason2」が放送され、4度目の映像化となる今作(スピンオフドラマを除く)。主演の山田孝之さんと、今作でウシジマと関わりを持つヤンキーを演じた菅田将暉さんに話を聞いた。
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映画「闇金ウシジマくん」は、山田さん演じる「カウカウファイナンス」の社長、丑嶋馨(通称“ウシジマ”)と、彼に金を借りに来る人間たちが繰り広げる悲喜劇を描いている。今作では、ホストナンバーワンの座を狙う神咲麗(窪田正孝さん)と、彼に金を貢ぐ高校中退のフリーター、藤枝彩香(門脇麦さん)、同業者のウシジマを過剰にライバル視する犀原茜(高橋メアリージュンさん)、犀原に莫大(ばくだい)な借金がある暴走族のヘッド、愛沢浩司(中尾明慶さん)など、これまでにも増して強烈な個性の持ち主たちが登場する。ほかに、彩香をストーキングする男・蝦沼(柳楽優弥さん)や、ドラマのシーズン2から参加のウシジマの情報屋・戌亥(綾野剛さん)も登場する。
この日、先にインタビューする部屋に入ってきたのは菅田さんだった。菅田さんは今回、愛沢明美(木南晴夏さん)のバイクを盗んだことをきっかけに、カウカウファイナンスで見習社員として働き始める加賀マサルを演じている。今作では、黒髪にケバい服を着たヤンキーになり切っていたが、目の前の菅田さんは金髪。現在製作中の映画「海月姫」(12月公開予定)で、女装男子・蔵之介を演じるためだが、3月まで放送していたNHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」での“昭和男子”とも、今回のマサルともまるで違う外見に、「見違えました」と声を掛けると、「そうですよね。次の作品がオシャレ男子なんです」と屈託ない笑顔を見せる。そこに山田さんが“ウシジマオーラ”全開で登場。コワモテのウシジマを演じているときの山田さんもカッコいいが、目の前のブラックスーツ姿の山田さんもキリッとしていてすてきだった。
その山田さんによると、山口監督は当初、前作のエピソードと今回のどちらを先に映画化するかで迷っていたという。しかし山田さんは「結果的に、こちらがパート2になってよかったと思います」と手応えを感じている。その理由の一つとして、登場人物が多いのは両作とも同じだが、全員が、林遣都さん演じる純とからみ、純がメインの話だった前作に対して、今作は「愛沢とマサル、麗と彩香の二つのストーリーが混じり合うことで、より群像劇の感じが出た」ことを挙げ、改めて今作を「面白かったですし、純粋に見事だと思います」と胸を張る。
今回の「ウシジマ」について、その役作りについて山田さんは、「一番最近のドラマのウシジマを見直して、もう少し詰めるところを見つけ、映画で詰めていこうという感じでした」と振り返った。山田さんによるとウシジマは「ちょっと特殊な物体」で、役作りもほかの作品の別のキャラクターとは一線を画す。「僕も彼(ウシジマ)のことを人としてしっかり中身を作っていないし、過去を探ろうともしていません。ヨーイ、スタートの掛け声がかかったときに、作り上げた外側の部分をかぶるような感覚なんです。服を1枚着るという感じかな。顔やバックグラウンドをしっかり作り上げて一度完成してしまうと、続編で新しいせりふ、新しい状況が出てくると作り直すのが大変ですが、外側だけを作り中は空洞なので、新しいものを付け足したり、むだなものを省いたりと細部までを磨き上げることができるんです。そういった作業は、ウシジマというキャラクターで、さらにこれだけ長く続けているからできることです」と語る山田さんからは、ウシジマに対する愛情が伝わって来る。
その言葉にじっと耳を傾けていた菅田さんは、「役作りに関してこういうふうに“語る”ことってなかなかできないですよね。それができるというのは、やっぱり経験なのかなあ」と、山田さんに尊敬のまなざしを向ける。その菅田さんは、自身が演じたマサルを「ぐっとこないクズ」と形容する。「マサルって、比較的この中では普通の人だと思うんです。愛沢さんのバイクを盗んだことでどんどん落ちていくんですけど、すごく悪いやつでも、すごくいいやつでもない。頭も、悪くもないけどよくもない。ですから、一般人の感覚で演じることを意識した」という。
原作も読み、ドラマも映画も見ていたという菅田さんにとって、ウシジマを目の当たりにしたときは、やはり圧倒されたようだ。そのときの様子を菅田さんは、「最初にすれ違うシーンが砂利道だったんです。その石を、ウシジマが歩くときの邪魔にならないよう(スタッフが)どかしていたんです」と振り返る。そして、その上を歩いてくるウシジマを目で追いながら、「(ウシジマの)上半身がぐわーっと迫って来るような威圧感」と「砂利道を歩くだけでも意識している隙のなさ」に「素直にびっくり」し、その感覚を演技に生かしたという。
マサルは、愛沢とその手下に袋だたきにされながらもくじけなかった根性をウシジマに買われ、見習社員として働くことになる。ウシジマにはすでに、側近の柄崎(やべきょうすけさん)や元ホストの高田(崎本大海さん)という部下がおり、彼らの結束力は強い。そのことは、マサルが加わっても「カウカウファイナンスの空気感は、まったく変わらない」と話す山田さんの言葉からも分かるが、もう一つ、結束力の強さについて、山田さんが興味深い話をした。「ウシジマをやっている時って、今日、撮影が終わったら何を食いに行こうかとやべさんや崎本くんと話すことがあるんですが、基本、カウカウファイナンスのメンバー以外は誘いません。そうやって、(ほかの人が)居づらい空気を作っているんです。ほかの現場ではそんなことはしませんが、ウシジマの現場でだけはそうしていますね」。ちなみに菅田さんも、見習いとはいえ社員になったので、一緒に食事に連れて行ってもらえたそうだ。
「どうせ演じるなら、自分が面白いと思えるものをやりたい」と語る21歳の菅田さん。「僕はどちらかというと真面目に生きてきた人間で(笑い)、悪いことといっても、宿題を忘れるぐらい。マサルのようにバイクを盗んでヤクザに引っかかってボコられたり、ガムテープでしばられたりしたことはありません。だから、そういう役を演じられることがすごく楽しい」と目を輝かせる。そんな菅田さんを、自分が21歳だったときのことを思い出し、「まだまだ必死でした。とにかく、いわれたことを精いっぱいやるという感じだったので、菅田くんがうらやましいです。楽しそうで」とつぶやく30歳の山田さん。すると菅田さんは「よくいわれます」とにっこり。
そんな2人に、犯罪者が主人公でありながら大勢の人々から支持されているこの「ウシジマくん」シリーズの人気の理由を分析してもらうと……。山田さんは「本当にこんなことがあるのかよ、こんなやばいヤツがいるのかな、みたいな疑似体験が味わえるところじゃないですかね。一歩つまずいた人がどこまで落ちていくのか、見てみたくなるんじゃないでしょうか。ほかにも、何事にもブレないウシジマがカッコいいという人もいるでしょうし、自分もそうありたいという憧れもあるでしょうし。ウシジマは犯罪者ではありますが、やべさんが『水戸黄門みたいなもの』といっていましたけど、いいかげんに生きているヤツらに制裁を加えるのを見るのが気持ちいいというのもあるんじゃないでしょうか」と分析する。
一方の菅田さんは「物語として、普通じゃない人が出てくると面白いですよね」と話す。すると山田さんが「いわゆる、一般社会になじめない人たちばかりが出てきているところが面白いんじゃないでしょうか。特に(テレビ)ドラマには債務者がどんどん出てくるから、また変なやつが出てきた、こいつは何をするんだろう、誰とからむんだろうということもあると思います」と補足する。それに菅田さんが「優越感っていうのもあるんですかね」と問いかけると、山田さんは「それもあるだろうね。人によっては、社会の底辺にいる者を見ることによって、自分はここまでは落ちていないという安心感を持つこともあるだろうし」と返した。ここで「人間は、他人の不幸を好む傾向にありますからね」と水を向けると、山田さんは「小さい生き物ですからね」と神妙に答えた。この言葉に菅田さん、「(話が)まとまった!(笑い)」と、またも山田さんに尊敬のまなざしを向けていた。映画は16日から全国で公開中。
<山田孝之さんプロフィル>
1983年生まれ、鹿児島県出身。テレビドラマ「ウォーターボーイズ」(2003年)などで注目され、映画「電車男」(05年)で主演。主な出演作に「手紙」(06年)、「クローズZERO」(07年)、「鴨川ホルモー」(09年)、「十三人の刺客」(10年)、「GANTZ」(11年)、「悪の教典」「荒川アンダーザブリッジTHE MOVIE」「ミロクローゼ」「その夜の侍」(いずれも12年)、「凶悪」(13年)、「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」(14年)などがある。出演した映画「MONSTERZモンスターズ」が5月30日から公開。
<菅田将暉さんプロフィル>
1993年生まれ、大阪府出身。2009年に「仮面ライダーW」で、シリーズ史上最年少ライダーとしてデビュー。その後、映画では「麒麟の翼~劇場版・新参者」「王様とボク」(ともに12年)、「共喰い」「男子高校生の日常」(ともに13年)、「そこのみにて光輝く」(14年)。テレビでは「泣くな、はらちゃん」「35歳の高校生」「ごちそうさん」(ともに13年)などに出演。映画「チョコリエッタ」が今夏、「海月姫」が12月に公開予定。
(取材・文・写真:りんたいこ)
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