アニメ質問状:「ギガントシューターつかさ」 “脱萌え”で一石投じる 12人弱で制作

(C)FHO/ギガントプロジェクト
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 話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回はNHK・Eテレで放送中の「超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューター つかさ」です。森りょういち監督に作品の魅力を語ってもらいました。

ウナギノボリ

 −−作品の概要と魅力は?

 「超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューターつかさ」。……一見分かるようで、まったく分かりませんよね? このアニメ(笑い)。

 このアニメはざっくりいうと、架空のメンコ競技「ギガントシューター」をこよなく愛する主人公・面道つかさを中心に繰り広げられる、学園もののおバカアニメです。とにかく日常の問題ごとを何でもギガントバトルで解決しようとするつかさと、それに文句を言いながらもついていく愉快な仲間たちのお話です。

 目指したのは「ミニ四駆」や「ベイブレード」やそのほか、カードバトルものなどの少年ホビー系アニメ。それを僕らなりにアレンジして、大人も子どもも「ツッコミ」ながら楽しめるギャグアニメにしたものです。

 ストーリーはあってないようなものですが、実はちゃんとあります。一見ただのバトルアニメパロディーがやりたいだけのように、今のところは見えますが、ちゃんと深い設定があるのです。これは少しずつ解き明かされていくと思いますので一年間しぶとくお付き合いくださいませ。

 −−CGの表現などアニメにするときに心がけたことは?

 心がけたのは二つ。まずは「制作システム」です。バカバカしいアニメ作っていて、まじめな話するのはなんですが、このアニメはかなりまじめに制作システムを構築しています。映像そのものは弊社FOREST Hunting Oneで完全に内製しているのですが、(コンテや音響、プロデューシングなどは省く)制作人数はたった12人足らずです。しかも福岡で作っています。

 再放送はあるにせよ、レギュラーアニメとしてはかなりの少人数です。そこで意識しているのは「かつてのアニメ制作がそうだったから」というルールから脱却すること。キャラの動きのタイミングを記すタイムシートや、正確なレイアウトなど、セルアニメの制作工程には必要不可欠なものを、バサバサと切っています。

 CGという技術があるのに、アナログ時代の工程をへる必要は実はなかったりします。常に、新しいアニメを作っている、そう全員が意識して作っていますね。おかげでスタッフには徹夜もないですし、土日はお休みです。「マジか!?」って思われる方もいると思いますが、これは普通だと思いますし、そうならないとアニメという文化がいずれなくなりますね。

 あともう一つは、「キャラクターデザイン」です。まず初めて見た方は衝撃を受けますよね? このアニメのキャラクター、初見では全然可愛いと思えない(笑い)。ギャグアニメですが、笑えるキャラクターデザインを目指すことよりも意識したことがあります。それは「脱萌(も)え」。

 昨今のアニメはとにかく「萌え」デザインに毒されています。「ちょっとくらい違うのがあってもいいでしょう?」といつも思ってしまいます。アニメって本当はもっとクリエーティブだったはずなのに、デザインがどうも記号化され過ぎているんですよね。それをこの「ギガントシューターつかさ」というアニメだけでも別のベクトルを提案したかったんです。

 目が丸くてキラキラして顔の4分の1くらのデカさがなくても、つぶらな小さな目でも、キャラクターの表情って出せるんですよ。見せ方次第です。だって僕はヒロインのミル子が可愛いと思って作っていますから(笑い)。

 −−Eテレの子ども向けのアニメということで意識したことは?

 主人公が小学生ですし、バトルものということで子ども向けに作ってはいますが、意識しているのは大人です。大人に向けた笑いが、実は子どもたちにもウケたりするんですね。これは僕ら大人が子どもたちをあまりに子ども扱いし過ぎている落とし穴かもしれません。実は子どもたちって背伸びをしたがるんですよ。そして大人のネタを理解しようとして、知っている自分が誇らしかったする。なので、子ども向けというのを特別に意識しないように作っていますね。

 あと、大事なメッセージとしては「継続は力なり」ですかね。主人公のつかさは、主人公なのに、ギガントバトルが超弱いんです。大体勝てないんです(笑い)。でも往生際が悪く、何度も偉そうに戦いを挑むんですね。主人公だから無条件に強いって、なんか不公平ですよね? 現実って決してそんなことないですから。「負けても、弱くても、好きだからやり続ける」そんな主人公の方が僕は絶対カッコいいと思います。だって僕は主人公の「つかさ」がカッコいいと思って作っていますから(笑い)。

 −−作品を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったことは?

 うれしかったことは、そもそもこんなアニメ企画がNHKさんで通ったことです! その事実そのものが最大にして最強のギャグですからね。「NHKの本気!」なんてネットで話題になっていますが、まさにそうだと思いますよ。すごい英断です。

 大変なことはその先でした。企画が決まったのが昨年の11月でした。オンエア開始は今年の4月1日。そのオンエア開始に間に合わせるためには、1月には最初の1話が完成していないといけない状態でした。11月の時点ではほんとに数少ない設定というか企画書しかなかったのですが、もうすべてが同時進行の超特急でした。

 そもそも「ギガントシューター」というメンコバトルはどんな競技なの? ギガント(メンコのこと)ってどんな形? バトルシーンって何が出てくるの? てかあなた誰??みたいな。

 僕自身も分からないことだらけ、一個一個つぶしていく……ではなくて、3、4個を同時につぶしていく感じでしたよ。これはほんとにグルーブ感ありまくりの状況でした。さぞかしプロデューサーの高山(晃)さんも不安だったと思います(笑い)。

 −−今後の見どころを教えてください。

 今後の見どころというか、毎話のことですが、次の話の予想がまったくできません。いつも予想展開の斜め上を行っていますから。見どころは毎話としか言いようがありません。この辺は脚本家の細川徹さんの見事な手腕ですね。毎回、脚本チェックで爆笑します。

 そして他作品とのコラボはちょっとびっくりネタを用意していますのでお楽しみ。意外なところと意外じゃないけどつっ込まざるを得ないところと、いろいろと準備しております。こうご期待。

 −−ファンへ一言お願いします。

 皆さまにご覧いただいておりますおかげで、このアニメは成り立っております。疲れた体に「笑い」というちょっとした栄養を届けるアニメでございます。今後もご贔屓(ひいき)をお願いいたします。

 そして、この「ギガントシューターつかさ」の劇場版、見たいですよね? いつかスクリーンで展開したら、みんなで笑ってスカッとできちゃう。いい体験ですよね? 僕も制作陣営の全員が見てみたいです!! そう思います。

 「テレビアニメを見て、話題にして、楽しむ」というファンの皆さまと僕ら制作者とのキャッチボールがきっと映画という目標を達成するでしょうね、いつの日か。継続は力なり。これからも皆さま、一緒に楽しんでいきましょう!!

FOREST Hunting One 監督 森りょういち

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