瀬戸内海賊物語:主演・柴田杏花と担任役・小泉孝太郎に聞く「宝物を探したい気持ちが宝物」

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 2011年に開催された「瀬戸内国際こども映画祭」エンジェルロード脚本賞のグランプリ作品を原案に、受賞者の大森研一監督がメガホンをとった「瀬戸内海賊物語」が公開中だ。映画は、瀬戸内海の島を舞台に、4人の少年少女が実在した海賊「村上水軍」の財宝を探すために冒険する姿を史実を交えながら描いている。主人公の村上水軍の総大将・村上武吉の末裔(まつえい)である少女・村上楓を演じるのは、オーディションで1027人の中から主役に選ばれた柴田杏花さん。今作が映画初主演となった柴田さんと、楓の担任・宇治原清秀役を演じる小泉孝太郎さんの2人に、小豆島の印象やロケのエピソード、今作の魅力などを聞いた。

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 ◇1000人を超えるオーディションで射止めた主演の座

 今から2年前に行われた小豆島でのロケが初対面だったという柴田さんと小泉さん。「すごくすがすがしいというか透明感のある子だなと思った」と小泉さんは柴田さんの第一印象を語り、「主役はものすごい重圧があると思いますが、それをしっかりと受け止める中で周りの子供たちに対してもすごく気配りができる子。(オーディションで)選ばれたということは、何か輝きを持っているんだなというのは覚えています」と振り返った。一方、対面するまでは小泉さんをテレビでよく見ていたという柴田さんは、「その場にいるだけでやっぱり空気感が変わるし、(小泉さんが)ちょっとおっちょこちょいな先生という偉そうな感じの役ではなかったので、本当に私の先生のように思えてきました。撮影期間自体は数日しかなかったのですが、それでも本当の先生のように見えるのはすごいなと思います」と、小泉さんの演技力と存在感に魅了されたことを明かす。

 1000人を超える応募があったオーディションの末、今作の主演の座を射止めた柴田さんだが、オーディション合格の知らせを聞いたときには「オーディションのときからすごくやりたかったので、(合格は)叫ぶほどうれしかったです」といい、実際に叫んだかを聞くと「軽く……」といって弾けるような笑顔を見せた。柴田さんの発言を聞いた小泉さん自身も「そりゃ叫ぶよね」とほほ笑み、自身も「えっ!?という意外な依頼だったら叫ぶ」と告白。続けて、「『本当に?』とマネジャーに聞き返します。(僕自身も)依頼がくるということはうれしいですから、毎回うれしさはもちろんあります。でも今回、杏花ちゃんは主役な上にオーディションでトップになったら、それは(叫ぶほど)うれしいですよ」と柴田さんの気持ちに共感する。

 物語の舞台となるのは小豆島をはじめとする美しい海に囲まれた瀬戸内の島々。柴田さんも小泉さんも今作の撮影で初めて小豆島を訪れたという。柴田さんは「島に行くということ自体も初めてだったので、本当にこんな素晴らしいところで1カ月も撮影できると思うとうれしかったですし、幸せだなと思いました」と喜びをにじませると、小泉さんは「日ごろこっちで使っているしょう油が小豆島のものだったんだとか、エンジェルロードは小豆島なのかとか、いろんな楽しみ方があるというのを改めて気付いたし、とてものどかだった」と感じたという。

 ◇せりふの方言は「勘でやった」(小泉)

 小泉さんは映画の中で、関西弁のようなどこのものとはいえない方言を使っているのだが、「小豆島は一つの県だけじゃないいろんな方言や文化が集まる独特なところなので、一つだけじゃない魅力を感じました」という。「だから僕も劇中では関西弁ぽいのですけど、あれは実は勘でやりました。交柴田さんから「すごかったです(笑い)」と言われた小泉さんは、「正直、関西の方にどうなのか聞いてみたい。ひどいと思うんですけど、それを逆手にとって『なんだろうこの話し方やイントネーションは』と思われても、そこで楽しもうかなと。それは小豆島の風景や土地に助けられましたね」と話す。

 一方、柴田さんは方言が吹き込まれたCDを何回も聴いたといい、「実際に島で生活をすると、方言も自分の言葉のように出てくるので、普通にすんなりと方言のままアドリブも言えちゃうようになり、本当に島の人になっていたなと自分でも思います」と小泉さんとは逆に方言をマスターしたそうで、小泉さんは撮影のときも方言で話す柴田さんを見て「すごいな」と驚いていた。各キャストがさまざな工夫を凝らしていた現場の雰囲気を聞くと、柴田さんは自身とともに主要キャストを務めた伊澤柾樹さん、葵わかなさん(乙女新党)、大前喬一さんの3人の存在を特に挙げ、「4人は本当に家族みたいな存在になっていて、特に愛子役のわかなとはホテルの部屋が一緒だったので、本当に家族みたいな存在でした」と良好な関係が築けたと話す。

 そんな4人の姿を見て、小泉さんは「仲間なんだという感じはものすごく出ていました。短期間ですごい。本当のクラスメートのような感じで、誰か一人ちょっと疎外感があるとかじゃなく、チームになっていました。すばらしいなと」と絶賛。さらに「子供同士の話をしているかと思いきや、真面目に次のシーンの練習とかをしたりしている。『明日のシーンをちょっとやろう』とか何かほほ笑ましかったです」と本当の教師と生徒のような目線で感心したという。

 ◇岩を自分で登るシーンでは…

 今作では村上水軍が残したという埋蔵金を探しに楓らが冒険に出るのだが、海の上や岩場などハードなシーンについて、柴田さんは「後半は海の上や海の中でのシーンがほとんどだったので、体力的にもやっぱり最初は絶対大変だろうなと思っていたのですが、それが徐々に普通に、そして当たり前の生活になってきたので、すごく楽しんで撮影できました」とみじんの苦労も感じさせない。宝探しのシーンが「すごく楽しかった!」という柴田さんに、大変だったシーンを聞くと「『木登り感覚や』と言って岩を登るシーン」を挙げる。その理由を「背中にロープは付いていますが、それは落ちてきたとき用のロープで、引っ張ってくれるわけじゃない。全部、自分で登らないといけなくて、それがすごく怖かったです」と正直な感想を明かした。

 村上水軍という海賊や美しい風景、多彩な仕掛けが施された宝探しなど、魅力的なシーンの中で、2人が最も印象に残ったシーンは、「『フェリーをなくさないで』と大人たちに交じって説得しにいくシーン。物語の運命が左右されるシーンだと思うので、気合を入れて前日に何回も何回も練習して行きました」と柴田さん。小泉さんは「杏花ちゃんはじめ子供たちのエネルギーを感じたのが(子供たちのたまり場の)駄菓子屋でのちょっとしたやりとりで、あとは公民館のシーンはすごく覚えています。あのときは小豆島の方々もロケに参加してくれて、島の人たちもこの作品をものすごい楽しみにしてくれているんだというのが伝わってきました」と二つのシーンが印象に残っていると話す。

 今作のキーワードの一つである宝探しにかけて「2人にとっての“宝物”は」と聞くと、柴田さんは「その宝物を見つけに行く、宝物を探したいという気持ち自体が宝物だと思います」と答えると、小泉さんは「全部を言っていただいた気がします」と思わずうなずいた。

 ◇瀬戸内の景色とともに冒険を楽しんで

 今作のストーリーについて「4人で宝探しに行き、結果はどうあれ、そこにたどり着くまでに意味があったというか、4人で頑張ってきたこと自体に意味があるとすごく思うので、そこを見てほしい」と熱弁する柴田さんは、「どの年代の方にも何かを感じ取っていただける作品だと思いますので、ぜひ、すばらしい瀬戸内の景色とともに楽しんでくれたらなと思います」と完成度に自信をにじませる。

 子供のころ、「横須賀の沖合に『猿島』というちっちゃい無人島に夏休み、友だちと行って、昔の要塞跡だったりちょっとした防空壕がある薄暗いトンネル、裏は断崖絶壁の崖」がとても印象深い思い出と今作のような冒険の体験を持つ小泉さんは、「子供のころの『冒険したいな』『探検したいな』という気持ちは、大人になってもすごい大事だと思う。誰もが子供のときに持っていた“ワクワクドキドキする気持ち”のような純粋さや天真爛漫(てんしんらんまん)さが詰まった映画だと思う」と評した。映画は全国で公開中。

 <柴田杏花さんのプロフィル>

 1999年8月30日生まれ、東京都出身。2009年度「りぼんガール」で準グランプリを受賞し、「JIN−仁−」(TBS系)、「ハガネの女」(テレビ朝日系)、「幽かな彼女」(フジテレビ系)など数多くのドラマに出演するほか、CMでも活躍中。「瀬戸内海賊物語」で映画初主演を飾る。

 <小泉孝太郎さんのプロフィル>

 1978年7月10日生まれ、神奈川県出身。2002年にドラマデビューして以来、ドラマや映画、CMなどで活躍。13年はNHK大河ドラマ「八重の桜」はじめ、「夜行観覧車」(TBS系)などに出演し、「名もなき毒」(TBS系)では主演を務めた。バラエティー番組でも活躍中。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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