40年以上のキャリアを誇るロックバンド、クリエイションが、ヒット曲「SPINNING TOE HOLD」(1977年)、「ロンリー・ハート」(81年)などを新たにレコーディングしたニューアルバム「Resurrection(復活の意)」をこのほどリリースした。ドラマ「プロハンター」の主題歌となった「ロンリー・ハート」は、ゲストボーカルとしてJUN SKY WALKER(S)の宮田和弥さんが参加していることも話題だ。結成当初からのオリジナルメンバーでギター&ボーカルの竹田和夫さんに、新アルバムの話や「SPINNING TOE HOLD」「ロンリー・ハート」の制作当時の秘話などを聞いた。
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−−クリエイションは松田優作さんのツアーにも参加したことがあるそうですね。
「TOUCH」という優作さんの2枚目のアルバムに僕がアレンジャーで入っていて、そのアルバムのライブツアーをやりました。優作さんはそのころ俳優さんとしてもピークにあった時期で、歌も普通のシンガーにはない説得力がある人でした。すごくミュージシャンを尊敬していらっしゃって、いい人だったのでツアーも楽しかったですね。
−−竹田さんはこの20年間ほどは米国を拠点に活動しているそうですが、今回のアルバムを作ろうと思った理由は? また、実際に作業をしてみていかがでしたか?
昔の作品を聴き直すと、技術的にも感覚的にも「今だったらこうしたい」ということもあって、やり残したことへの決着というか。だから、アレンジとかも昨年の夏ごろから期間をとって、若いころにはやらなかったような準備をすごくして、今年の春にレコーディングをしました。メンバー全員がいろんな経験をへて、技術だけじゃない音楽的な幅をもって、元気で集まれているっていうところから出てくる音はやっぱり深いですね。
−−プロレスの兄弟タッグチームであるザ・ファンクスの入場テーマ曲にもなっていた「SPINNING TOE HOLD」(77年。シングル化は78年)の当時のエピソードを教えてください。
曲調がいかにも躍動感があってファンキーだったし、クリエイションは以前から、インストゥルメンタルの曲にはプロレスの技のタイトルを付けるという伝統がありまして、(このタイトルは)当時、最も好きだったチャンピオンの技だったということですね。別に入場テーマ曲として頼まれて作ったわけではなくて、テーマ曲として有名になったのはそのあとだと思うんです。プロレスのチャンピオン大会が毎年12月に日本武道館(東京都千代田区)であるんですけど、そこで聴きました。ザ・ファンクスが出てきて、自分のギターが流れて……。感無量でした。(本人たちに)会ったら「君が作ってくれたのか。何かあったらいつでも僕のとこに来い」なんて言ってくれて。だから強い味方がいつでも2人います(笑い)。
−−この曲はその後、バラエティー番組「笑う犬」シリーズの「生きる」というコントで、お笑い芸人トリオ「ネプチューン」の堀内健さんと原田泰造さんが、ザ・ファンクスのテリーとドリーに扮(ふん)し、「生きてるってなんだろう 生きてるってなあに?」と歌詞を付けて歌っていたのをご存じですか?
曲を管理してくださっている出版社の方が教えてくれて、曲のCDを米国まで送ってくれました。曲というのはすべて自分の分身みたいなもので、発表した時点で一人歩きしていくので、いろんな人に浸透してくということですね。テレビで見たわけじゃないんでリアリティーはないんですけど、興味深かったですよ。替え歌になってみんなに知られていくっていうのも面白いなと思いましたね。
−−ドラマ「プロハンター」の主題歌「ロンリー・ハート」についてはどうですか?
その当時のボーカルだったアイ高野っていうシンガーがいたんですけど、その彼がクリエイションに入って、2人でサイパンに作曲旅行に行こうということになって。4週間くらいいたんですけど、南十字星を見ながら、ものすごい数の曲を作っていったという。その中の1曲で、スタッフの人からそういう(主題歌の)お話をいただいて、使っていただいたっていうことですね。
−−今回のリメーク版では、ゲストボーカルにジュンスカの宮田和弥さんを迎えていますね。
彼自身はビートロックバンドっていうイメージがたぶん強いと思うんですけど、彼の作品や歌を実際に聴かせていただいて、素晴らしいシンガーだし、実際の録音のときもパーフェクトでしたね。「ああしてほしい。こうしてほしい」って言わなくても、向かっている方向や、作ろうと思ってる楽曲の新旧のブレンド具合が全部分かっていらっしゃって、良かったですよ。ホントにいい意味で相乗効果を生んだ、素晴らしいコラボレーションの例だと思います。
−−3曲の新曲も含め、もちろんロックというベースはありながら、ジャズ、ファンク、ラテンなどの要素も感じられるアルバムですが、多様なスタイルを取り入れて昇華するというのがクリエイションの音楽性なのでしょうか。
そうですね。その後のメンバーのキャリアが多方面にわたっていて、僕は米国ではけっこうジャズの曲を弾くことが多いし、樋口(晶之さん、ドラム)はファンクやフュージョンのセッションも多いんで、やっぱり経験したスタイルや要素が入ってますよね。もともとそうなんですけど、様式美の上にあるんじゃなくて、(クリエイションという)一つの旗のところに戻ってきたときに、自然に、それこそクリエイション(=創造)だから作っていこうよっていう。そういうイメージで作った結果だと思いますね。
<プロフィル>
1969年、ギタリストの竹田和夫さんを中心にブルース・クリエイションを結成し、同バンドを解散後、72年にクリエイションを結成。現メンバーは、竹田和夫さん(ギター&ボーカル)、樋口晶之さん(ドラム)、ヒロ小川さん(ベース)、ミック三国さん(キーボード)の4人。竹田さんが初めてハマッたポップカルチャーは「中学のころのリバプールサウンズとグループサウンズ」。「ビートルズとベンチャーズ。それから、新しいロックの夜明けといわれたウッドストック(米ニューヨーク州で69年に行われた大規模野外コンサート)。ロックの創世記で、ものすごい勢いで時代や価値観が変化していったときでした」と語った。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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