風吹ジュン:ペットを介して「夫婦関係が進化した」 「55歳からのハローライフ」第2話主演

NHK提供
1 / 5
NHK提供

 村上龍さんの短編小説集「55歳からのハローライフ」(幻冬舎)が、全5話のオムニバスドラマとして14日から毎週1話ずつ放送されている(NHK総合毎週土曜午後9時)。各話とも50代半ばから60代前半という人生の折り返し点を過ぎた中高年を主人公に、将来への不安を抱えながらも新たな道を探る姿を描く。第2話「ペットロス」では、定年退職した夫と2人で暮らすことに居心地の悪さを感じ、念願だった犬を飼うことで心のよりどころを求める55歳の主婦・高巻淑子役を風吹ジュンさんが演じている。主演の風吹さんに役どころや年齢を重ねること、ドラマの見どころについて聞いた。

ウナギノボリ

 ◇男性が神秘的に見えた

 今回のドラマ出演を通じて、風吹さんは「妻の目からでは分からない違う面が犬を介することで見えてきて、とても男性が神秘的に見えました」と話す。「妻の日常の行動範囲で犬を介して一人の男性を見つめることや、夫の知らない姿が見えてくるということはなかなかないですよね。それを取り上げているのが今回のお話の発見でした」と台本を最初に読んだときのことを振り返る。

 ドラマでは、心のよりどころとして犬が登場し、犬を飼うことで近所の愛犬家の男性にほのかな恋心を抱いたり、愛犬の病気が元で夫とけんかしたりしてしまう。風吹さんは「夫婦によくあることじゃないですか。結婚はしてみると習慣が違ったり、好きなものが違ったり。でも夫婦だから一緒に居続けることが多いような気がします」と冷静に分析する。

そして定年や年金が現実感を増し、体も思うようにならなくなる中での夫婦の関係は変化し、「女性は受け止めるか我慢するか。この年代になると『これから先どうするの』という問題にぶつかったときに、『私は犬に逃げよう』とか『趣味に逃げよう』とか『私も外で働こうかしら』とか、55歳は何かターニングポイントではあり、妻だろうと夫だろうとみんなが感じることだと思います」と持論を展開する。

 ◇50代で健康を見直した

 風吹さん自身の転機は子育ても一区切りし50代に入った10年前に訪れたという。「いろんな責任と肩の荷が下りて、自分はこれからどう楽しんで生きようかとか、どうしたら元気でいられるかということをすごく考えた50代」と振り返る。そういった中で「仕事がとても大事な宝物で、そのためにはやはり健康が一番大切だと思いました。健康だといろんなことができ、集中力が高まります」と力を込める。昨年もチベットの5000メートル級の山地を旅するなどアクティブな風吹さんは「健康について見直したことが、今はよかったと思います。元気になるとますます仕事が楽しいし、楽しめるようになりました」と満面の笑みを浮かべる。

 ◇だんなさんの魅力が後半出てきた

 夫婦役を演じた松尾スズキさんについて「(撮影期間中に)まさか結婚されるとは! 幸せだったんですね」と風吹さんは松尾さんの再婚に驚きながらも笑顔で祝福する。「(撮影の)最初はパーティーシーンで、他の奥さんを褒める場面から入りました。初めての現場でお互いが緊張していたこともありますが、すごく繊細な方だなと思いました」と松尾さんの印象を語る。また「お互いの気持ちに背を向けているような状況から始まるので、緊張しながら探り探りという状態は逆にやりやすかった」と程よい緊張感が前半を演じるのに好影響を与えたようだ。

そして、「撮影終盤、自宅のセットに入って、仲のいいシーンがまとめてあったので、リハーサル、カメリハ、本番と進むうちに手応えがどんどん変わっていき、だんだんと心が開けてくる役者さんとしてすごく魅力的でした。自然に順番で撮った効果があって、後半になるほど優しく包みこむようないいだんなさんの魅力を感じました」と感謝する。

 ◇妄想シーンではもっとはじけたかった

 原作と異なり、ドラマでは淑子が想像上の自分とやりとりをしながら物語が進行する。苦労したという妄想シーンについて「せりふはメロドラマふうで、ヨッシー(世良公則さん演じる愛犬家の義田)との関係がグッと男と女のリアルな感じになります。ドラマ全体のトーンや(犬の)ボビーをみとるというリアリティーのあるシーンを演じることを考えると、(実際の撮影のように)妄想シーンは抑えてよかったと思いますが、もう少しはじけたかったかな」と残念がる。「私自身が妄想するなら、全く自分にはない方向にいきたいですね(笑い)。テレビなどではじけたキャラを見るとマネをしたくなったりするんです」とちゃめっ気たっぷりに語った。

 ◇“気付き”がキーワード

 今作のストーリーは登場人物の同年代だけでなく、幅広い世代に訴えかけてくる。風吹さんは「アウェーク=気付く」をドラマのキーワードに挙げ、「自分に気付く、相手に気付くと受け入れられる。そういう意味ではすべての人にいいテーマだなと思います」と原作の奥深さに気付かされたという。そして年齢を重ねていくことに対して「心を開けるようになったり、包み込めるだけの包容力を持てればしめたもの。かたくなにならず、心を解放しようとイメージしたら年をとることが怖くない」と実感を込めて語る。

 物語の終盤、淑子と幸平の夫婦関係は新たな局面を見せるが、風吹さんは「気付きがあったので信頼関係は変わり、きっとこの夫婦の関係は“進化”しました」と表現。「男と女ではない“進化”した人と人とのリスペクトになった。『見ていてくれた』や『心配もしてくれた』というのを顔には出さず、言葉にもせず、でも態度にはちゃんと出ていたので、その方が深い。(愛犬家の義田と)間違いをおかさなくてよかったと思います」といたずらっぽくほほ笑み、「このあとはペットがいなくても2人で生きていけそうな気がします」と光明が差しているラストについて語った。

 *……「55歳からのハローライフ」は“老いていくことの希望”を描く5編のオムニバスドラマ。6月14日からNHK総合で毎週土曜午後9時~9時58分に放送。主演は、第1話「キャンピングカー」にリリー・フランキーさん、第2話「ペットロス」に風吹ジュンさん、第3話「結婚相談所」に原田美枝子さん、第4話「トラベルヘルパー」に小林薫さん、第5話「空を飛ぶ夢をもう一度」にイッセー尾形さん。

写真を見る全 5 枚

テレビ 最新記事

MAiDiGiTV 動画