MAGUMI:「忘れられたくないと思うので」上田現さん追悼ライブと並行して6人組別バンドで活動

LA−PPISCHのボーカル&トランペット担当で新たに結成したバンド「MAGUMI AND THE BREATHLESS」としても活動するMAGUMIさん
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LA−PPISCHのボーカル&トランペット担当で新たに結成したバンド「MAGUMI AND THE BREATHLESS」としても活動するMAGUMIさん

 日本のスカパンクシーンを代表するバンド「LA−PPISCH(レピッシュ)」のボーカル&トランペット担当のMAGUMI(マグミ)さんが、新たに結成したバンド「MAGUMI AND THE BREATHLESS」名義で、シングル「Electric Discharge」とアルバム「Demonstration」をこのほどリリースした。元ちとせさんの「ワダツミの木」のプロデュースでも知られるLA−PPISCHの元メンバー、上田現さんが2008年に亡くなって以来、追悼ライブをLA−PPISCHで行う一方で、3年ほど前からTHE BREATHLESSとライブ活動をスタートさせ、その中で作り上げたのが今回のアルバムだ。新作の話や上田さんとのエピソードについて、MAGUMIさんに聞いた。

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 −−上田現さんが作詞、作曲、編曲を手がけた元ちとせさんの「ワダツミの木」は、のちにトリビュートアルバム「Sirius~Tribute to UEDA GEN」でLA−PPISCHもカバーしていますね。この曲がヒットした当時はどんな気持ちでしたか?

 正直な話、普通に現ちゃんの曲だし、やっとクローズアップされたのかなっていう感じですね。現ちゃんからも「正直、なんであの曲があれだけヒットしたのか分からんのや。LA−PPISCHの曲のほうが全然苦労してるよ」って(笑い)。でも現ちゃんの代表曲になったので、(トリビュートで)やるんだったらLA−PPISCHがやるしかないかなって。レコーディングのときは、やっぱりちとせちゃんの歌を聴いているから、俺までコブシが回っちゃうんですよ(笑い)。現ちゃんのことを思い出してセンチメンタルにというふうには歌えなくて。

 −−LA−PPISCH時代の上田さんとの思い出で印象に残っていることは?

 ホテルで俺と同部屋になったとき、荷物の3分の2は忘れていくんですね(笑い)。しかも(ドラムの)雪好から借りたマンガまで忘れていってる。僕は細かい方なんで、その荷物を全部ビニール袋に入れて……。かと思うと、すごく貧乏なときに現ちゃんだけ部屋にクーラーがあって、でも昔のクーラーだからすごい電気代が高くて、俺たちが来るときだけ使ってましたね。だから妙なところで気を使ったりするんです。やっぱりいろんなものをいっぱい共有してきたので、追悼というものをやってあげることは必要かなとは思いますね。すごく目立ちたがり屋だったので、たぶん世の中から忘れられたくないと思うんですよ。

 −−なるほど。ではTHE BREATHLESSとの新作についてお聞きしたいのですが、今回はどんな構想で作っていったんでしょうか?

 基本的に僕は1番、2番、3番が同じものは嫌いなので、変拍子を使うんですけど、聴いてる人に絶対バレないように使うっていう。バレたら負けたような気がするんですよ。そういう仕掛けはいっぱい作れたかなっていう感じはしますけどね。シングルの「Electric Discharge」もアタマから7拍子なんです。キメは全部7拍子で、そこから4拍子に変わる。あれは誰も変拍子だと思ってないと思います。

 −−「Electric Discharge」や12曲目の「Liar」などには、歌詞にもパンクの姿勢がうかがえますね。

 「Electric Discharge」は基本的に原発の歌ですよね。でも、ほかのものにすり替えても歌えるようには作ってます。歌って(メッセージの意味を)限定しちゃうと、その曲を潰しちゃうんで。「Liar」は一つ一つテーマが違うんですけど、2番はメンバーの直江(誠治さん)っていうヤツの歌で「Yes−Noまともに答えられない優柔不断でつかめないや……」という(笑い)。本人の前で歌ってるけど気づいてないですね。そこがすごいところでね。面白いですよ。

 −−サウンド的にはスカが随所に用いられていて、そこにホーンの音が入ってくると、やはりこれがMAGUMIさんの世界なのかな、という印象を受けました。

 やっぱりスカは得意とするところでもありますし、「パヤパヤ」(LA−PPISCHの1987年のデビュー曲)という曲もあって、たぶん日本にスカを教えたもののきっかけにはなってるんで、そういうものをわざわざ封印する必要はないかなって。あと今回、意外と面白いのが、6曲目で初めてホーンが鳴るんです。中盤まではイメージを変えながらも、得意なところがヒョイと出てくる、みたいな。

 −−MAGUMIさんは、歌よりトランペットのキャリアのほうが長いそうですが、いつ頃から始めたんですか?

 正確にはホルンなんですけど、中学のときに。それで高校時代は合唱部に入っていて。最初はブラスバンドに入ったつもりだったんですけど、先生がものすごく合唱に力を入れている先生で。でも「ブラバンに入りたい」って言ったら、「どれでも好き勝手に吹いていいぞ」って。それで暇なときに音楽室にある楽器を勝手に吹いたり。ギターの(杉本)恭一も3年間同じ合唱部で、まさに2人ともだまされながら歌にハマッたんですけど、でも、お陰でいいコーラスワークが自然と身に付いて。その後、東京に出てきて、僕が恭一のバンドに入ってそこからLA−PPISCHになったんですけど、まさか一緒にバンドまでやるとは思ってなかったです。

 −−それでは最後に、9月まで行われるMAGUMI AND THE BREATHLESSのツアーの抱負をお願いします!

 最近はドラムのヤツも前に出てきて、人間ピラミッドを作ったり(笑い)。ちょうどメンバーが6人いるんで、(下から)3人、2人、1人っていけるじゃないですか。それでアカペラで歌ったり(笑い)。まさに何か起こるかわからないツアーになりますね。やっぱり僕たちはお客さんのお陰で元気でいられるんで、その元気を返したいんです。僕らがやっているのは娯楽の一部。その娯楽を見て、半年や1カ月、気持ちが軽くなって生活してくれればそれが一番いいかなって。そういう思いは常に持ってますね。

 <プロフィル>

 1963年9月24日生まれ、熊本県出身。杉本恭一さん(ギター&ボーカル)、上田現さん(キーボード、サックス&ボーカル)、tatsuさん(ベース)、雪好さん(ドラム)と結成したスカパンクバンドLA−PPISCHのボーカル&トランペットとして、87年にシングル「パヤパヤ」でデビュー。2011年にMAGUMI AND THE BREATHLESS名義での1枚目のアルバム「delight」を発売。THE BREATHLESSのメンバーは、永井秀樹さん(ギター&コーラス)、袴塚徳勝さん(ベース&コーラス)、カサマツマサヨシさん(ドラム)、島本亮さん(キーボード、サックス&コーラス)、直江誠治さん(パーカッション)。現在、9月24日の下北沢CLUB251(東京都世田谷区)公演まで続く全国ツアーを開催中。MAGUMIさんが最初にハマッたポップカルチャーは、スーパーカー。「小学校5、6年生のときで、ポルシェやフェラーリのエンジン音のシングルを持ってました。それに付随してマンガ『サーキットの狼』もハマりましたね。熊本出身なんですけど、熊本だとスーパーカーっていうのはそんなになくて、ロータス・ヨーロッパぐらいならあるわけですよ。それがあるって聞くと、10キロ、20キロ離れてようが自転車で行って、しかも一般の方のガレージなので、すごく遠目に見ながら『写真撮れるか?』」みたいなことをしてました(笑い)」と話した。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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