1960年代のモッズスタイルを継承するロックバンドとして、デビューから27年にわたり最前線で活動する、THE COLLECTORS(ザ・コレクターズ)。そのボーカルであり、矢沢永吉さんへの作詞提供や他アーティストへの楽曲提供も行っている加藤ひさしが思うヒット曲との向き合い方とは? AKB48や矢沢さんらとのさまざまな話題とともに、7月にリリースした最新アルバム「鳴り止まないラブソング」について話を聞いた。
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−−ザ・コレクターズはデビュー27年だそうですね。現在の音楽シーンでは、これまで以上にヒット曲を求められるようになっていると思いますが、その点についてはどうお考えですか?
それは、メジャーでやる以上は常にあります。アイドルであろうが歌謡曲であろうが、ロックバンドであろうが、常に覚悟しています。ザ・コレクターズらしさを保ちながら、いかにお茶の間とマッチしていくかという部分で、自分ではこれだろうと思うもので何度もトライしているのですが、なかなか難しいですね。
そこで思うのは、ヒット曲の法則なんてものはないということですね。AKB48を例に挙げると、秋元康さんは、おニャン子クラブでヒットして、そこから徐々に売れなくなる過程で学んだことがたくさんあり、その経験を生かしてAKB48を作った。それでも最初の3年くらいは、決して売れていたわけじゃなくて、結果的にそれを乗り越えて現在のヒットに至っている。じゃあ、そこに何があったのか? というのは、神様しか知らないんじゃないかと。ヒット曲の作り方みたいな本がたくさん出ていて、コード進行がどうとかメロディーがどうとか、いろいろ言われているけれど、すべてあとから思えばこうだったんじゃないかという、あと付けみたいなものですから。
−−では、加藤さんが曲を作るときに心掛けていることはなんでしょうか?
パッと聴いて面白いものであるか、いかにキャッチーであるかということは意識しますね。最新アルバム「鳴り止まないラブソング」に収録している「Da!Da!!Da!!!」(NHK Eテレ アニメ「おじゃる丸」エンディングテーマ)は、まさにそういうことを意識して作った曲です。まず、アニメの視聴者である幼稚園児が覚えられるもの、歌詞の意味は分からなくても、なんとなく口から出てしまうもの。それを考えたとき「ダダダダダダッダッダッ」っていう冒頭のフレーズを思いつきました。しかも歌詞がしりとりになっているので、実際に子どもたちが聴いて、すごく面白がってくれました。
だからといって幼稚な歌を歌っているわけではなくて、大人でもシンプルなラブソングとして聴いてもらえるものになっているのがミソです。ビートルズで「オ・ブラ・ディ、オ・ブラ・ダ」という曲がありますが、まさにああいう感じです。そういった“言葉のマジック”みたいなものは(効果が)あると思っていて。それが他の要素と絶妙に合わさったときに、すごくパワーを放つんです。
−−アルバムのタイトル「鳴り止まないラブソング」も、すごくキャッチーで、熱くて真っすぐなものを感じさせますね。
これはいろいろなところで話していることだけど、昨年、一番聴いたのが、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」なんです。メロディー、踊れる感じ、歌詞の内容、ポップミュージックの一番いいところだけで作られている曲です。それで、聴いているうちにラブソングってやっぱりいいなーと思いました。世の中的に、福島の原発事故もまだ収束していないし、集団的自衛権の問題とかのキナくさい話もどんどん出てきて、個人的にもすごく閉塞感を感じていて。そんな中で、「恋するフォーチュンクッキー」のようなラブソングが救いになって、聴いている間はすごく楽しくて。じゃあ自分たちが次にアルバムを出すときも、ラブソングをたくさん入れようって思ったんです。切ない片思いでもいいし、ウキウキした歌でもいいし、終わってしまった恋でもいいし。
−−AKB48がお好きなんですか?
「恋するフォーチュンクッキー」以外に好きな曲があるかって聞かれると、これが全然で……(笑い)。48グループで他に好きなのは、乃木坂46の「君の名は希望」くらいですかね。
いわゆるJ‐POPとかヒット曲、みんながいいというものは、一応すべて聴くようにしています。みんながいいというだけのすごさが、そこには絶対にあるので、それはなんなのか?って。アイドルとロックバンドは違うけれど、世の中にウケている理由が知りたいんです。
−−ロックバンドがアイドルや他のアーティストに曲を提供することも以前より多くなっていますが、加藤さんの場合は、99年から矢沢永吉さんの作品で作詞を担当されていますね。
当時の矢沢さんのディレクターから声をかけていただいて。世代は違うけれど、すごくシンパシーを感じます。矢沢さんのロックンロールからは、プレスリーではなく、ビートルズのロックンロールをすごく感じるんです。僕が聴いてきたビートルズは、矢沢さんが聴いていたビートルズと同じなんだろうなって。最初にその音楽を好きになったときの感覚から、今もまったくブレていない、矢沢さんからはそういうすごみを非常に感じますね。
−−コレクターズもブレてないですよね。実際に「鳴り止まないラブソング」は、以前と変わらず単純明快な作品で、その上でシンプルさや分かりやすさという部分で、より加速した印象です。
車とかもそうだと思うんですが、熟成していくに従って、だんだんシンプルでオリジナルなものになっていくんです。過渡期は、あれば便利だけど特に必要のない機能とか、いろいろ余計なものがくっついていて。でも車って走るためのものだから、コーナリングがいいとかの安定性、燃費、余計なものがないデザインというふうに、がっつり走るためだけに、どんどん特化されていくみたいな感じ。何事もキャリアを積むことで、そういうところにどんどん向かっていくんだと思います。僕の音楽もそうで、初期のビートルズじゃないけれど、シンプルで自分にしか書けない曲を作りたいと常に思っています。それでいて、ちょっと気の利いたアレンジができたら最高だって思います。
今回のアルバム「鳴り止まないラブソング」は、27年というキャリアを積んだからこそできた作品です。27年培ってきた、秘伝のタレみたいなものがあるのですが、それをさらに熟成させていく方法は、誰かが教えてくれるものではない。これからも身をもって失敗もしながら、経験していくしかない。その上で、AKB48における「恋するフォーチュンクッキー」とか、矢沢永吉さんにおける「I LOVE YOU,OK」のような、そういう存在の曲が作れたらって思います。絶対に作ってみせますけどね!
<プロフィル>
1986年にTHE COLLECTORSを結成、87年にメジャーデビュー。ピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギターらとともにムーブメントを起こし、多彩なアーティストに影響を与える。これまでに「Free」「MIGHTY BLOW」など20枚のアルバムをリリース。5月に公開された映画「キカイダーREBOOT」の主題歌「ゴーゴー・キカイダー REBOOT2014」も手がけている。ニューアルバム「鳴り止まないラブソング」を7月23日にリリース。現在は11月まで続く全国ツアー「THE COLLECTORS TOUR 2014“DA!DA!!DA!!!”」を開催中。21日午後8時から、加藤さんとGOING UNDER GROUNDの松本素生さんがMCを務めるUST生番組の第2回が放送されることが決定した。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
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