めちゃ×2イケてるッ!:ガリタさんこと明松Pに聞く 長寿人気バラエティーの舞台裏

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 「めちゃ×2イケてるッ!」のガリタさんでおなじみ、フジテレビの明松功プロデューサー(P)。笑いに対するストイックさでは業界でも有数の人気バラエティー番組もこの秋でスタートして19年目に突入した。AD時代から作り手としてかかわり続けている明松Pに「めちゃイケ」の舞台裏を聞いた。

ウナギノボリ

−−テレビ局に志望した理由は。

 もちろんテレビが好きでした。「オレたちひょうきん族」(フジテレビ系)や、とんねるずさん、ダウンタウンさんを見てきた世代です。中学高校時代に寮生活を送っていて、寮に戻ったときにちょうど「4時ですよーだ」(毎日放送)を見ていましたし、アメフトに没頭した大学時代も「ダウンタウンのごっつええ感じ」(フジテレビ系)と、「とんねるずのみなさんのおかげです」(フジテレビ系)の二つだけは録画をしていました。

−−どうしてフジテレビを選んだのですか。

 フジテレビの面接が、一番楽しかったんです。正直、昔からテレビは大好きだけど「テレビ業界で働くんだ」っていう高い志は持っていませんでした。普通なら部活でやっていたアメフトで就職先を決めるか、専攻していた建築学科のゼミの先生の推薦先に行くかだったのですが、両方ともそんなに乗り気になれなかったんです。アメフト部の一つ上の先輩(キャプテン)がフジテレビに入社して「いいぞ、フジテレビ」と言われたので受けてみたんです。そうしたらフジテレビに受かって、「フジと言えばバラエティーでしょ」という感じでした。

−−入社以来のバラエティー志望だとか。

 最初は音楽班で、「HEY!HEY!HEY!」を担当していました。入社3年目の「FNS 27時間テレビ」が終わった秋口から「めちゃイケ」のADになりました。「めちゃイケ」が始まって1年後の97年、ちょうど1周年スペシャルのタイミングで合流しました。

−−「HEY!HEY!HEY!」と「めちゃイケ」の違いは。

 「HEY!HEY!HEY!」はバラエティー番組だって言われて入ったんですけど、当時はやっぱりメインは音楽で、トーク部分もダウンタウンさんにお任せでした。「HEY!HEY!HEY!」のオンエアすべての情報量を10としたら、そのほとんどがアーティストとダウンタウンさんで埋め尽くされているという感じで、演者さんがドライブする番組でした。ところが、「めちゃイケ」は、制作が10の内の大部分をドライブしていて、でしゃばっていいんだっていう衝撃を感じました。

 またナインティナインさんをはじめメンバーが、ADの僕に対しても 近い距離感で仕事をしてくれたことがうれしかったです。とはいえ、めちゃイケメンバーと収録後に食事に行くというようなことはありませんし、プライベートも全く知らないんですけどね。

−−「制作がドライブする」大変さは?

 当時は、片岡飛鳥(現フジテレビ バラエティ制作センター・チーフゼネラルプロデューサー)さん[f2] が演出をしていて、企画会議で面白いものが思いつくまで、終わらないみたいな迫力がある会議をしていたんですよ。みんなが「うーん……」って言いながら、30分間誰もしゃべらないみたいな会議でしたね。ADの僕にも、生半可な仕事をしてはいけないんだ、とビンビン伝わってきました。「めちゃイケ」はノリでやっている番組だと思って入ったのですが、違いましたね。実際は「こんなに練られているんだ」っていう衝撃がありました。

−−「めちゃイケ」の企画は本当にバラエティー豊富ですよね。

 どんなゲストが来ても対応できる“地肩の強い企画”、例えば「とんねるずのみなさんのおかげでした」の「新・食わず嫌い王決定戦」や「SMAP×SMAP」の「ビストロSMAP」 「笑っていいとも!」の「テレフォンショッキング」といったようなテレビ史に残る企画を“発明”できていたら、ずーっと、それをやっていたと思います。裏を返すとそれができていないんです(笑い)。とはいえ、毎週毎週違う企画をヒーヒー言いながら作っていくのも嫌いじゃないんですけどね(笑い)。妙にワクワクしますし。

−−明松さんにとって思い出深い企画は。

 AD時代の中では、沖縄ロケですね。カヌチャベイリゾートっていうところにロケで行ったのですが、僕が先乗りADとして(ロケを行う)2カ月ぐらい前から、情報集めなどをするために住んでいたんですよね。報告のためだけに東京に戻ってきて「また、行ってきます」みたいな感じでした。当時の沖縄には、相当詳しくなっていましたね。意地でも自分から「できません」って言いたくなかったので、沖縄の隅々までロケハンしました。

−−会心の企画は何ですか。

 先輩から受け継いだエスパー伊東さんの企画ですね。年に1回、メンバーをびっくりさせてやろうと、エスパーさんと収録の2カ月前ぐらいから、少しずつネタを打ち合わせしたりして。もちろん、プライオリティーはメンバーをワクワクさせることなのですが、スタッフもワクワクできる方がいいと思います。

−−テレビの視聴行動も変わってきましたが、その中で面白い企画とは?

 変な話、「めちゃイケ」が絶好調のときは、何をやっても見ていただいていたのですが、今は変わってきているんだなって思いがありますね。僕らが、面白いと思う企画を作っても、見る側のモチベーションがなかったら、あまり見てもらえないんだなっていう寂しい思いもしています。だからこそ、「リアルタイムで見るしかない」という仕掛けをプロデューサーの立場でいろいろ考えていくのが、僕の日々の課題ですかね。オンエアを見ないと翌日の会話に取り残されてしまうと思わせる仕掛けをする必要があると思います。

−−そのためにどんな取り組みを?

 こういう言い方をすると、ほかの社員に「出た出た」って言われるかもしれませんが、自分の中で「本当に数字取れるだろうか」って、不安を感じながらやる企画もあります。いわゆる“挑戦的”な企画ですね。もしかしたら、何か生まれるかもしれませんし、だめならだめで仕方ないという感じで。番組から視聴者に“球を投げている感”を維持するためというか、ほかの番組とは違うぞっていうアピールをしておかないと、視聴者に番組のことを魅力的に感じてもらえないのでは、と思っています。

−−“挑戦的”な企画が必要だと。

 もちろん、豪華なゲストに出演していただくようなゴールデンにふさわしい企画は、ブランディングの上でとても大事だと思っています。でも挑戦的な企画を投げるのもブランディングだと考えています。例えば、メンバーが街頭でナンパをする企画(めちゃ×2モテないッ!)は、「深夜枠やったらすぐできるんやけどなあ」という企画というか、「女性に見せて大丈夫か」という部分もありましたが、メンバーが普段見せている顔と違う表情が見られるので面白かった。“ゴールデン的な企画“と“挑戦的な企画”の両方が必要なんですが、どのバランスで混ぜていくのか、その黄金比が見つかる日なんてたぶん来ないと思いますね(笑い)。

−−明松さんといえば「ガリタさん」でおなじみですが、最初に出演したのは。

 最初は、お笑いコンビ•オアシズの光浦さんが、舞台で共演した劇団員の河野雅人さんに恋をしたという企画「河野少年愚連隊」で、河野さんが光浦さんの彼氏にふさわしいかどうかをチェックする居酒屋のオネエ店員役でした(笑い)。めちゃイケに加わってまだ数カ月のときです。それから、SMAP•中居さんや江頭2:50さんをチカラ技で説得する役として、しゃべらないコワモテキャラで出ていましたね。

−−(現フジテレビ バラエティ制作センターの)中嶋優一さんとAD対決もありましたね。

 僕がチーフADで、中嶋がセカンドっていう時代ですね。中嶋はすごいですよ。自分からガンガンしゃべって笑いを取るんですよね。それは、どこの局のテレビマンを見回してもなかなかいないでしょうね。僕は違うパターンで、あまりしゃべらないキャラクターで、たまに意思表示をするぐらいの控えめな役。そういう意味では、めちゃイケならではの「スタッフ出演もの」 の流れを「ガリタ食堂」 は受け継いでいるんでしょうね。

−−「ガリタ食堂」が大人気ですね。

 「ガリタ食堂」 は「めちゃイケ」で初めてグルメもので当たった企画なんですよね。過去の企画では、「シンクロナイズドテイスティング」が一応グルメを取り込んだ企画になりますが、厳密にはコントですからね。「めちゃイケ」で唯一、おいしそうな料理の画をお届けできているコーナーです。ゲストの俳優さんや女優さんは本当においしいものを楽しみにしてくれていて、「ガリタ食堂」になら出ても良いって言ってくれるのはうれしいですけどね。

「お笑い番組としておいしそうな料理を紹介するだけでいいのか?」というファンの方は、まずいお店を紹介するスピンオフ企画「コリタ食堂」の方もお楽しみ下さい。あと、いい機会なので言わせてもらいますけど、別に僕から「俺が主役の企画をやって」とお願いしたことはないですからね(笑い)。番組が活性化するうちは、やらせてもらっている感じです。

−−出演することで得るものは。

 最初は、出演者側に立つとこういう景色なんだっていうのがあって、出演者って大変だなって思いました。あちら側に立ってみて「こういう設定や環境を与えられたら、どう振る舞えばいいのか」が分かりましたね。「めちゃイケ」の演出上のルールとして「演者が振る舞いやすい“庭”を提供する」っていうのがあるのですが、カメラの前に立ってみてそれを実感しました。

−−視聴者へのメッセージをお願いします。

 「めちゃイケ」メンバーのことを誰よりも面白いと思っています。体を張る企画に限らず、精神的に追い込まれてなのか、あるいは、どっきりに引っかかってなのか…とにかくメンバーの“本気の感情”を大切にしながら番組を作っています。彼らの“必死な姿”をお楽しみいただけるとうれしいです。

 ◇プロフィル

 かがり・いさお フジテレビ編成制作局バラエティ制作センター副部長 1995年フジテレビ入社。希望していたバラエティ制作部に配属され、「HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP」などを担当。2000年『めちゃ×2イケてるッ!』ディレクター。2010年には「フジ算」にて初めてプロデューサーを務める。2011年『めちゃイケ』プロデューサー。 大食漢であり、『めちゃイケ』においては栄養士の「ガリタガリ子さん」というキャラクターで出演している。10月4日午後6時半から「めちゃ×2イケてるッ!SP」を放送予定。

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