テレビ試写室:「寄生獣 セイの格率」 スマホ時代の寄生獣

(C)岩明均/講談社・VAP・NTV・4cast
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(C)岩明均/講談社・VAP・NTV・4cast

 ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまでさまざまなジャンルのテレビ番組を、放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は8日から毎週水曜深夜1時29分に放送されるアニメ「寄生獣 セイの格率」(日本テレビ)だ。

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 人間に寄生して脳を乗っ取り、人間を殺して食らう寄生生物「パラサイト」と人間たちの重厚なドラマを描き、累計1100万部を発行している岩明均さんの名作マンガがアニメ化された。アニメ版の「セイの格率」は、舞台を21世紀の現代に変更。ネットやスマホも登場し、より身近な世界が描かれている。

 平凡な高校生の泉新一は、ある日パラサイトの襲撃を受け、右腕に寄生されてしまう。新一は、右腕と同化したパラサイト「ミギー」との考え方の違いや、真実を明かせないつらさに悩みながらも、パラサイトたちとの戦いに巻き込まれていく……。

 原作は、高いテーマ性やドラマチックかつ無駄のない展開、ショッキングな描写の数々から1990年代を代表する名作といわれ、熱心なファンも多い作品だ。そんな中、今回のアニメ化にあたり、“メガネ男子”になった新一をはじめとしたキャラクターデザインなどがネット上で賛否両論の反響を呼んだ。

 記者も「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載されていたころから毎月欠かさず原作を読み、完全版も含めて単行本をそろえ、あるキャラクターとの別れのシーンでは電車の中で涙を流したぐらいにはファンだと自任しているので、一抹の不安があったのは事実だ。しかし、いざ今回のアニメを見てみると、ちゃんと「寄生獣」だった。

 ミギーをはじめとしたパラサイトたちの行動や言動、原作でキーポイントとなるせりふや伏線もちゃんと盛り込まれているし、序盤だけ味わえる新一とガールフレンド・里美の微妙な距離も感じ取れた。また、原作の過激な描写についても、キー局地上波のアニメとしては限界まで再現されているのではないだろうか。

 原作を改めて読み返してみると、ネットもスマホもない80年代末~90年代初頭の「日常」が舞台ということで、スケバンや口ひげをはやした不良がいたり、学校同士のけんかがあったりする。ファンタジーものや歴史ものでは気にならないが、昔のトレンディードラマには感じるような微妙な「時代感」を感じてしまう。時代を超越した普遍的なテーマを扱っているからこそ、「今」映像化するにあたって、「今の日常」を舞台にしたということなのだろう。ミギーが社会を学習するのに、本や図鑑だけでなくネットやスマホまでフル活用していたのもうなずける。

 声優陣には新一役の島崎信長さんをはじめ、原作が発表されたころに生まれた人気声優陣がそろっているのも興味深い。個人的には、平野綾さん演じるミギーに注目。まだ言葉もたどたどしい時期から、またたく間に学習して生き延びるための最適解を冷徹に新一に告げるシーンまで、パラサイトという種の不気味さに加え、どこかコミカルなミギーの性格も感じ取れた。11月29日(完結編は来年4月25日)に公開される実写映画版では、阿部サダヲさんがミギーを演じている。こちらにも注目したい。

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