4人組ロックバンド「筋肉少女帯(筋少)」が、4年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「THE SHOW MUST GO ON」を8日にリリースした。「ショーは続けなければならない(何があっても)」という意味のタイトル通り、今作はライブのような楽曲構成で、ボーカルの大槻ケンヂさんが作詞を担当した人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のシングル曲「労働讃歌」のカバーも収録されている。実際に「今、気持ちがライブに向いている」という大槻さんに、新アルバムについて聞いた。
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−−今作は、「お客様は神様です」というせりふで始まる1曲目「オーディエンス・イズ・ゴッド」や、「ショーはもうラスト」というフレーズがある終盤の「気もそぞろ」など、ライブに関する曲が多いですが、曲順で心がけたことはありますか?
基本的にリスナーがパッと聴いて分かりやすいだろうなっていう曲を前の方から並べていく傾向はありますね。(後半にある)「恋の蜜蜂飛行」と「ニルヴァナ」は僕の中では面白いなと思ってる曲で、ぶっちゃけ歌詞は何を言ってるか分かんないでしょ? 正直に言うと、歌詞を書いてる段階で整合性が保てなかったんです。でも、例えば80年代にホラー映画をいっぱい作ってたイタリアのルチオ・フルチ監督の映画にはストーリーも何も整合性がまったくない。でもそれが面白くないかといえば、整合性を超えた色彩(の美しさ)や衝撃があって面白いんです。だからこの2曲は、整合性は保ってなくても妙に迫力がある作品で、そういう解釈ができるかもしれないなと……。どうしても僕は歌詞を書く人間なので、歌詞のことばかりインタビューで言ってしまって、バンドに申し訳ないという気持ちがあるんですけどね。
−−筋肉少女帯は分業制が確立されていて、アレンジはほとんど楽器(担当)陣にお任せしているそうですね。
ズバリ言って、僕は歌入れしか(スタジオに)行っていません(笑い)。ただ「この曲はテンポをもうちょっと速くしてくれ」みたいなお願いはメールでちょこっとしましたね。みんな(通信手段は)スマホなんですけど、僕はスマホを持ってないので、一斉送信で「ここに○○を上げておいたのでアクセスして」って言われるんだけど、俺だけできない。だからマネジャーにCD−Rに焼いてもらって……。パソコンはあるにはあるんだけど、怖いから触らないようにしてます。触ると爆発するんじゃないかと(笑い)。だって、テレビをたたけば直る時代の育ちなんで。
−−そうですよね(笑い)。ところで今作では、大槻さんが作詞を手がけた、ももいろクローバーZの「労働讃歌」をカバーしていますが、筋肉少女帯として歌ってみていかがでしたか?
この歌は「労働のプライドや喜びをみんなで叫べば、それが見えるかもしれないぜ」って言ってるんですけど、それは「見えないかもしれない。すなわち労働者たちは、企業や経済社会に使われているだけの悲しい身分なのかもしれない」っていう、ちょっとアイロニカル(皮肉的)な意味を歌詞に込めた部分があったんです。でも、ももクロちゃんがそれを元気いっぱいに歌ったら、彼女たちのパワーによって、そのネガティブな部分が吹っ飛んだ感があったんですよ。「本当に労働のプライドや喜びが見えるかもしれない。見えるんだ!」って明るい方になって、すごく感動したんです。それで今回、筋肉少女帯でこれを歌ったら、見事に「労働のプライドや喜びなんてないのかもしれない」というネガティブな部分が出たなと。そこが一番の大いなる違いだと思います。
−−“讃歌”といえば、今回はシャンソンの名曲「愛の讃歌」のカバーも入っていますね。この曲を歌おうと思った理由は?
今年の1月にシャンソンを歌うイベントがあって、そこに僕はなぜか呼ばれて行きまして。シャンソンはよく分からないので、「愛の讃歌」を歌ってみたら、いわゆる“歌気持ちいい”ってやつで、歌ってる人がとっても気持ちいい歌なんですね。派手だし、「労働讃歌」もあるから、筋少でやりたいって言って。それで歌入れに行ったら、オケ(伴奏)がとてつもなく大げさなアレンジで、想像していたのとまったく違って……。正直、この曲だけは「こういうアレンジ?」って思った。でも、「月に一度の天使」っていう、ちょっとフォークっぽい曲が“前編”“後編”とあって、それをこの曲の前後に入れることでアレンジが整ったという。アルバムはそういうことがありますね。
−−最近はライブのためにダイエットをしているそうですが、どんな方法で実践しているんですか?
お酒を飲んじゃうからダメなんですけど(笑い)、糖質と炭水化物をとらないというのと、たまに筋トレをするとか。この間、フェスでおすしが出て、ネタだけ食べてシャリは食べなかった。野菜もニンジンやゴボウは糖質が高いからダメなんです。僕、ご飯をどうしても食べたいとかってあんまりなくて、ホントにライブしかやりたいことが特にないんですよ。ライブって、盛り上がってもちょっとトチッても、人が来ても来なくても、やり切ったっていう感じや充実感があるじゃないですか。その充実感が欲しくて。ライブ以外に何か興味を持ってみようと思って(ゲームソフトの)「モンスターハンター」とか買ってみたんだけど、さっぱりやってない(笑い)。ライブでしか充実感を得られないっていうことかな。だから今、48歳なんで、50歳を超えたら、何もない日でも淡々と、季節の移り変わりぐらいで充実感を得るような人になりたいです。
<プロフィル>
現メンバーは、大槻ケンヂさん(ボーカル)、橘高文彦(きつたか・ふみひこ)さん(ギター)、本城聡章(ほんじょう・としあき)さん(ギター)、内田雄一郎さん(ベース)の4人。1988年にアルバム「仏陀L」とシングル「釈迦」でメジャーデビュー。2013年にデビュー25周年を記念したアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発売。大槻さんが初めてハマッたマンガは、永井豪さんのマンガ「デビルマン」。「小学2年生の頃、『週刊少年マガジン」(講談社)で連載されていたんですけど、リアルでグロテスクで奇想天外で、壮絶な終わり方をするんですね。善悪のものさしは一つではないということを教える物語で、人生観が変わるぐらいの衝撃を受けました」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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