加納朋子さんのベストセラー小説「ささら さや」を「神様のカルテ」(2011年)の深川栄洋監督が映画化した「トワイライト ささらさや」が8日に公開される。女優の新垣結衣さんが初めて母親役を演じたことでも話題の今作。売れない落語家の夫・ユウタロウ(大泉洋さん)を事故で突然亡くし、生まれたばかりの乳飲み子を抱えた妻・サヤ(新垣さん)が主人公。サヤは小さな町”ささら”に引っ越し、心配で成仏できずに他人に乗り移る夫に手助けされながら、母親として成長していく姿をファンタジックに描いている。初の母親役について、クライマックスの号泣シーンなどについて新垣さんに聞いた。
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原作では、主人公は控えめでか弱い女性だが、映画で新垣さんが演じたサヤは芯の強い女性として描かれている。新垣さんは今回演じたサヤについて「もともと強い人なんだろうなと思ってたんです。芯が強いものを持っていて、話が始まるときにユウちゃん(夫・ユウタロウ)が死んじゃったり、子供が初めて生まれてどうしようって母親になっただけで不安なのに災難続きでサヤを弱くしていたのかなと思って。徐々に母親としても成長するんですけど、もともとあったサヤの強さにささらの町の人達がさらに後押しをしてくれて、最終的にはああいうサヤになっていったのかなと思います」と考えて役作りをした。
サヤのキャラクターは新垣さんのイメージを尊重して作り上げた。「監督は原作を読んでサヤのイメージを作ってらっしゃったそうなんですけど、最初の本読みをしたあとに監督と1対1でお話しをして。私なりのサヤはこういう人物なのではないかというのを印象をお話ししたら、それを全部受け入れてくださった」という。新垣さんがなぜ芯の強い女性像を思い描いたのかというと、「ささらの町の人達がこれだけ助けてくれるというのはサヤに魅力がなければいけないと思ったので、自分なりに魅力を探して。ユウちゃんに『お前は人を信じすぎる』と言われるのも魅力の一つだろうなとか。自分なりに探したものを監督が受け止めて任せてくださった」と語る。
初の母親役に挑戦した新垣さんは「親戚に赤ちゃんがいて、抱っこしたりしていたので、それが今回は生かされたなあと思います」と慣れていたことが功を奏した。「赤ちゃんはこちらでコントロールできるものではないので、大変だろうなというイメージがあって、覚悟はしていたんですが、今回出演してくれた赤ちゃん達がみんないい子で。よく笑うし、泣いてほしいときに泣くし、泣きやんでほしいときに泣きやむし。思っていたよりすごくスムーズに撮影が進んで」と当初撮影は順調だった。
だが、撮影が進んでくると「やっぱりだんだん赤ちゃんも学習してきて、本番の空気になるとお母さんと引き離されるというのを理解しちゃって。スタジオに入るのを嫌がったり、『本番!』の声で『ふえーん』って泣いちゃったり。勘づかれてからは大変でしたね。私も抱っこしながら、赤ちゃんの都合に合わせて体を動かしてみたり、ぐずっているときにそれに負けずにせりふを言わなきゃいけないとか苦労しました」と明かす。
劇中では、亡くなった夫・ユウタロウは成仏できずにいろんな人間に乗り移ってサヤを見守る。乗り移られた人物と新垣さんが演じるサヤの2人のシーンは、まず新垣さんと大泉さんとで演じてみせ、それを乗り移られた人物を演じるキャストがその場で見たり、撮影したものを見直して大泉さんの動きを研究した上で、新垣さんとキャストで本番を撮影した。
新垣さんは「ユウちゃんの存在感は、この映画の中ですごいなと思いました。だってほとんど出てないじゃないですか(笑い)。大泉さんも『なんてお得な』とおっしゃっていて。でもそれくらいお夏さん(富司純子さん)だとか乗り移られた方たちがユウちゃんを素晴らしく演じていらっしゃると思いますし、最後のシーンのときにユウちゃんの姿で大泉さん本人が現れたときに『やっぱりユウちゃんだ!』と思いました」とこの映画特有の撮影法に驚きとともに共感を示す。
クライマックスのサヤと大泉さんの姿をしたユウタロウとの涙の別れのシーンは2日間かけて撮影された。「あのシーンは、自分とシンクロしたというか、誰の身に起こってもあんなふうに泣くくらいつらい出来事だと思うので。あのシーンを撮るのに1シーンなのに前半と後半に分けて2日間かけました。泣き始めてから丸1日かかっているので、そこは自分でも頑張っているなと思うし頑張っただけのシーンになっていると思います。気持ちを込められたので、とても印象に残っています。けれど、もうやりたくないです(笑い)。大変だったので疲れました……」と全力を使い果たした。
大泉さん演じるユウタロウは、母の死に際に立ち合えなかった石橋凌さん演じる父との確執を抱えたまま死んでしまう。映画の後半でこの親子の関係を振り返るシーンも一つの山場だ。新垣さんはユウタロウのように親に反発したことはあったのだろうか。すると「10代から仕事をしていて悩むこともあって。自分の中で答えは決まっているけれど後押ししてほしいから親に話したときに、自分が思っていたのと違う答えが返ってきたりして怒ったり、悲しくなったりはしていたけれど、今はそのときの言葉も(大人になったので)理解できるから、いい思い出です。人並みの段階を踏んできたな私も……と思いますね」と思いをはせていた。
また、ユウタロウのように新垣さん自身、親の愛情を改めて感じた経験は?と聞くと、「人間ドックを受けたんです。母にやれと言われていて、面倒くさいなあとは思っていたんですけど。『受けたよ』と母に報告をしたときに、その日の夜、母が仕事が終わってから『どうだった?』とわざわざ電話をくれたときは、『そんなに私の体のこと心配だったんだ』と思いました」とエピソードを披露した。
完成した作品を見て「台本を読んだときの空気感と実際に撮影して出来上がったときの空気感がすごく近かったので、自分が台本を読んで受け取ったイメージはこれで合っていたんだなというのを再確認できてほっとしました。監督がささらの町にいそうな人なんですよ。物腰が柔らかくて、でもちょっと不思議な人。だから監督の人柄が出ているなと思いましたし、映画を見てくださる方々にはこの作品から温かみを感じてほしいと思っていたので、それがよく表現されていてよかったなと思いました」と手応えを感じているようだった。
<プロフィル>
あらがき・ゆい 1988年6月11日生まれ、沖縄県出身。ティーン誌「ニコラ」のモデルとして活躍後、女優業を中心に活動。2006年放送のCMで注目を集める。07年の主演映画「恋空」がヒットし、数々の映画賞を受賞。11年のドラマ「全開ガール」(フジテレビ系)では連続ドラマ初主演。出演したスペシャルドラマ「リーガルハイ・スペシャル」(フジテレビ系)が22日に放送される。
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