岸本斉史:「NARUTO」と歩んだ15年 連載中のエピソード語る

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 「週刊少年ジャンプ」(集英社)での15年にわたる連載を終えた人気マンガ「NARUTO−ナルト−」。コミックス世界累計発行部数が2億部を超えるなど、ジャンプ看板マンガのひとつであり続けた。最終回では主人公・うずまきナルトがライバルとの因縁に決着をつけ大団円を迎えて完結したが、ここに至るまでに果たしてどのような苦労や葛藤があったのか。作者の岸本斉史さんに連載中のエピソードなどを聞いた。

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 ◇“ジャンプで連載”のプレッシャー 「最初はしんどかった」

 岸本さんにとって、ジャンプで不動の看板マンガの一角として走り続けた15年はどのようなものだったのか。連載序盤から読者の人気を獲得し、快調なスタートを切ったが、陰では知られざる苦悩があったといい、岸本さんは「一番しんどかったのは最初のころ」と当時を振り返る。「熱は出るし、吐くし。精神的なものだったと思うんですが、ジャンプで連載するというプレッシャーが半端なかったというか……こんなにキツイんだ、というのが分かっていなくて」。何しろ、初の週刊連載という事情に加え、“戦場”はあの「ジャンプ」。そこにあるのは、読者アンケートという名の激烈な票の取り合いだ。岸本さんは「シビアでしたね、人気がすべてだから。人気ねえやつはいらねえよということ」とその過酷さを語る。

 机に向かう時間に加え、打ち合わせの回数も他の作家より多かったという。まず大ラフの打ち合わせをやり、軽いプロットを上げて、また打ち合わせして、そこからネームを作って打ち合わせして……さすがに最後の方はその半分ぐらいになっていたそうだが、これだけでもいかに綿密に作られていたかが分かる。忘れられないエピソードがある。「原稿を徹夜で上げて、寝るじゃないですか。(編集部から)その6時間後に『次のネームできた?』って。そのときに『この世界やばいぞ』って思いましたね」。そう岸本さんは当時を懐かしむ。

 ◇手裏剣化けで初の1位に

 手応えを感じたのは、物語の前半で強烈な印象を残した敵キャラクター「再不斬(ざぶざ)」が登場し、戦闘中にナルトが手裏剣に化けたあたりだった。岸本さんは「人気投票で1位を獲って、編集さんが喜んでいるのを見て」、いけるのかなと思ったという。熱を出して病院へ行くと、担当医が読者だったこともあった。「病院で、仕事を休みなさい、細胞が死んでるんだよ、体を大切にしなさいと言われて。仕事を聞かれて、『マンガ家で、ナルトっていうマンガを描いてます』と言ったら、先生が『ああ、あの手裏剣に化けてたやつだ』と。この先生も見てくれているんだと思って、これじゃあ休めないなあと思った」と笑う。

 ナルトや再不斬のみならず、クセがあり魅力的なキャラが登場するのが同作の特徴のひとつ。岸本さんの好きなキャラはシカマル。極度の面倒くさがりだが頭が抜群に切れる参謀タイプだ。とはいえ、「ナルトも好きです。チョウジも好き、リーも好き……まあみんな好きなんですね」とキャラへの愛情を語る岸本さん。だが、主人公のライバル・サスケだけはあまり好きではないとも話す。「(サスケには)苦労させられたから。素直じゃないんですよね……だから(マンガに描くとき)大変な思いをしました」

 ◇ナルトが恋愛? 劇場版アニメの見どころは

 連載が終わった現在の心境について岸本さんは「ナルトに関してはかなり(持っている力を)出せた」と満足感を漂わせている。連載は終了したが、劇場版アニメ「THE LAST −NARUTO THE MOVIE−」(小林常夫監督)が12月6日に公開される。描かれるのは、最終回につながる話だ。予告編ではナルトと同じ木ノ葉隠れの里の、ナルトに思いを寄せる日向ヒナタが登場しており、特設サイトでは「今回の映画はぶっちゃけ恋愛です」と岸本さんからのメッセージが寄せられている。岸本さんは「ナルトで恋愛ってないじゃないですか。今までずっと見てきたやつが恋愛をするってどういう感じだろう、キスシーンとか恥ずかしいんじゃないかって」と、まるで読者のように楽しそうに語った。

 <プロフィル>

 1974年生まれ。岡山県出身。マンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1999年から「NARUTO-ナルト-」の連載を開始。以降、15年にわたってジャンプの看板マンガのひとつとして高い人気を維持する。14年11月に同マンガの連載を完結。

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