上白石萌音:“女優”の魅力語る「何回も人生を生きられる」

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 女優の上白石萌音さん(16)の初主演舞台「みえない雲」が10日からシアタートラム(東京都世田谷区)で上演される。上白石さんといえば、9月に公開された初主演映画「舞妓はレディ」(周防正行監督)で見せた、舞子を目指す少女の初々しい演技が記憶に新しいが、今回は原発事故に巻き込まれる西ドイツ(当時)に暮らす14歳の少女という難役に挑戦する。「何回も人生を生きられる」女優という仕事に「魅力を感じている」と話す上白石さんに話を聞いた。

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 「みえない雲」は、チェコ出身のグードルン・パウゼヴァングの小説が原作。世界13カ国で翻訳され、2006年にドイツで映画化された作品を日本で初舞台化する。演出は海外での日本人誘拐事件や振り込め詐欺など社会的な題材を舞台化してきた瀬戸山美咲さんが手がける。

 同舞台では小説の中では語られなかった“今”の視点も盛り込まれ、小学6年生の時に小説「みえない雲」に引きつけられた「私」が大人になって福島原発事故に直面し、自問自答しながら小説の舞台のドイツを目指すというストーリーと、西ドイツの町シュリッツで、原発事故に遭遇した小説の主人公・ヤンナ・ベルタのストーリーが交錯して進む。

 舞台の話が来た時、「主演はどなたなんですか?」と思わず聞き返してしまったという上白石さん。自分が主演と言われ、「どうして私なんだろう」と思ったというが、その後原作を読み衝撃を受けた。「日常が壊された瞬間に出てくる生きる力を感じました」と振り返る。そして「ヤンナ・ベルタは14歳だけれど、どんどん道を切り開いていく。私は自分の意見はあるけれど、流されてしまうところがある。自分で決めて自分で行動できる女性に憧れますし、そうなりたいと思う」とヤンナ・ベルタに思いをはせた。

 稽古(けいこ)は出演者同士が意見を出し合って作っていくというスタイルで、今までは積極的に意見を言うことはあまりなかったという上白石さんも意見を出すようになったといい、自分の思いや考えを言葉にすることで「自分はこう思っていたんだ」と“発見”することもあるという。「どうやってお芝居をしていいか悩んでいた時期があったんですが、『最初本を読んだ時どう思った?』と聞かれて『ヤンナ・ベルタになりたいって思いました』と口からポッと出てきたんです。『あ、その気持ちを忘れていたんだな』と気付いて……。ヤンナ・ベルタになりたいと思ってお芝居をすればいいんだなと。彼女が離れていくように感じていたのが、ちょっと近づいたような気がしました」と話す。

 初主演舞台で“座長”という立場でもある上白石さんだが、「プレッシャーは感じていない」という。「ほかの出演者の皆さんより(経験は)少ないし、ポスターには一番最初に名前があるけれど、役と向き合うことに全力を注ごうと思っています。『主役だから~』と気負ってしまうと潰れちゃう。『舞妓はレディ』の時も(役の)春子と向き合うことに集中しようと思って(大役を)乗り越えたので、今回もヤンナ・ベルタとひたすら向き合っていきたい」と真摯(しんし)に話す。

 上白石さんは2011年の第7回「東宝シンデレラ」審査員特別賞を受賞し、芸能活動をスタートさせた。オーディションではいろいろな役の台本を読むうちに「普通なら一回きりの人生だけれど、女優さんなら何回も人生を生きられると気づき、女優になりたいと強く思った」という。

 「この仕事をしているからこそ考えることがたくさんある。学校で習った世界史の知識が役に立ったり、いろいろなことがつながっていく。今回はドイツで前回(『舞妓はレディ』)は京都。自分の知っている世界が広がっていく魅力的な仕事」と目を輝かせ、「舞台では、一生懸命ヤンナ・ベルタとして生きようと思います」と力を込めた。舞台は10~16日にシアタートラムで上演。

 <プロフィル>

 かみしらいし・もね 1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年の第7回「東宝シンデレラ」審査員特別賞受賞。劇場版アニメ「おおかみこどもの雨と雪」(細田守監督・12年)で声優を務め、映画「だいじょうぶ3組」(廣木隆一監督・13年)の出演を経て、14年9月に公開された映画「舞妓はレディ」(周防正行監督)で映画初主演を果たした。映画のほか、テレビ、ラジオなど多方面で活躍中。

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