「神童」(2007年)などの映画化作品を手掛けたマンガ家、さそうあきらさんの同名マンガの実写映画化「マエストロ!」(小林聖太郎監督)が31日から公開される。謎の指揮者と負け犬オーケストラ団員たちが再結成を目指して奮起するヒューマンドラマだ。世界的指揮者の佐渡裕さんが、指揮指導と指揮演技監修として日本映画に初参加をしている。西田敏行さんと松坂桃李さんは今作が初共演。
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バイオリニスト、香坂真一(松坂さん)のもとに、不況のあおりで解散した中央交響楽団から再結成の知らせが舞い込む。復活コンサートを1カ月後に控えた楽団は、引き抜きの話もない冴(さ)えない団員ばかり。おしゃべり好きの第2バイオリンの谷(濱田マリさん)、顔面神経痛のホルン奏者の一丁田(斉藤暁さん)、今回の再結成で突然現れたアマチュアのフルート奏者のあまね(miwaさん)。練習場は廃工場で、久しぶりに合わせた音は全く合っていない。そこに、謎の指揮者・天道徹三郎(西田さん)が現れて……という展開。
指揮棒代わりに大工道具を振りかざす風変わりな指揮者・天道。言いたい放題で団員たちのプライドをズタズタにするさまがコミカルに描かれる。天道はダメダメ楽団へのカンフル剤のようで、天道への反発をエネルギーに、団員たちはまとまっていく。一方、コンサートマスターの香坂は、自分と天道と間に関係があることに気づく。香坂を演じる松坂さんの上品なたたずまいが作風に合っている。バイオリンさばき(弾く演技)が本格的で、公演シーンで流れるベートーベンの第5交響曲「運命」とシューベルトの第7交響曲「未完成」は、佐渡さん指揮のドイツの名門ベルリン・ドイツ交響楽団の演奏だ。俳優たちの演技は、迫力のある音に負けておらず、さまざまなカットから撮られ、緊張感の高まりが画面からうかがえる。映画初出演のシンガー・ソングライターmiwaさんが、天道と団員たちの触媒となるあまね役を、無邪気に演じている。丸の内ピカデリー(東京都中央区)ほかで31日から全国で公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今月公開作で一番泣けたのは、実在のアスリートの半生を描いたインド映画「ミルカ」(ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督、30日公開)でした。
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