清水翔太:初のシングルベスト盤発売 曲作りは「実体験に“魅惑の調味料”を振りかけて作る」

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 シンガー・ソングライターの清水翔太さんが、自身のキャリア初のベストアルバム「ALL SINGLES BEST」を2月25日にリリースした。2008年2月のデビュー曲「HOME」から最新曲「I miss you−refrain−」までの全シングルを収めた2枚組みで、これまでの7年間の音楽活動が集約された作品になっている。そんな清水さんに7年間での変化や楽曲制作のエピソードなどについて聞いた。

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 −−清水さんが18歳だった頃のデビュー曲「HOME」は、故郷を離れて夢を追う心情がつづられた曲としてとても新鮮でした。

 当時、大阪(地元)で音楽のスクールに通っていたんですけど、普通の学校では、勉強もできなかったし、何より価値観や話が合わないから友達ができなくて、すごく嫌だったんですね。でもスクールでは、音楽を介してつながるわけですから、いっぱい友達ができて、グループを組んで一緒に歌ったり、踊ったりしていました。ただやっぱり、自分はソロのシンガー・ソングライターとしてアーティストになるっていう意識が当時から強くあったので、いくらその場所が楽しかったり、心安らぐ場所だったりしても、一人でやっていく以上はそこを飛び出していかなきゃいけないんだろうなって。でも、やっとできた仲間を失うのはすごく嫌で、できればずっとコイツらとグダグダやってたいな、という気持ちもあったりして……。

 でもやっぱり、夢を選ぶというところでそこを飛び出していくわけで、その結果、今があるのでそれは正しいんですけど、その瞬間はやっぱり苦しかったというか。だからやっぱり考え方としては子供なんですよね。「もう二度とここには戻って来られない」というか。そんなことないんですよ。今となっては、そいつらもみんな東京に出てきて、普通にたまに集まって飲んだりしてるし。でも当時は本気で「初めてできた自分の“HOME”を失うことになる」という意識がすごくあって。そういう意味では、子供だから書けたきれいな言葉だなと思うし、素晴らしい曲だと思います。

 −−なるほど。そのほかにご自身で特に印象深い楽曲は?

 「君さえいれば feat.小田 和正」(2012年発売)ですね。自分が書いたものを小田さんが歌うと思うとけっこうプレッシャーで、当時の小田さんのソロやオフコースの曲をすごく研究したんですよ。せっかくの機会だし、小田さんに寄り添った曲を作りたいなと思って。だから、この曲がリリースされた当時は僕が作ったと思われなくて、小田さんが書いたと思われるぐらいだったのは、狙い通りで、逆にうれしかったですね。

 あと、歌詞のテーマは、僕は結構リアリティーというか、その年齢や人生経験に比例する言葉の重みというのを意識していて、「20代の僕が言ったところで……」っていうテーマや言葉っていっぱいあるんです。でも、そういうところも小田さんとだったら言えるなっていうのもあって、心強かったというか。そこから「君さえいれば」という言葉がまず出てきたので、ある意味、小田さんと一緒に音楽をやっているというところのことを書いてる曲でもあるんです。

 −−確かにこの曲の歌詞には普遍的なテーマを感じますね。一方、ほかの曲はラブソングが多いと思いますが……。

 20代の特に前半の現実なんて、恋愛しかないですから(笑い)。一番リアルなことをやれって言われたら、やっぱりラブソングになっちゃいますからね。例えば単純に、遠距離恋愛をしていたので、遠距離恋愛やそれを思わせる表現は多いですね。でも、実体験だけで曲を書いたことは基本的になくて、想像やドラマの部分っていう“魅惑の調味料”みたいなものを混ぜておいしくするというか。その混ぜ具合は“企業秘密”だったりするんですけど(笑い)。でも「遠距離」というのは、今までの清水翔太を語る上では大きなファクターかもしれないです。僕はいつも距離というのを考えるんです。相手との距離感を認識することが人を傷つけない一番の方法で、大事なことだと思ってます。

 −−アルバム全編を通して、寂しがり屋の主人公像が透けて見えるのですが、ズバリ、清水さんご自身はどうですか?

 僕は相当、寂しがり屋だと思いますよ。例えば、友達が家に遊びに来たら、何泊してもらっても構わない。好きな時に帰って好きな時に来ればいいよと。でもそれをやってたら、以前、帰るタイミングが分からなくなっちゃって3カ月くらいに家に住んでたヤツがいましたね(笑い)。

 −−そんなに寂しがり屋で、10代の「HOME」の頃は大変だったのでは? 友達に会いたいとか遊びたいとは思いませんでしたか。

 遊びたいとは思わなかったですね。今のほうが全然遊びたいです。僕はビリヤードと釣りっていう二つの趣味があるんですけど、そういうストイックで自分と向き合う遊びが好きで。釣りは自分の考えややり方でロックオンする(相手を狙う)っていうところは(音楽と)一緒で、そこの快感が似ているんだと思います。

 −−今作はまさに10代から20代への過渡期の曲が詰め込まれていると思いますが、自分の中で大人になったなと感じることは?

 「俺、最強」みたいなのがなくなって「みんな違ってみんないい」みたいなところにいきますよね。当時は「誰も俺のまねなんてできねえ」ぐらいの調子こきっぷりがありましたけど(笑い)、今は「自分にしかできないことを探しております」ぐらいの(謙虚な)感じになりました。「俺のやっていることは誰にもできない」と「人にはできないことをしよう」っていうことの違いですよね。それは単純に、時間の経過の中で心が成熟していったんだと思います。

 <プロフィル>

 しみず・しょうた 1989年2月27日生まれ、大阪府出身。2008年2月にシングル「HOME」でデビュー。清水さんが初めてはまったポップカルチャーは、小学生の頃にやっていたというプレイステーション用ゲーム「モンスターファーム」。「モンスターを育てて戦わせるっていうゲームなんですけど、CDを入れるとCDからモンスターが出てくるんです。CDを再生して『ドラゴン出たわー』みたいな(笑い)。だから当時、CDを買いあさってました」と話した。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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