中村蒼:「初めての賞」で手応え シュールな役で新境地

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 俳優の中村蒼さんが、2月23日に閉幕した「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015」(ゆうばり映画祭)で、期待の映画人に贈られる「ニューウェーブアワード」を受賞した。昨年「さまよう小指」で同映画祭グランプリを獲得した竹葉リサ監督の最新作で、今年の同映画祭で上映された「春子超常現象研究所」ではシュールな“テレビ役”を演じるなど新境地を開拓しつつある中村さんに受賞の感想や同作のエピソードなどについて聞いた。

ウナギノボリ

 ◇「初めての賞」自信につながる

 ゆうばり映画祭では、“新しい波”を起こしてほしい映画人に贈られる「ニューウェーブアワード」を受賞。中村さんは「初めていただいた賞なので、素直にうれしい」と笑顔をみせる。明快な答えが存在しない世界で、手探りで自分なりの正解を探してきたという中村さんは「形として評価されることってこの仕事(では)なくて……いいって言われても次にだめと言われることもある。何が正解かわからない世界なので。こういった賞をいただくことで、信じてやってきてよかったと思えますし、今後の自信にもつながります」と語る。

 夕張を訪れたのは初めて。もちろんゆうばり映画祭も初めてだ。事前にいろいろな人からゆうばり映画祭の楽しさを耳にしていた中村さんは「お客さんとの距離が近くて、映画が好きな人ばかりで。その空間で映画が出来上がっている感じがしました」と“初ゆうばり”の感動を語る。さらに、「いろんな映画が流されていて、いいですよね。他の映画祭って、かしこまっているイメージがあるんですが、ここは、いいなあ、と思いましたね」と続け、「また来られるように、作品に出続けないと」と意気込みを語る。

 ◇「理解し難い」役への挑戦

 ゆうばり映画祭では、昨年グランプリを受賞した竹葉監督の最新作「春子超常現象研究所」がプレミア上映された。超常現象を愛する春子(野崎萌香さん)がテレビに向かって独り言を言い続けていると、テレビに心が宿ってしまい、奇妙な共同生活が始まる……というストーリー。中村さんが演じるのは前代未聞の“テレビ役”だ。作品内で、常にアナログな箱型テレビをかぶり続ける中村さんの姿はシュールで、大まじめに行動する姿には思わず笑みがこぼれてしまう。中村さんは「今まで優等生みたいな役が多かったので、今回みたいな役ができて良かった」と振り返る。

 舞台あいさつでは、「理解し難いと思った」とオファーが来たときの感想を打ち明けていたが、撮影中はどのような気持ちで演じていたのだろうか。中村さんは「世界観を理解するのが難しくて、大丈夫かなという気持ちが多かったですね」と当時の不安を吐露するも、「世界観に合わせるためにいろいろしなきゃいけないのかなと思ったんですが、かぶりものをしてる時点でモニターチェックでみたら面白くて……そういう人が、人として話したり動いてるだけでもすごく面白いので、普通の人として演技していました」と楽しそうに語る。

 ◇まず、自分勝手にやってみる

 そんな中村さんが俳優として心がけていることは「自分勝手なことをやってみること」だという。「お芝居をするときに、最初にまず自分勝手なことをやってみる。それで(監督に)違うって言われたら、やり方を変えて。シナリオにあることにプラスしてお芝居ができればいいなと思ってます」と方法論を明かす。「昨年ご一緒した監督の何人かは『好きにやっていい』と言ってくれて……。これまでもそういう気持ちはあったけど、うまくできない部分もあったので、『ああ、やっていいんだ』と思った」と手応えを感じているようだ。

 今後挑戦してみたいのは、バイオレンスな作品の役だという。理由は「難しそうだから」。特に演じてみたいのは「最初から最後までずっと悪い、悪役」だ。映画ばかりでなく、ドラマ出演への意欲も語る。「ドラマをやることで、それを見て映画に足を運んでくれる人も増えるかもしれないし、その逆もある。全部つながっていると思う。今は中心を決めているわけではなく、まだまだ勉強中という感じですね」と笑顔で語っていた。

 <プロフィル>

 なかむら・あおい。1991年、福岡県生まれ。第18回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト(2005年)でグランプリを受賞。映画「恋空」(07年)でスクリーンデビューを果たし、「ひゃくはち」(08年)で初主演。以後、「大奥」「BECK」(ともに10年)などを経て、13年には初のNHK大河ドラマ「八重の桜」に出演、TVドラマ「なぞの転校生」では主演も務める。15年はNHK時代劇「かぶき者 慶次」、映画ではゆうばり国際ファンタスティック映画祭支援作品「春子超常現象研究所」に主演。

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