2016年上半期に発売されるプレイステーション(PS)4向けヘッドマウントディスプレー(HMD)「Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)」の最新試作機が、米サンフランシスコで開催されたゲーム開発者会議「ゲームディベロッパーズカンファレンス」で公開された。昨年のゲームショウでも大きな注目を集めた最新試作機をさっそく体験。まだ課題はあるものの進歩を感じさせる仕上がりになっていた。(小野憲史/ゲームライター)
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「プロジェクト モーフィアス」は、プレーヤーがヘッドマウントのユニットを装着すると、目の前に3D空間が出現するHMDで、PS4と組み合わせることでVR(仮想現実)が体験できる機器だ。ユニット内の加速度センサーやジャイロセンサーに加え、PS4の周辺機器であるPSカメラによってプレーヤーの頭部の動きや位置を検知し、コントローラーを操作せずに、ゲーム内の映像が360度全方向にリアルタイムで変化する。
新型試作機では画面のリフレッシュレート(1秒間あたりの画面の書き換え数)が60fpsから120fpsに引き上げられ、画面がさらになめらかになった。また空間上で位置を特定する「LED」を6個から9個に増やしたりすると共に、ディスプレー部分を可動式にしたため、全体的に操作しやすくなった。さらにコンテンツの作り込みに関して、改良が重ねられた結果、ゲーム画面の残像感や3D酔いなどの不快感を感じることはほとんどなかった。
デモではゴンドラで深海を探索する「The Deep」の新バージョンや、「PS Move モーションコントローラ」を両手に持って銃撃戦が体験できる「The London Heist」、PS4に標準搭載されているソフト「プレイルーム」を題材にした「Magic Controller」、おもちゃ部屋を目の前で観察するような「Bedroom Robots」が公開された。
過去のデモ機では、没入型デバイスの利点を生かして世界の中に入りこむ感覚を押し出していたが、今回は目の前に人の顔が迫ってきたり、精巧な玩具をじっくりと観察させたりと、仮想世界における物体の「存在感」を強調するようなものが多かった。私は眼鏡を装着しているからか、最初は画面のピントが合わなかったが、可動式のディスプレーを前後に調節することで違和感はすぐに解消され、デモに集中できた。
特に悪漢にとらわれた主人公が洋館から脱出するという設定の「The London Heist」では、悪漢に迫られると思わず顔を背けてしまうほどだった。また銃撃戦のシーンでは体を実際にかがめながら机の影に隠れたり、引き出しをあけて拳銃を取り出し、弾倉を交換しながら相手を攻撃するなど、全身を使った複雑なアクションが楽しめた。ただ照準が微妙にずれている感覚があり、原因がディスプレーの位置なのか、ゲーム機側の問題なのか、個人の感覚によるものなのか、判断がつかなかった。
VR(仮想現実)コンテンツは、立体視映像などと同じで、同じコンテンツでもプレーヤーの体調や状態によって感覚が異なり、他人との共有が難しい点がある。立体視映像では手軽に立体感を調整することもできるが、VRコンテンツでは難しいため、作り手にはさらなる改良と配慮が求められそうだ。ともあれ久々に登場した「まったく新しい体験」であることに間違いはなく、ゲームの新たな可能性が期待できそうだ。
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