女優の桐谷美玲さんの主演映画「恋する・ヴァンパイア」（鈴木舞監督）が公開中だ。桐谷さん演じる人間に恋をしてしまったバンパイア・キイラが、初恋相手との再会に喜びながらも人間との“禁断の恋”に悩む姿を描くラブストーリー。キイラが恋する相手・哲を、アイドルグループ「A．B．C−Z」の戸塚祥太さんが演じているほか、実生活でも夫婦である俳優の田辺誠一さんと女優の大塚寧々さんが、映画で夫婦役を初めて演じていることでも話題を集めている。キイラのおば・まりあ役を演じる大塚さんに、夫婦初共演についてや、理想の夫婦像、見どころを聞いた。

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　◇田辺誠一との共演も“普段通り”

　完成した映画を見て「本当に可愛らしい映画」と語る大塚さんは、「ファンタジーだけど、すごく気持ちは伝わってくる。温かい感じがあって、すごく優しい感じの映画だなという気がします」と今作を評する。初恋ものという一面も持つ映画だが、大塚さん自身は初恋のイメージを「ずいぶん前なので思い出せないです」と言って笑う。

　大塚さんが演じるのはキイラのおば・まりあ役で、旦那（だんな）である力彦を演じるのは田辺さん。映画で夫婦役を演じるのは今作が初めてだが、大塚さんはオファーを聞いた時のことを「特に何もなかったです」と冷静に振り返る。撮影現場で顔を合わせても、「お互いプロなので」と普段通りのスタンスで撮影に臨んだという。

　◇温かさを大事にしたまりあ役

　映画ではバンパイアのまりあが、もともと人間だった力彦と恋に落ち、力彦をバンパイアに変身させて夫婦となったという設定だ。役作りや出演作に臨む際に大事にしていることを、「（脚）本が大事。その本が何を伝えようとしているのかが大切だと思います」と言い切る大塚さんは、まりあについて「力彦をバンパイアにしてしまった時に迷いはあったかもしれないけれど、多分まりあは今、幸せなので、それでいいんだと思います」と心情を分析する。そして、「彼女はそういう人だと思う」と深くうなずく。

　一方、力彦については「人間だったのにバンパイアになってくれて（力彦は）いい人だなと（笑い）」とちゃめっ気たっぷりに話すも、「（バンパイアになったことに）戸惑いがないといったら絶対にうそだし、人間に執着がないといったら絶対にうそ」と心情を思いやる。「だから逆に言うと、その正直さも出ていて、揺れる気持ちもあったと思います」と理解を示し、「うそを言ったり、取りつくろったりしない分、信頼できるというか、力彦さんはいい人なんだなと思います」と言ってほほ笑む。

　映画では、まりあは力彦をバンパイアにしたが、キイラは哲をバンパイアにするか思い悩む。まりあはキイラにさまざまな言葉を掛けるが、「私は（バンパイアにするかどうかに関しては）重く言っていなくて、ちょっとからかうようなイメージ」と演技プランを立てた。「本当のことをすごく重く言ってしまうと、場合によってはすごく傷つけてしまったりもすると思いますが、まりあは冗談ではないですけど、さらっと言っている」とキイラへの助言シーンの裏側を明かし、「一つ言えることは、いつも温かい目線で見ている」とまりあの役どころを語る。

　◇大切なのは人間性や誠実さと断言

　映画の設定にちなんで、大切な人に言えない秘密を持っていたら？と聞くと「打ち明けられたとしたら、打ち明けるのが誠実だと思うので、そういうときは正直にお互いの気持ちを話すしかない」と大塚さん。続けて「うそをついたりだましたりすることが最悪だなと思っているので、そういう人は信用できない」と自身の考えを語り、「何かすごい秘密があったとしても、（相手に）言うだけが誠実さではないと思うし、言いたくないことは無理に言わなくていいと思います」という。「それでも構わないし、無理やり聞き出そうとするのもそんなひどい話ではないと思う。言うつもりがなくても相手がふっと言ってきたりとかするかもしれないし」と続け、「大切なのは、話す人も受け止める人も、結果がどうなろうと、その人間性というか誠実さだと思う。ちゃんと温かい気持ちや優しい気持ちがあればいいんだと思います」と力を込める。

　大塚さんはこれまで多彩な役を演じてきたが、実は「作る側が好きな人なんだと思います」と自己分析する。「小さい頃に宝塚を見に連れて行ってもらったようなのですが、その時に『これを作っている人がすごい』と言ったらしいです」と思い出を明かす。さらに、「自分が出るより、本当は作る方が好きなのかも」と切り出し、作ることが好きな理由として、「やっぱりみんなで一つの映画なり、ドラマなり、作品を作っているという感覚がある」と力を込める。

　◇まりあの怪力ぶりに注目してほしい

　テーマ的には女性向けの作品という印象が強いが、大塚さんは「若い男の子が見ても可愛いと思います」と紹介する。今作の魅力を「ピュアな気持ちを思い出す感じ」と説明。そして、男性に向けて、「ちょっとくすぐったいような、でもすごく皆さん分かる分かるという感じだと思う。だから大人の男の人が見てもすごくいいんだと思います」とアピールする。

　まりあ役の見どころは、「怪力の持ち主」であることに注目してほしいといい、「段ボールも軽々と、カゴも実は指一本で持っているんです」と告白。「段ボールとかも軽くしてくださっていても、あれだけ大きいとやっぱり重い（笑い）」と振り返り、「頑張って軽い振りをしてポンポンやっていますけど、やっぱり意外と重いんです。頑張りましたので、そこを見ていただけたら」とメッセージを送った。映画は17日から全国で公開中。

　＜プロフィル＞

　1968年6月14日生まれ、東京都出身。92年、「君のためにできること」で女優デビュー。2001年にはドラマ「HERO」に出演、02年には映画「笑う蛙」で第57回毎日映画コンクール主演女優賞、第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。以降、多数の映画、ドラマなどに出演し、主な出演作に「LIMIT　OF　LOVE　海猿」（06年）、「みなさん、さようなら」（12年）、ドラマ「残念な夫。」（フジテレビ系）などがある。今秋には「ポプラの秋」の公開を控える。

　（インタビュー・文・撮影：遠藤政樹）