注目映画紹介:「白河夜船」 よしもとばなな原作 心の揺れを表現した安藤サクラの演技に注目

「白河夜船」のワンシーン (C)2015 よしもとばなな/『白河夜船』製作委員会
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「白河夜船」のワンシーン (C)2015 よしもとばなな/『白河夜船』製作委員会

 よしもとばななさんが1989年に発表した同名小説を映画化した「白河夜船」(若木信吾監督)が25日に公開される。眠りをテーマにした物語は、女優の安藤サクラさん演じる主人公・寺子が次第に眠りが深くなっていく姿を通し、生きることの息苦しさや喜び、愛することの切なさなどを描いている。原作が持つ独特な雰囲気を、写真家でもある若木監督が見事に映像化。寺子の恋人・岩永役に俳優の井浦新さん、寺子の親友・しおり役を女優の谷村美月さんが演じている。

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 寺子(安藤さん)は仕事もせず、恋人である岩永(井浦さん)からの電話を待つだけの日々を送っている。岩永には交通事故に遭って以来、植物状態の妻(竹厚綾さん)がいるが、岩永と寺子の関係は進展することもなく穏やかに続いていた。ある日、男たちに添い寝をする「添い寝屋」をしていた寺子の最愛の親友・しおり(谷村さん)が死んでしまう。なぜか岩永に打ち明けられないでいたが、寺子はまるでとりつかれたかのように眠りが深くなっていき……というストーリー。

 2014年に公開された「百円の恋」でのアグレッシブな演技が記憶に新しい安藤さんだが、今回は一転して、どこか不安定で複雑な内面を抱えた女性を色っぽく演じ、物語へと引き込む。今作は眠りがテーマだけに、物静かな空気が漂っている。大きな事件などが起こらないため好みが分かれるかもしれないが、現在と過去が奇妙に交錯する不思議な雰囲気には知らず知らずのうちに引き込まれていく。美しく叙情的な映像からはもの悲しさが、安藤さんの演技からは不毛な恋に苦しむリアルな女心が伝わってくる。映画はせりふの言い回しや設定、物語の順番など原作の世界観を大事にしながら、映画ならではの映像美で魅(み)せる。主人公の繊細な心の揺れ動きを秀逸な演技で表現している安藤さんの姿が最大の見どころだ。テアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で順次公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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