ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
青山剛昌さんのマンガが原作の劇場版アニメ最新作「名探偵コナン 業火の向日葵」(静野孔文監督)が公開中だ。今作は、ゴッホの名画「ひまわり」を巡る謎にコナンが挑むシリーズ初の“アートミステリー”というふれこみで、コナンと怪盗キッドが激しい攻防を繰り広げる。江戸川コナン役の高山みなみさん、怪盗キッド・工藤新一役の山口勝平さん、静野監督の3人に、今作の見どころやアフレコでのエピソードについて聞いた。
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今作はシリーズ初のアートミステリーということが話題だが、静野監督は「シナリオライターの櫻井武晴さんのアイデア」と切り出し、ゴッホを扱ったことを「一番日本人になじみのある画家ということや、損保ジャパン日本興亜美術館に『ひまわり』があるということで、『ひまわり』でいこうという話になりました」と説明する。
話を聞いていた山口さんは、「アートミステリーという今までは扱ったことのない題材の中でミステリーを作り上げていくこと」を見どころに挙げ、「キッドが出るということで画面に大きな動きが出ているので、そこも楽しんでもらえるとうれしい」とキッドの活躍ぶりを強調した。高山さんも「キッドが出てくることで空の空間がすごい広がる」と同意し、「立体的な空間ができているということが一つの見どころだと思います」と力を込める。
ストーリー構成としては序盤に山場があり、後半もさらに盛り上がるという形になっているが、「自分で演じているし、ストーリーも分かっているはずですが、手に汗握るシーンは力が入って手を握りしめて見てしまう(笑い)」と山口さん。続けて、「長年、この作品を作ってきているスタッフさんたちなので、見せどころをよく心得ていてすごい」と称賛を送る。高山さんは「脚本の段階から監督が演出をして膨らませ、そこから短くしたのが今回の作品」と明かし、「ものすごく凝縮されているから、話の展開も速いし、アクションもスピード感があるし、密度の濃いものになった」と絶賛した。
アフレコ現場での様子について、「自分はまだ入って……といっても、もう5年たちます」と笑う静野監督は、「名探偵コナン」について「20年以上も続いている作品なので、隅々までは知り尽くしていない部分もある」と冷静に分析。続けて、「このキャラクターはこうやってしゃべる、きっとこう言うだろうという部分は、毎回アフレコをやりながらキャストの皆さんに教えてもらっている感じです」と現場でのやり取りを明かす。
謙虚な発言をする静野監督を「鬼才です!」と言い切る高山さんは、「こちらの想像をはるかに超えるところに毎回驚かされます」と絶賛。そして、「アフレコのときは、せりふや状況などを聞きに行きます」と話す高山さんに、静野監督は「すごく悩んでいたパートがあって、高山さんも気にしていらっしゃいましたが、高山さんにそのシーンのせりふを変えてもらい読んでもらったらすごくスムーズになり、コナンはやっぱりこうだなと思いました」と感心する。
一方、山口さんは静野監督を「すごく恥ずかしがり屋な人」と評し、「言葉少なに語るタイプですが、こちらが提示した考えには歩み寄りを見せてくださる監督。やっていてストレスはないです」と感謝する。うなずきながら聞いていた高山さんは「アフレコが終わった後のダビング作業のとき、細かくいろんな指示を出して作り上げている姿を目の当たりにすると、やっぱり監督の作品なんだなと」と敬意を表し、「出来上がりのビジョンがきっちり見えているから、できることというのがよく分かります」とたたえた。
それぞれに印象に残っているシーンを、高山さんは「鈴木次郎吉のシーン」といい、「『金はもうよい!』というせりふはカッコいい!」と笑顔を見せる。そして、「次郎吉を追い掛けていくと、今まではそれほどという気もしなくはなかったですが、今回は鈴木財閥のすごさが見えた気がします」とちゃめっ気たっぷりに語る。すると静野監督が「自分は監督なので全部のシーンにこだわりを持って作っているので、どこかと聞かれると困る(笑い)」といいつつ、「今回は園子ちゃんに頑張ってもらっています。ちょっとキャラじゃないような園子の新たな一面を見ていただきたいなと思います」と新一と毛利蘭の友人で鈴木財閥の令嬢・園子の活躍ぶりを推す。
高山さんが挙げた次郎吉のせりふを「一度言ってみたい」という山口さんは、「ゴッホの『ひまわり』が随所に出てくるのですが、そこだけ不思議な空間になる」ことが印象的だという。「絵画的なものがアニメーションの中に入ってくると、すごく存在感を持つと思った」と説明し、「最後に、ポルノグラフィティさんの主題歌と一緒に『ひまわり』の実物が出てくると、それだけで鳥肌が立ちます」と目を輝かせる。
山口さんはキッドと新一を演じているが、「最近は難しさというよりも、こんなおいしいことをやらせてもらってごめんなさい(笑い)」と豪快に笑う。「なにせ(キッドは)カッコいいですから、最初の頃はどうしようかと悩みました」と振り返り、「自分にないものをたくさん引き出さないといけなくて最初のうちは照れてしまいましたが、今は両方演じさせてもらうことが役者冥利(みょうり)に尽きるというか、やらせてもらえる間は十分楽しみたい」と笑顔で語る。
今では「新一とキッドは自然と分かれてきました」という山口さんは、「今作ではキッドであったり新一であったりするので、そこをどのくらいずつエッセンスを乗せながらやろうかというさじ加減が楽しかった」と語るも、「最近はキッドの方が出番が多く、キッド寄りになっていた感じもあったので、今後、新一に寄せられるかなというのがちょっとありました」と冗談ぽく打ち明けた。
3人に初めてはまったポップカルチャーは?と聞くと、山口さんは「 “テレビマンガ”と言っていましたけどアニメかな」、高山さんは「私はマンガ」、静野監督は「(スティーブン・)スピルバーグの作品」とそれぞれ夢中になったものを挙げる。高山さんが、「子供の時の方が少女マンガぽいのを読んでいたかな」というと、山口さんは「僕はだいたい下町ものでした(笑い)」と掛け合いで応じる。
多くの見どころがある今作だが、「作品を見てくださった方がどんな感想を持つのか、すごい楽しみ」と期待を寄せる山口さんは、「キッドと新一を演じる上で、これまでとは違った挑戦もしていて、どう反映されているか、スクリーンで見ていただければと思います」とメッセージを送った。
高山さんは「初のアートミステリーということで、これまでとは違う作りになっている」といい、「よく聞いていないと、どの『ひまわり』の話をしているか分からなくなるかもしれません(笑い)。多分、1回見ただけでは分からないと思いますので、何度でも劇場に見に来ていただきたい」とユーモアたっぷりにアピール。そして「劇場版コナンを作る時は毎回自分に新たなチャレンジを課して作り、今回は海外のフィルム作りの手法を取り入れている」と語る静野監督。「フィルム尺としては3時間オーバーするぐらいのフィルム素材を作り、そこからエンターテインメント性を高めたり面白さを追求するため、細かいところを削って1時間強に収めるという作り方にチャレンジしたことで、テンポのいいフィルムになったのではと思います」と自信をのぞかせる。そして最後に「これまでとは違うフィルムのテンポを楽しんでもらえたらと思っています」と力を込めた。
<高山みなみさんのプロフィル>
1964年5月5日生まれ、東京都出身。1987年にアニメ「ミスター味っ子」の味吉陽一で初主演。89年には劇場版アニメ「魔女の宅急便」でキキとウルスラの2役を演じ注目を集める。アニメ「忍たま乱太郎」の主人公・乱太郎や「名探偵コナン」の主人公・江戸川コナンなど人気キャラクターの声を数多く担当している。
<山口勝平さんのプロフィル>
1965年5月23日生まれ、福岡県出身。1989年にアニメ「らんま1/2」の早乙女乱馬で声優として初主演を果たす。以降、アニメや洋画吹き替え・ナレーターなど数多くの作品に出演。アニメ「ONE PIECE」のウソップ役としてもおなじみ。
<静野孔文監督のプロフィル>
1972年生まれ、東京都出身。OVA「ジャイアントロボ THE ANIMATION-地球が静止する日」の制作に参加後、3DCGの演出家として活躍。2005年には米国で放送のテレビアニメ「G.I.ジョー:SIGMA6」の総監督に抜てきされる。劇場版アニメ「名探偵コナン 沈黙の15分」(2011年)でメガホンをとり、日本アカデミー賞優秀アニメーション賞を受賞。以降、今作まで劇場版コナンシリーズの監督を務めている。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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