俳優の北村有起哉さんが12日、こまつ座第109回公演「戯作者銘々伝」の公開稽古(げいこ)を行った。山東京伝役で主演を務める北村さんは「こまつ座公演としては、新しい輝かしい一歩目となります」と同作に期待を寄せるも、「小説を基にして戯曲にするという作業は、なかなか簡単にいくものではないと日々肉体を通して痛感しています」と語った。
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今作は、井上ひさしさんの小説「戯作者銘々伝」と「京伝店の烟草入れ(きょうでんだなのたばこいれ)」を基に、演出も手がける東憲司さんが書き下ろした同劇団の新作。江戸時代後期を舞台に、黄表紙や洒落(しゃれ)本が弾圧されながらも筆を折らず「笑い」にすべてを懸けた戯作者たちの鬼気迫る生き方を描く。今回初めてこまつ座で作・演出を担当する東さんは「光栄でうれしかったのですが、ものすごい重圧もあった」と感じ、「今回書くにあたって、江戸のことや井上さんの世界観をもっと勉強しなければならない」と思い、井上さんの蔵書21万冊が保管される山形県川西町の遅筆堂文庫に7週間も通ったことを明かした。
公開げいこには、新妻聖子さん、玉置玲央さん、相島一之さん、阿南健治さん、山路和弘さん、西岡徳馬さんも参加。唯一の女性キャストでお園ほか3役を演じる新妻さんは「京伝の先妻と後妻の両方を演じるということで複雑な気分ですが、京伝の妻を二度味わえるのはおいしい感じなのかな」と言ってほほ笑んだ。西岡さんは「このメンバーならきっといいものができる。自分自身への期待もある」と自信をのぞかせると、北村さんも「社会や政治を風刺してかみついたりした戯作者たちの生きざまを、現代の皆さまの前でも生き生きと描かせていただければと思います」と意気込みを語った。「戯作者銘々伝」は24日から新宿南口・紀伊國屋サザンシアター(東京都新宿区)、6月20日には兵庫県立芸術文化センター(兵庫県西宮市)で上演。(遠藤政樹/フリーライター)