漆原友紀さんの人気マンガが原作の劇場版アニメ「蟲師 特別編『鈴の雫』」(長濵博史監督)が16日に公開される。「蟲師」は、1999~2008 年に「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載されたマンガで、05年と14年にテレビアニメが放送され、07年には実写映画化された。架空の日本を舞台に、蟲師を生業(なりわい)とする主人公・ギンコが、蟲によって引き起こされるさまざまな事象に対峙(たいじ)していく姿を描く。「鈴の雫」は、原作10巻に前後編で収録された最終エピソードをアニメ化。人でありながら山のヌシとなるべくして生まれたカヤを巡る物語が展開する。テレビアニメ第2期「続章」の特別編「棘のみち」も同時上映される。
ウナギノボリ
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葦朗(声・小川ゲンさん)の妹・カヤ(声・齋藤智美さん)は、生まれたときから体に草が生えていたが、ある日、姿を消してしまう。一方、旅の蟲師・ギンコ(声・中野裕斗さん)は山中で山のヌシと出会い、疲れている様子のヌシに薬を差し出す。その後、ギンコは妹のカヤを探す葦朗と出会い……という展開。
「蟲師」の魅力は、日本の里山や古い家屋などノスタルジックな風景が古き良き時代の日本を感じさせ、小さな生物や民話、伝承といったものを取り入れた独特の世界観にある。蟲の描写は少しグロテスクで驚かされもするが、柔らかく落ち着いた雰囲気の作風に心が和む。主人公ギンコは、ひょうひょうとしていて無気力そうでいながらも、心の奥には信念を持ち、芯の強さを感じさせるあたりが心憎い。劇場版ではギンコとカヤの物語が描かれるが、テレビシリーズと同じスタッフが手掛けているだけあり、作品の世界観はもちろん、クオリティーも高く、原作の最終エピソードを余韻の残るアニメとして見事に表現することに成功した。ギンコとカヤ、そして大いなる存在である「理」と三者三様の立場の考え方のどれに共感するか、また理解を示すかを考えながら見るのも一興だろう。新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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