リバイバルアニメ:「ドラゴンボール」や「寄生獣」など続々 名作復活の理由

「ドラゴンボール超」のビジュアル(C)バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
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「ドラゴンボール超」のビジュアル(C)バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 「ドラゴンボール」や「美少女戦士セーラームーン」など、かつてブームを巻き起こした作品の「再アニメ化」が話題だ。さらに「寄生獣」や「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの第1~3部なども、連載終了後から10年以上経過してテレビアニメ化される現象も起きている。これらの話題作は、1980年代から90年代に連載していた作品に集中している。なぜ、昔の作品が“リバイバル(復活)”され、脚光を浴びるのか。その背景を探った。

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 ◇スタッフ&ファンの思い入れ強く

 まずリバイバルアニメの存在は、現代によみがえらせるべき作品を選別し、資金の調達や制作スタッフの座組に尽力するプロデューサーの熱意なしにはありえない。1980年代半ば~90年代に10代の多感な時期を過ごした彼らが、現在では30代~40代となり、テレビ局やアニメスタジオなどで発言力を持つ地位にいることと無縁ではない。

 そうした状況は、ユーザーについても同様だ。リバイバル作品に思い入れのある世代は、可処分所得に余裕がある人も多く、過去作品のブルーレイ・ディスクのボックスは、好調な売れ行きを見せている。彼らが熱中した作品であれば、ヒットしやすい素地があるためだ。制作陣、ファンにも強い思い入れがあるため、かつての名作に注目が集まるのは必然の流れと言える。既に2000年代後半、読売テレビでは「ヤッターマン」が一部の設定を変更して復活し、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」では、「ゲゲゲの鬼太郎」の原形とも言える「墓場鬼太郎」も放送され、深夜アニメとしては異例の5.8%もの視聴率を記録するなど、兆候はあった。

 そして「再アニメ化」は、過去作品の「焼き直し」とイコールではない。かつて原作マンガとアニメとの関係は、距離を置いた時期があった。1980年代になると、アニメの展開が、原作マンガの展開に追いつく現象が起こり、時間を稼ぐ狙いでオリジナルストーリーを挿入したのだが、それが別モノの感を強くしていた。だが、かつての名作マンガは連載を完結し、今であれば完全に原作に準拠したアニメ化も可能となる。元のテレビシリーズを再編集して原作に近づけた「ドラゴンボール改」や、再度アニメ化された「鋼の錬金術師」はその好例といえる。

 ◇深夜アニメの乱立も追い風に

 そして現在、アニメ化する原作の対象も広がったことも、リバイバルアニメの躍進に影響している。かつては、高年齢層向けの小説やマンガは、玩具など低年齢向けの商品化とスポンサーを前提としたテレビアニメでの展開が難しかった。「ジョジョの奇妙な冒険」などが、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)で展開されたのはそのためだ。しかし、1990年代後半、深夜のアニメ枠が開拓され、DVDでコンテンツ自体を販売して制作費を回収するビジネスモデルを確立してからは、さまざまな作品がテレビアニメの対象となった。

 現在の深夜アニメは、不発時のリスク回避のため、1クール(3カ月)ごとに作品を変更するのが主流だが、結果としてコンテンツの消費スピードが速まり、有力作はアニメ化権を奪い合う状況になるほどになっている。そんな中で注目されたのが、かつての名作をリバイバルする手法だった。「寄生獣」のようにキャラクターの設定や時代背景を変更するなど大胆なアレンジを施して、人気を博した作品も生まれている。

 そして夏放送のアニメだけでも、魔人ブウとの激闘の後を描く「ドラゴンボール超」、週刊少年サンデーで連載された藤田和日郎さんの傑作「うしおととら」が注目を集めている。春放送開始のアニメでも、やはり、1980年代に原案の小説が、90年代にはOVAが出た「アルスラーン戦記」も人気を博し、リバイバルアニメの強さを知らしめている。

 ◇世界人気でリバイバルに火

 リバイバルは、日本だけでなく、世界でも求められている話でもある。2009年にテレビアニメ化された「ドラゴンボール改」も、元々はハリウッド実写映画の「ドラゴンボールエボリューション」の公開と同時期にスタートした。その後、2013年公開の劇場版「神と神」、今年公開の「復活の『F』」、そしてテレビアニメ「超(スーパー)」へとつながった。原作者の鳥山明さんが苦言を呈(てい)したことでも話題を呼んだ実写映画版だが、「ドラゴンボール」のリバイバルの火付け役になったことは疑いないところだ。

 昨年から今年にテレビアニメや実写映画が公開された「寄生獣」も、さかのぼれば2005年にハリウッドでの映画化が報じられていた。2008年にリメイクされたテレビアニメ「ヤッターマン」も、やはりタツノコプロ原作の「マッハGoGoGo」を実写化した「スピードレーサー」と同じ年に放送された。ハリウッドの製作会社は映画化権を買い付けたものの、完成に至らないケースもあり、完成しても日本のファンの期待に応えるわけではない。そうなれば、原作のイメージをより守りやすい国内制作のアニメで……という動きがあるのも納得できる。

 モンキー・パンチさんの人気マンガ「ルパン三世」のテレビアニメの新シリーズが、国内での放送より先に、イタリアでスタートすることになったのも、海外で日本の過去作品の人気が高い証拠といえるだろう。フルCGの劇場版アニメ「キャプテンハーロック」も、フランスやイタリアでヒットしたように、日本のエンタメは確実な需要がある。国内の映画やテレビアニメも市場が頭打ちになり、タイトル不足に苦しむ中、すでに知名度のあるリバイバルアニメは資金集めに優位なのも利点だ。こうしたブームが、国内・海外でどのようなムーブメントを作るのか。今後の展開に注目だ。(多根清史/アニメ批評家)

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