丸本莉子:声に特徴 ユーミンや玉置浩二のような「存在感のある歌声を持った人になりたい」

訪問介護の経験も歌にしたという丸本莉子さん
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訪問介護の経験も歌にしたという丸本莉子さん

 今年6月にハイレゾ配信シングル「ココロ予報」でデビューした丸本莉子さんが、初のミニアルバム「ココロ予報~雨のち晴れ~」を16日にリリースした。心に響く太く特徴的な歌声と、やさしく温かみのあるメロディーが詰まった、聴く人の心に自然と寄り添ってくれるアルバムに仕上がっている。丸本さんにこれまでの活動を振り返ってとアルバムについて聞いた。

ウナギノボリ

 ――ハイレゾ音源でのデビューでしたが。

 声に特徴があるから、ぜひハイレゾで出さないかということでした。ただ、子供のころは声にコンプレックスがあって。あるときお風呂で大きな声で歌っていたら、父親から「お前の声はカエルみたいだ」と言われて、とてもショックを受けました。でも、やっぱり歌が好きだったので、それでもずっと歌い続けて、今では父親も本当に応援してくれています。

 ――その特徴的な声に自信を持つようになったのは、いつくらいからですか。

 高校を卒業してからです。聴いてくれる人から「声がいい」「誰にも似ていない声だね」と言ってもらえることが増えて。そのころ、自分でボイストレーニングに通うようになっていたので、きっと自分の声の生かし方をつかんできていたんじゃないかなと。それで、変わった声はいいことだ、声が武器になるんだと自信が持てるようになりました。

 ――最初からプロになりたいと思って活動をしていたのですか。

 有名になりたいとは思っていました。小学校から高校1年生までバレーボールをやっていたのですが、バレーの練習は苦痛でどこかやらされている感があって。でも歌や音楽は、何時間やっていても楽しかったので、自然とこれをずっとやっていきたいと思っていましたね。それで高校2年生のときからアコースティックギターを持って一人で活動するようになり、高校卒業後は2年間、訪問介護の仕事をしながら、地元を中心にときには東京でもライブをやったり、地道に活動をしていました。

 ――音楽活動をする上で大事にしていることはなんですか。

 カッコつけないことです。ミニアルバムのタイトルにもなっている「ココロ予報」という曲は、上京してすぐのころに作った曲で。初めてテレビ番組の主題歌で、テーマもあって、プロデューサーさんもいて、私にとって初めてづくしで、すごく曲作りが大変だったんです。そのときプロデューサーから言われたのが「カッコつけるな」という言葉でした。それまで私は、背伸びしてどこか上から目線になっていたんだと思います。それでプロデューサーから言葉をもらって、ハッと気づかされて。そのときの自分の状況を、お天気の雨のち晴れに重ねて書きました。

 自分の率直な気持ちが初めて書けた曲でしたが、最初はこれが本当に人の心に届くのか、すごく不安でしたね。でもそれが、地元の広島ではたくさんの人に聴いていただけて。離婚して人生のどん底だったけれど、この曲を聴いて頑張ろうと思えたとか、明日手術で怖かったけれどこの曲で勇気が持てたとか、いろいろな反響をいただいて。偽らずにありのままの気持ちを書けば、必ず共感してもらえるんだと分かりました。

 ――どの曲もとても前向きですが、もともと前向きな性格なんでしょうか。

 いえ、めっちゃマイナス思考です。でも、だからこそ、こういう前向きな歌が書けるのだろうと思います。どんなにマイナスな気持ちで書き始めた曲であっても、最後にはプラスで終わりたいと思っていて。失恋してもまた次の恋が待っていると思いたいし。必ず聴いた人が、次の一歩を踏み出せるような気持ちを込めるように心がけています。

 ――今回のミニアルバムには、高校生の時に作った曲もあれば、広島時代の曲も、さらに最新の曲も収録。丸本さんのさまざまな時期の楽曲が収録されていますね。

 はい。高校2年生から8年間音楽活動をしている中での、そのとき、そのときの曲がちりばめられています。収録曲以外にも本当にたくさんの曲を作ってきているのですが、今回のミニアルバムでは、声の特徴がより伝わる曲を選曲しました。

 ――ユーミン(松任谷由実さん)のカバー「やさしさに包まれたなら」も収録していますね。

 高校生の時に音楽を真剣にやるなら勉強しなくちゃと思って、アルバムを改めて聴きました。ユーミンさんの歌は、スタジオジブリの映画に使われていたり、学校で「春よ来い」を歌ったりとか、日常のさまざまなところにあるんですよね。それにユーミンさんも歌声に特徴があるので、そこはとても共感します。あと、玉置浩二さんもすごく好きで、実は生まれて初めて行ったコンサートが玉置浩二さんなんです。すごく小さいころに、父親に連れられて行ったんですけどね。玉置さんの「ルーキー」という曲は、上京仕立てのときによく聴いていました。私も、存在感のある歌声を持ったアーティストになりたいと思っているので、お二人のようになれたらなとすごく憧れます。

 ――インターネットで配信したスタジオライブ音源も収録。そのうちの1曲「心のカタチ」は介護の仕事をしていて作った曲だそうですね。

 高校卒業後、訪問介護の仕事をしていました。母親がやっていて、大変そうだったけどいつも充実している様子だったので、私もやりたいなと。訪問介護のお仕事は、おじいちゃん、おばあちゃんのお世話もあれば、障害を持った子どものお手伝いをしたりというのもあって。そのとき、いつも笑顔を絶やさない子どもたちに癒やされ、元気をもらっていて。そのすてきな笑顔を歌にしたいと思って、当時、サビだけ作っていました。その後、東北の震災があったときに、チャリティーイベントでみんなと歌える曲を作りたいと思って、訪問介護のときの子供たちの笑顔を思い出しながら、震災に際しての気持ちを含めて曲の形に仕上げたのが「心のカタチ」という曲です。

 ――丸本さんの歌には、きっと誰かの役に立ちたいという気持ちが原点にあるのでしょうね。

 訪問介護は素直にありがとうという言葉をもらえる、すてきなお仕事でした。ありがとうと言ってもらえたら、もっとしてあげたいと思うし。当たり前だけど当たり前じゃない気持ちというものを、すごく学ばせてもらったと思っています。それは、今の音楽活動にもすごく生かされていると思いますね。作詞や作曲というのは、どんなに順調でもやっぱり大変な作業です。苦労して作った曲に共感してもらえたときは、作って本当によかったと報われた気持ちになります。

 ――今後はどんな活動をやっていきたいですか。

 生きるということは、きれいごとだけじゃないと思っています。なので、もっと裏側の心も見せて、それでも裏の顔がないような歌をやっていきたいです。一番の目標は、自分が死んだ後でも残っていく音楽を作ることです。あと、広島の安芸太田町というところで、野外フェスをやりたいです。過疎化が進んで大変な側面もあるけれど、すごくお世話になっている町で、野外フェスにはぴったりの場所なんです。何年後になるか分からないけれど、そういうことがやれるくらいになりたいですね!

 <プロフィル>

 広島県出身。高校2年生からギターの弾き語りを始め、オリジナル曲を作るようになる。2011年に、広島ホームテレビの番組「雨のち晴れ」の主題歌「ココロ予報」を歌い広島を中心に話題になる。今年6月にハイレゾ先行配信シングル「ココロ予報」でメジャーデビュー。これまでに配信シングル「やさしいうた」や、配信スタジオライブアルバム「丸本莉子 LIVE at Victor 302 studio」などリリース。今月26日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催の「ツーリズムEXPOジャパン」でライブを行うほか、10月17、18日に徳島県・あすたむらんど徳島で開催される「2015 四国放送まつり」に出演(丸本さんの出演は18日のみ)。12月19日に、広島県・BLUE LIVE HIROSHIMAでワンマンライブ「丸本ん家(ち)へようこそ~ぷれぜんとふぉーゆー2015~」を開催する。

 (インタビュー・文・撮影/榑林史章)

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