ジョー・ライト監督:ピーターパン役リーバイ・ミラーと「PAN~ネバーランド、夢のはじまり~」語る

「PAN~ネバーランド、夢のはじまり~」でジョー・ライト監督(左)とリーバイ・ミラーさん 
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「PAN~ネバーランド、夢のはじまり~」でジョー・ライト監督(左)とリーバイ・ミラーさん 

 世界中の人々に愛されてきた“ピーターパン”の前日譚(たん)を描いたファンタジー映画「PAN~ネバーランド、夢のはじまり~」が全国で公開中だ。メガホンをとったジョー・ライト監督と、ピーターパンを演じたリーバイ・ミラーさんが作品のPRのためにこのほど来日。映画について語った。

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 ◇一番のお気に入りはロボットアーム

 映画「PAN~ネバーランド、夢のはじまり~」は、20世紀初頭にスコットランドの作家ジェームズ・マシュー・バリーさんが発表したピーターパンの物語にインスピレーションを受けて作られたオリジナルストーリーだ。ミラーさんが演じる孤児院育ちの少年ピーターが、母(アマンダ・サイフリッドさん)の手紙を見つけたことで、“夢の国”ネバーランドへの旅が始まる。しかし、ネバーランドは海賊・黒ひげ(ヒュー・ジャックマンさん)の支配下にあり、ピーターは民衆のために黒ひげと戦う……というストーリー。

 これまでのピーターパンの物語がそうだったように、ピーターもまた不思議な力によって空を飛ぶことができる。その空飛ぶシーンのためにミラーさんは、ハーネスを装着しワイヤでつるされたり、腰のあたりに取り付けられたロボットアームによってぐるぐる回転させられたりしたそうだ。そのロボットアームがミラーさんの「一番のお気に入り」だったといい、「本当にサイコーだった」と屈託ない。ハーネスは「(体に)食い込んでちょっと痛かったけど(笑い)、カーニバルのような先住民の二つの村のセットを上から見ることができて、カラフルで本当に楽しかったです」と澄んだ青い目を輝かせる。

 ミラーさんは、何千人もの応募者の中からピーター役に選ばれた。彼を選んだ決め手についてライト監督は、隣に座るミラーさんに「耳を塞いでなよ」といってから、「とにかく才能にあふれていた。彼は、それがリアルなこととして感じさせる演技ができる。それに、斜に構えたような皮肉な印象がかけらもなく、オープンな感情というものを伝えてくれた」ことを挙げる。そして、手のひらを下に向けてひらひらさせ「まあまあ」というジェスチャーをしながら、「あとは、結構ハンサムだからかな」と笑顔を見せた。

 ◇「ヒューは本当にすてきな人」

 ミラーさんは、自分とピーターの共通点は「冒険好きなところ」で、異なるところは「彼(ピーター)は永遠に少年だし、大人になりたくないと思っている。でも僕は大人になりたいんです。大人になったらできることがいっぱいあるから」と話しながら、今度は隣に座るライト監督の表情をうかがう。するとライト監督は「僕からすると、彼とピーターの共通点は勇敢なところ。リーバイが、この映画のけん引役としてピーターという中心人物を演じたことは、空を飛ぶことより勇気がいることだったと思う」と小さなヒーローをたたえた。

 そんな「勇気ある」ミラーさんでも、ジャックマンさんが演じた黒ひげは「びびってしまう」ほど怖かったという。しかし、ジャックマンさん本人については「ヒューは本当にすてきな人です。共演できてうれしかったし、光栄でした。役者の先輩として見ているだけで多くのことを学べました」と美しい瞳をきらきらさせながら、同じオーストラリア出身の偉大な先輩との共演を振り返った。

 ◇伝えたかったのは「自分自身を見つけること」

 さて、今作に登場する先住民たちが暮らす村はどこか演劇の舞台を思わせ、黒ひげのコスチュームにしても、騎士が着けるような鎧(よろい)を着けているなど一般的な海賊が身に着ける粗野で味気ないものとは異なり、演劇で使われる衣装のようだ。そこには多分に、ライト監督が舞台演出家としての顔を持つことが関係しているように見える。

 そんな指摘に、ライト監督は「演劇的な映画を目指したわけではないけれど、う~んどうだったかな」と記憶を手繰り寄せ、「確かに、パントマイム的な作品を意識したかもしれない」と明かす。その上で、作品に託した思いを「ただ、僕が作ろうとしたのは夢のような映画。古典的でありながら、11歳の少年の視点でつづられるもの。壮大なスケールの作品ではあるけれど、僕にとって一番大切だったのは、少年が母親を捜していく過程で自分自身を見つけていくことにあるんだ」と語り、インタビューを締めくくった。映画は全国で公開中。

 <ジョー・ライト監督のプロフィル>

 1972年生まれ、英ロンドン出身。2005年「プライドと偏見」で長編映画監督デビュー。その後、「つぐない」(07年)で米アカデミー賞7部門でノミネート、最優秀作曲賞を受賞した。ほかに「路上のソリスト」(09年)、「ハンナ」(11年)、「アンナ・カレーニナ」(12年)など。13年には舞台劇の演出を務め演劇界デビュー。製作会社シューボックス・フィルムズの創立者でもあり、「ハミング・バード」(12年)、「オン・ザ・ハイウェイ その夜86分」(13年)ではプロデューサーを務めた。

 <リーバイ・ミラーさんのプロフィル>

 2002年生まれ、オーストラリア出身。世界中で行われたオーディションを経て今作のピーター役に選ばれメジャー映画デビューを果たした。テレビシリーズ「Terra Nova~未来創世記」(11年)にゲスト出演。米国で10月から放送されている「Supergirl」の1エピソードにも出演している。

 (インタビュー・文・撮影/りんたいこ)

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