コウノドリ:綿密な取材が生む高いリアリティー 信頼関係築き新生児も出演

コウノドリの最終回のワンシーン=TBS提供
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コウノドリの最終回のワンシーン=TBS提供

 俳優の綾野剛さんが主演する連続ドラマ「コウノドリ」(TBS系、金曜午後10時)が18日に最終回を迎える。産婦人科医療を描いた鈴ノ木ユウさんの同名マンガを実写化した医療ドラマで、未受診妊婦や死産、未成年の妊娠などの難しいテーマも取り上げ、産婦人科医などの医療関係者からもリアリティーが高いと評価されている。その裏には綿密な取材や作品にかける作り手の熱い思いがあった。もともとは報道担当で今作が初プロデュースという同局の峠田浩(たわだ・ゆたか)プロデューサーに話を聞いた。

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 ◇キャストもスタッフも何度も取材に

 コウノドリは、医療現場から愛されているマンガなので裏切りたくないと思い、リアリティーをどれだけしっかり追求できるかということが課題でした。ちょっとでも違うなと思われたら、医療現場の人から総スカンです。協力してくださった医師のみなさんは、徹夜で手術した後、そのまま撮影現場に来て監修してくださったので、その方々が少しでも納得いくものにしていきたいと作るたびに思っていました。

 原作にすでにリアリティーがある作品ですが、さらに良さを生かそうと、キャストもスタッフも実際に病院に何度も取材にいきました。僕はもともと報道担当で、脚本家の山本(むつみ)さんも社会問題に興味がある方なので、社会的な問題は組み込みつつ、ドラマはドラマとしてのリアリティーを持たせることができました。

 山本さんは綿密に取材を重ねて台本を完成させてくださって、もちろん自分たちの妄想の部分もありますが、せりふに実際の医師の方々の生きた言葉が入っています。台本がしっかりした上で、さらに撮影現場で「ここで先生ならどう言いますか?」と、役者の方々が監修の医師に都度、質問しており、リアリティーが増したのではないかと思います。

 ◇難しいテーマからも逃げない

 例えば今橋先生(大森南朋さん)は、神奈川県立こども医療センターの豊島勝昭先生という実際のお医者さんの生き写しのようで、大森さんも役作りをすごく意識して演じておられました。今回の撮影はそんな医師の方々の協力がなければ成り立っていなかったと思います。

 取り扱ったテーマも、ドラマではやりにくんじゃないかと思うことから逃げないようにしようと思っていました。だからこそ実際に低体重児の赤ちゃんや、(染色体の過剰を原因とし発育に異常をきたす)「18トリソミー」の赤ちゃんも出演していただいたりして、それがまたリアリティーとして跳ね返ってきたのではないかなと思っています。

 4日放送の8話は、(生まれつき唇や口の中に裂け目がある)「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」がテーマでしたが、視聴者もこのようなテーマにしっかり向き合いたいという気持ちがあったと思います。構想では当初から口唇口蓋裂について取り扱うつもりでしたが、それまでに口唇口蓋裂のお子様を持つ方々から手紙をいただいておりました。

 どう表現していいか悩んでいた時に、「自分の子どもの写真を出してほしい。これだけきれいに治るということをみなさんに知っていただいて、これからのお母さんの悩みが減ったらうれしい」と書かれていて。

 手紙や写真のくだりは原作にはないですが、実際にそのお母さんにお電話をして、いただいた写真や手紙をドラマで使うことになりました。まさにそれは8話の軸で、大事なものになってありがたかったです。普通は治ったあとの写真しか送られてこないものですが、そのように治る前の写真も送ってもらえて、より、説得力が出ました。

 ◇信頼関係築き新生児出演

 出産のシーンは赤ちゃんとお母さんに来ていただいて、助産師さんや産科の先生が立ち会いのもと撮影を行い、本番の一回で撮影しています。NICU(新生児集中治療室)にいる赤ちゃんは、僕たちが病院に行って撮影しています。赤ちゃんはロボットやCGじゃないかと言われたりもしていますが……(笑い)。

 出演していただく赤ちゃんは、病院にただパッと行って出演のお願いをしていたわけではなく、何回も通って、ご家族の方と信頼関係を築いていきました。ありがたいことに「コウノドリになら出てもいい」と言っていただけるお母さんもいらっしゃって、病院の方々にも取り持っていただき(出演や撮影をすることが)危なくないか判断いただいた上で撮影を行っていました。

 ◇綾野剛の「想像を絶する」役への没入

 綾野さんは努力家で、これまでもTBSのドラマでは「ウロボロス」「空飛ぶ広報室」や「S-最後の警官-」など出演されていましたが、とにかく振り幅がすごい印象があります。今回も、産科医でありながらピアニストという役は綾野さんしか考えられなかった。綾野さんにはクールなイメージがありますが、優しい目をする時があり、その目から“サクラをやっていただけるな”と思いました。

 演技についてもすごく勉強していた印象です。もう途中から本物の産科医なんじゃないか?と思ってましたし、ピアノも腱鞘炎になるくらい弾き続けて、ストイックでした。自分たちが思っている以上に病院の先生に連絡をとって、突然病院へ見学に行ったりと、綾野さんの役への入り込み方は想像を絶します。クランクインして最初に撮ったシーンが「赤ちゃんに罪はないだろ?」というせりふだったんですが、その柔らかさや優しさが今までにない医者の姿で、出だしからガッツポーズしました。

 ◇最終回は「医師の方々の熱や思いがキャストに乗り移った」

 最終回は、(心停止に陥った妊婦に対して母体の蘇生処置として実施する)「死戦期帝王切開」がテーマなんですが、撮影ではサクラのモデルである荻田和秀先生(りんくう総合医療センター)や、実際にその帝王切開を行ったチームと、日本赤十字社医療センターのチームが監修に来てくださって、東西の医療チームで作っている現場が熱気であふれていました。医師の方々の熱や思いがそこにいるキャストに乗り移っていくような感じで、手術のシーンは迫力あるシーンになっています。

 協力してくださった医師の方々に最終回の完成のVTRを送ったら、「すごくいいと思う」と言っていただけて、日本でも数例しか起こっていない手術なので、監修に携わってくれた方々が納得してくれてうれしかったです。

 サクラの信念って、「お母さんと赤ちゃんの両方を助けること」なんですけど、最終回はその答えとなるような内容です。第2話でも、赤ちゃんは助かって母親を助けることができなかったというストーリーがありましたが、そのアンサーという形になっていて、希望が見えるような感じです。18トリソミーの赤ちゃんと家族の関係の話も同じくらい大きなテーマなので注目してほしいと思います。

 *最終話は18日午後10時から15分拡大版で放送。

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