シリーズ累計発行部数30万部を超えた実話マンガを映画化した「猫なんかよんでもこない。」(山本透監督)が30日から公開される。やんちゃな2匹の捨て猫と、崖っぷちに立たされた元ボクサーの男の暮らしを温かく描き出した。可愛いだけでなく、怒った猫の表情も見ものだ。主演は風間俊介さん。
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ミツオ(風間さん)はマンガ家の兄(つるの剛士さん)の家に居候をしながら、30歳を目前に世界のリングまであと1勝となったボクシングに人生を懸けていた。ある日、兄が子猫を拾って帰ってきた。チンとクロと名付けた兄は、仕事で忙しいことを理由に、世話をミツオに押し付ける。犬派のミツオは、猫の勝手な行動に振り回されっぱなしになりながらも、アパートの大家さん(市川実和子さん)の手助けもあって、少しずつ猫の世話に慣れてくる。しかし、突然目のけがでボクシング人生が絶たれてしまい……というストーリー。
犬や猫などのペットは人間の心を癒やしてくれる。その効果は広く知られているが、猫に限っては、人の心を癒やそうなどとはこれっぽっちも思ってやしないだろう。チンとクロもまさにそうで、「相手をしてやってもいいけどー」という態度でアパートの中と外を自由に行ったり来たりしている。寝ているミツオを踏みつけ、シャーッと鳴いて怒り、テレビの上に鎮座する。ただ可愛いだけでなく、猫の本能そのままをスクリーンで見ることができるのはとても楽しい。チンとクロが成長していく設定のため、じっとしていない子猫時代とまったりした成猫時代まで、猫のさまざまな仕草を見ることができる。猫同士のけんかのシーンはドキュメンタリー風だ。「先生と迷い猫」(2015年)などの名動物トレーナー・佐々木道弘さんの技に感心することしきり。
物語は、ミツオが途中で2匹の猫たちと取り残されてしまい、どん底になってからの方が味わい深い。夢を絶たれたミツオは、雄猫のクロに近所のボス猫になる夢を託すのだが、ここからはクロにとっての波瀾(はらん)万丈だ。猫嫌いだったところから始まり、いやいや世話をし、そしてクロに共鳴し、やがて大切なことに気づくまでのミツオの成長を風間さんが好演している。ミツオにそっと寄り添う同僚を松岡茉優さんが演じている。30日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。某場所の地域猫ちゃんはえさもあげたことがないのに、名前を呼べばすっ飛んで来ます!
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