真田昌幸:「真田丸」主人公の父に存在感 5分で分かる人物解説

NHK大河ドラマ「真田丸」で草刈正雄さんが演じる真田昌幸(中央)=NHK提供
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NHK大河ドラマ「真田丸」で草刈正雄さんが演じる真田昌幸(中央)=NHK提供

 放送中のNHK大河ドラマ「真田丸」で、俳優の草刈正雄さんが演じる真田昌幸の迫力ある演技が注目を集めている。堺雅人さんが演じる主人公・信繁の父で“食わせ者”として描かれている。実在の昌幸がどんな人物だったのかをひもといていく。

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 ◇ドラマでは老獪な武将

 草刈さんが演じる昌幸の印象といえば、とにかくつかみどころがなく、考えが読めないという印象を受けるだろう。第1話では、武田の本拠地・新府が「難攻不落」と宣言したあとで、息子たちに対してはあっさり否定してしまう。第2話では、北条氏と裏で手紙のやり取りをしていたことを明かし、大泉洋さん演じる息子の信幸が批判めいた表情をすると「なんじゃい! 文句あるか」と一喝したあとで「誤解するなよ、武田を裏切っていたわけではない」とうそぶく。周囲が武田家を滅ぼした織田軍に敵対心を持ち、「迎え撃つか」「籠城か」の二択で迷う中、昌幸は「(今の)織田には万が一つも勝てない」「戦わん」と言い切り、やはり信繁たちを驚かせる。息子たちにさえ本心を見せず、老獪(ろうかい)な武将そのものだ。

 ◇10倍の敵を退ける

 ドラマの主人公・信繁の人生も、物語として際立つが、波瀾(はらん)万丈という意味では、父の昌幸も負けていない。名将ぞろいの武田信玄の陣営でも一目を置かれた真田幸隆の三男として生まれた。軍学書「甲陽(こうよう)軍鑑」などによると、信玄の側近として仕え、甲斐(山梨県)の名家・武藤氏の跡継ぎにもなり、信玄の側を離れなかったことが記録に残っている。これらを当てはめると、信玄の兵法や謀略を間近で学んだことは明らかだ。

 そして昌幸は武藤家の当主となったが、武田家滅亡のきっかけとなる「長篠の戦い」で2人の優れた兄・信綱と昌輝が戦死したため、真田に復姓して当主となる。そして「真田丸」の第1話でも放送された通り、斜陽の武田家を支えるが、武田家はあえなく滅亡。その後は織田、上杉、北条、徳川と主(あるじ)をコロコロと変える。武田家の滅亡を追うかのように、かつての武田家の有力家臣の家が滅んだり縮小したりする中で、真田家だけは勢力を拡大して独立大名として君臨。最後は豊臣秀吉の傘下として、秀吉から一目置かれる存在になる。

 秀吉の死後に起きた「関ケ原の戦い」では、石田三成の西軍に属し、徳川家康の息子・徳川秀忠の率いる約3万8000人の大軍を、わずか約2500人で上田城(長野県上田市)で迎え撃ち、7日間もくぎ付けにした。西軍が勝っていれば勝利の立役者の一人になっていたのだが、肝心の西軍本隊が敗れて、昌幸は九度山(和歌山県)に流罪。結局、その地で没した。天下人になった徳川家に逆らい続け、「徳川キラー」として鳴らした人生だった。

 ◇豊かなエピソード

 真田家の物語は、江戸時代に「講談」として庶民に語り継がれたこともあり、さまざまなエピソードがある。大坂の陣の3年前となる1611年に昌幸が死ぬ時、豊臣と徳川の争い(大坂の陣)を予想して「3年命の伸びぬのが残念」と嘆き、信繁に家康を迎え撃つ策を授けたという。また信繁が大坂城に入城した報告が家康にもたらされたとき、昌幸が亡くなっていたにもかかわらず、家康が「籠城(ろうじょう)した真田は親か子か?」と聞いて、昌幸の死を疑い恐れたという。もちろん「講談」は、聞き手に興味を持たせるため脚色されたと考えるのが自然。だが言い換えれば「昌幸ならそうあってほしい」という願いの裏返しでもある。

 「真田丸」で徳川家康は、主人公・信繁の「最強最大の宿敵」という位置付けで“ボスキャラ”というべき存在。“ボスキャラ”なのは理由があり、家康は山野でお互いが戦う「野戦」では、ずば抜けた強さを誇る。信長亡き後の天下人を決める小牧・長久手の戦いでは、豊臣秀吉を相手に局地戦では完勝している。また徳川の兵士たちは「三河武士」といわれ、勇猛果敢であることも知られている。昌幸は、その精強な徳川軍を二度にわたって、しかも劣る兵力で勝利した。この実績が「大坂の陣に昌幸が生きていれば、もしかしたら大坂方は勝てたかも……」という仮想の話に花を咲かせるのだろう。

 ◇ゲームでもトップクラスの実力

 昌幸がいかに優れた武将かを、分かりやすく示したデータがある。「真田丸」のCG地図製作にも協力したコーエーテクモゲームスの人気ゲーム「信長の野望」シリーズだ。同シリーズは、30年以上にわたり、戦国時代を舞台にしたゲームを出しているが、その新作「信長の野望・創造」でも、武将の能力が1~100で数値化されている。

 昌幸の能力は「統率94」「知略98」と非常に高くなっており、特に知略で昌幸の上にいるのは、毛利元就、斎藤道三、豊臣秀吉の軍師だった竹中半兵衛の3人のみ。全武将の能力数値を合算した総合ランキング(400ポイントが満点)でもトップ10内の360ポイントだ。この数値は、独眼竜の異名で知られる伊達政宗(364ポイント)、関東に覇を唱えた北条氏康(361ポイント)に匹敵する。さらに松平元康(徳川家康、369ポイント)と比べても引けをとらない。家康は天下人で、氏康と政宗は複数の国を支配した大大名。信濃の一地方の大名だった昌幸がいかに高い評価なのか一目瞭然だ。

 ちなみに息子(真田信繁)は、「武勇99」。武勇ランキングでは2位で、上杉謙信(武勇100)の次に強い。真田親子が、ゲーム中でそろって高く評価されているのも、真田家の人気の証しといえそうだ。大河ドラマ「真田丸」でも真田親子の活躍が期待される。「真田丸」はNHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。

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