マンガ質問状:「BLUE GIANT」 「音が出ろ!」と念じながら描く

「BLUE GIANT」7巻のカバー
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「BLUE GIANT」7巻のカバー

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は「岳 -みんなの山-」でも知られる石塚真一さんの「BLUE GIANT」です。「ビッグコミック」(小学館)編集部の担当者に作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 --この作品の魅力は?

 主人公の宮本大(みやもと・だい)は中学時代、ジャズのライブを見た時からジャズにハマり、テナーサックスを手に入れ、ひたすら独学で吹き続けます。猛暑の日も雪の日も、吹いて吹いて。目標は世界一のジャズプレーヤー。巨大な目標を掲げることは、どんな意味を持つのか? 必要なのは才能なのか、努力なのか、覚悟なのか? さまざまな人達の助力を得て、仲間を得て、必死に真摯(しんし)に音楽に取り組んでいく物語です。

 --作品が生まれたきっかけは?

 作者の石塚さんがアメリカの大学在学中にハマったものが、クライミングとジャズでした。勉強はしなかったんですね。クライミングの世界は「岳」で描き、続いてジャズを題材に選んだのですが、ジャズはマイナーだという反対の声もありました。ただ、「岳」が始まった時も山ブームが来る気配もなかったので、今回も同じだと。「ジャズはカッコいいから、イケるべ」と、主人公と同じような心持ちで連載が始まりました。

 --音楽をマンガで表現する際に苦労したこと は?

 もちろん紙から音は出ないのですが、石塚さんは何とか出そうとしています。これは「音が出ろ!」と念じながら描く以外ないようです。スピード感のある演奏、迫力ある演奏、仲間が失敗している演奏など、描き分けも大変です。 たまに読者の方から「音が聴こえる」と褒めてもらえることがありますが、意図通りというより、これはもう読者の方の感性がすごいと思います。ホントに聴こえるんだと驚いています。 ちなみに担当の私は情けないことに音が聴こえたことがありません。

 --編集の際、苦労した点、面白かったエピソードを教えてください。

 苦労はたくさんしていますが、割愛させていただくとして……。面白かったのは、「原稿がどうも遅い」といったところ、石塚さんが「演奏シーンのサックス、ピアノの指使いが全部実際の音に沿っていて、それを一コマずつ調べて写真撮って描いているから」と。私は音楽の細かい知識がないため、それまでそれにまったく気づいていませんでした。このマンガすごい、と思ってしまいました。

 --今後の展開は?

 現在、主人公の大は、東京でトリオを結成して活動しています。ですが、主人公の目標は世界一のジャズプレーヤーです。世界一ということは、いずれ海外に出て行くことになると思います。どこに行き、どう演奏するのか? が、見どころの一つだと思います。

 --読者へ一言お願いします。

 お陰さまで、幅広い世代の読者の方が応援してくれていますが、「音が聴こえる」よりも多く、「グッとくる」「泣ける」という意見をいただいています。大と周囲の人間たちのドラマは読みごたえのあるものです。ジャズに興味がある方もない方も、ぜひ読んでいただきたい物語です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

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