特撮:大槻ケンヂ&NARASAKIに聞く「50代でロックやってもカッコいい」

ロックバンド「特撮」のボーカルの大槻ケンヂさん(左)とギターのNARASAKIさん
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ロックバンド「特撮」のボーカルの大槻ケンヂさん(左)とギターのNARASAKIさん

 4人組ロックバンド「特撮」が、約3年ぶりのアルバム「ウインカー」を3日にリリースした。タイトルが表すように「車」をコンセプトとした内容で、ボーカルの大槻ケンヂさんとギターのNARASAKIさんが作詞・作曲を手がけたテレビアニメ「監獄学園(プリズンスクール)」オープニング曲「愛のプリズン」の特撮バージョンのほか、声優の後藤沙緒里さん、声優で3人組アイドルユニット「イヤホンズ」の高野麻里佳さん、元オフコースの松尾一彦さんといったゲストが参加した新曲も収録されている。筋肉少女帯としても活躍する大槻さんと、人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」への楽曲提供でも知られるNARASAKIさんに、新アルバムの話や車にまつわるエピソードなどについて聞いた。

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 ――NARASAKIさんとピアノの三柴理さんは、ももいろクローバーZの楽曲に携わっていたり、ドラムのARIMATSUさんはVAMPSのツアーに参加していたりと、メンバーが個々でも活躍されている特撮ですが、NARASAKIさんはももいろクローバーZのライブなどにも足を運んでいるそうですね。

 NARASAKIさん:日産スタジアム(横浜市港北区)で見せてもらったんですけれど、自分の曲(「黒い週末」)がアンコールの最後の曲で、その時に布袋(寅泰)さんが自分の曲でギターを弾いてくれたり、それで5万人が喜んでくれていたり。完全に自分から離れていったなっていう感じはしましたね。ちょっと浮ついた気持ちになるというか。

 ――特撮としては3年ぶりのアルバム「ウインカー」は車がテーマになっていますが、ちなみに、お二人は車の運転はしますか。

 大槻さん:僕はずっと乗っていなかったんですけど、10年ぶりに乗り始めたんです。車を買いたてなので、運転が楽しくて。ちょこちょこ走って、でも東京都内の駐車場事情を知らず、五反田で3時間止めたら、5100円っていうね……。

 NARASAKIさん:えーっ、高い。僕はドライブ目的では運転しないですけど、移動は車ですね。でも昨年、車を替えたばかりだから、(テーマとしては)タイムリーかなとは思います。

 ――そもそも「車」に着目した理由は?

 大槻さん:最初にナッキー(NARASAKIさん)が作ってきた曲が、「荒井田メルの上昇」「富津へ」「ハザード」で、それがわりとハードロックというよりは、車のFM(ラジオ)から流れてきたらドライビングミュージックとしてすてきだなと思って。ナッキーの曲はメロウなんですよね。あと、これは特撮の特徴というか、ナッキーは僕の歌のディレクションの時に、わりと叫ばせないっていうのかな。もう叫び続けて何十年だから、それがすごく新鮮というか。

 NARASAKIさん:今の大槻さんに歌ってもらって、カッコよさをすごく生かせるんじゃないかなと思ったのが「富津へ」「荒井田メルの上昇」みたいな感じの曲だったんですよね。ワーキャー騒がしい感じではなくて「しっとりとした」みたいな。僕は大槻さんの張っている声も好きで、そこが一番、魅力的かなとは思うんですけど、特撮ではいろんな一面を見せたいなって。

 ――歌詞は、車をモチーフにしながらストーリー性もありますね。これはどのような発想から生まれたんですか。

 大槻さん:最終的に「よく分からない」っていうところに着地したいという気持ちがあって。それは、僕が子供の頃に読んでいたSF短編小説やマンガにあったんですけど、いろんな出来事や不条理なことがあって、最終的に何だったのかよく分からないっていう感じが好きで、今回は荒井田メルという女の子が主軸と思われるんだけど、結局、荒井田メルがどうなったのか分からないっていうのをやりたかったんです。分からないって怖いでしょ?

 ――「荒井田メルの上昇」では荒井田メル役として女性らしき声が入っていますね。

 NARASAKIさん:それは擬似で作ったもので、大槻さんの声をいじって荒井田メル役になっているという。でもちょっと不思議な存在というか、存在自体がSFなので、声が変なことになってるんですけど。あと「アリス」という曲の大サビでは、元は一つの大槻さんの声をコンピューターで処理して、三声にしてハモ(ハーモニー)を作るという。イメージ的にはPerfumeやボカロのようなロボ声ですね。

 ――声優の後藤沙緒里さんに加え、元オフコースの松尾一彦さんがハーモニカで参加している「富津へ」は、なぜこのタイトルだったんでしょうか。

 大槻さん:車を購入して、(千葉県)富津(市)までドライブに行ったんです。4年くらい前、兄がウインドサーフィンの事故で、富津で死んだんですよ。兄貴とは全然、疎遠だったんで、1回ぐらい行っておかないとなと思って、行ってみたら、詞ができたっていう。「兄ちゃん、ありがとう」っていう感じです。

 NARASAKIさん:「富津へ」の歌詞を見た時に「なんで(富津の海に)何もないことを言いたい歌詞なんだろう。俺がこんなに頑張って曲を書いたのに(笑い)」とかってちょっと思ったんですけど、その後、そういう理由を聞いて「これは絶対にいい曲にしなきゃ」と思ったら急に愛着が湧いて、ゲストを呼んだり。小学生の時とかにオフコースを聴いてたので、その時のハーモニカのイメージというか、“素朴で悲しい感じ”っていうので湧いたイメージが松尾さんのハーモニカだったんです。後藤さんは、僕が彼女の声を気に入って、特撮(のレコーディング)があれば来てもらったという。

 ――なるほど。大槻さんは2月6日で50歳を迎え、今作が40代最後のアルバムになるわけですが、今の心境はいかがですか。

 大槻さん:あんまり集大成っていう意識なく作ったから、常に動き続けてる感じが出て、集大成アルバムになってないところがよかったと思って。そこがポイントじゃないですかね。ロックって若者がやってカッコいいものだったんだけど、今は50代のミュージシャンも増えていて、50、60代がやってもカッコいいっていうふうに人々の意識が変わってきたでしょ。だからちょっと得したよね。落語家とか浪曲師みたいに「むしろ年をとってからがカッコいいよね」っていえる仕事に入り込めてうれしいです。

 <プロフィル>

 1999年に結成し、2000年にシングル「アベルカイン」でデビュー。現在のメンバーは、ボーカルの大槻ケンヂさん、ギター&サウンドプロデュースのNARASAKIさん、ピアノの三柴理さん、ドラムのARIMATSUさんの4人。NARASAKIさんが初めてハマったポップカルチャーは、小学生の頃に好きだったテレビゲーム。「ファミコンより前の家庭用ゲームですね。ブロック崩しとかテニス的なものだったと思います。昔はゲームが好きでしたね。ゲームセンターにも行ってました」と話した。

(インタビュー・文・撮影:水白京)

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