ルーム ROOM:母ブリー・ラーソンと息子ジェイコブ・トレンブレイに聞く 脱出シーンは「ボンドばり」アクション

映画「ルーム ROOM」で母と息子を演じたブリー・ラーソンさん(右)とジェイコブ・トレンブレイ君
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映画「ルーム ROOM」で母と息子を演じたブリー・ラーソンさん(右)とジェイコブ・トレンブレイ君

 米女優ブリー・ラーソンさんが、今年の第88回米アカデミー賞で主演女優賞に輝いた映画「ルーム ROOM」(レニー・アブラハムソン監督)が8日に公開された。授賞式の翌日には、新作「キングコング」の撮影でベトナムに渡り、その足で今回の初来日を果たしたラーソンさん。やはり初来日で、今作で息子を演じたカナダ出身のジェイコブ・トレンブレイ君が来日時にインタビューに応じた。2人が撮影の裏話や今後の抱負などを語った。

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 ◇8カ月に及ぶ役作り

 映画「ルーム ROOM」は、オーストリアで実際にあった事件から着想を得て執筆したという、アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューさんの小説を基に作られている。ドナヒューさんは、今作の脚本も執筆した。ラーソンさん演じる“ママ”は、トレンブレイ君が演じる息子ジャックが、5歳の誕生日を迎えたとき、長く閉じ込められていた“部屋”からの脱出を決意する。

 ジョイという名を持つ、このヒロインを演じるために、準備に8カ月をかけたというラーソンさん。まず、行ったのは「ジョイの学生時代はどのようなもので、両親との関係はどうだったのか。若い頃にやりたかったことは何だったのかと、抑圧される前の彼女がどのような人間だったのかを探っていく」ことだった。それをつかんで初めて、心的外傷を受けることで人はどのように変化していくのかを、専門家から話を聞くなどして探り、「足し算、引き算をしながら、映画の中で最初に出会うジョイのキャラクターを作り上げていった」という。

 ほかにも、栄養学の専門家の指導の下、かなり厳しい食事制限を行い、体脂肪率を12%にまで落とした。さらに、部屋に長年監禁されているという設定のため、「日光を浴びないようにする」など、あらゆる面で準備をしたという。それでも、「撮影する段階ではまだ、彼女がはっきりとは見えていなかった」と打ち明ける。

 ◇ジェームズ・ボンド並み?のアクションを披露

 よりどころとなったのは、「ジョイの人格を形成する、二つの核」だった。「一つは、性的虐待を受けたこと。もう一つは、親であるということです」と語る。ラーソンさんはそのどちらも経験していないため、「親である方とか、虐待の被害に遭った方が映像をご覧になったとき、私たちが誠意を尽くして描写していると感じられるだけの演技をしなければ」という思いを胸に、役に向き合ったという。

 ラーソンさんの演技もさることながら、ジャック役のトレンブレイ君の存在感も、忘れてはならない。トレンブレイ君は、難しかったところを、「脱出するところ」と挙げ、「どういうふうに反応したらいいかとか、アクションをどういうふうにしなければいけないかが、ものすごく大変だった」と振り返り、「ジェームズ・ボンド(を演じること)が、どんな感じなのかが分かりました」とちゃめっ気たっぷりに語る。

 ◇チョコアイスで“男気”証明?

 このインタビューの直前に開かれた記者会見でもそうだったが、2人は本当に仲がいい。インタビュー開始直後、ラーソンさんがトレンブレイ君に“おしゃべり”をやめるよう目で促したり、トレンブレイ君の言葉足らずの答えをラーソンさんが補足したり、さらに、「どっちがしゃべる?」とラーソンさんが聞くと、トレンブレイ君が「僕がしゃべる!」と胸を張ったり、その様子はまるで本当の母と息子のようだ。

 そこまで、気心知れた関係になれたのは、ラーソンさんいわく、「ジェイコブには、その役にならなければいけないというプレッシャーをかけたくなかったので、自然に演じられるよう、撮影に入る前の3週間は、できるだけ一緒に時間を過ごしました。一緒に遊んで、食事をして、お互いのことを知り、撮影が始まってからも一緒に遊び、(映画の中の)日課のストレッチも毎日行った」ことのたまものだ。

 そんな2人に撮影中、“楽しかった思い出”を聞くと、挙げたのは、チョコアイスを食べるシーン。ラーソンさんいわく、「何テイクもかかるから、アイスを食べるペースは自分で決めていいのよと言ったのに、彼はガンガン食べていた(笑い)」といい、それを横で聞いていたトレンブレイ君は「僕がどれくらい食べられるか知らないだろ。5ボールも食べられるんだよ」と胸を張り、“男気”のあるところを見せた。

 ◇今後の抱負と一番の夢

 さて、今回の演技でラーソンさんは“オスカー女優”となったわけだが、ラーソンさん自身は「映画作りに対する気持ちはまったく変わっていません」と言い切る。「アカデミー賞のような経験によって、皆さんの私に対するイメージは変わるかもしれませんが、私自身は変わらないし、役者として、映画を作る理由……愛についてなど、映画を通して伝えていくことは、これからも変わりません」とぶれない姿勢を見せる。

 「ただ……」と言葉をつなぎ、「変わるのは、作りたいものの作品のコントロールが許されるようになることです。(オファーされる中から)今まで以上に聡明な選択をすることで、今回のような作品を、より、皆さんと分かち合えるようになれるのではないかと思っています」と誠実な人柄をうかがわせる。

 一方、映画では、大人顔負けの演技を見せ、授賞式では、“ママ”がオスカー像を受け取る姿を、うれしそうに見ていたトレンブレイ君。将来の夢は、やっぱり、ママのようなオスカー俳優になること? その問いに「オスカーは欲しいけれど、一番の夢じゃない」と答えたトレンブレイ君。一番の夢は、「マーベル作品に出ることと、あと、『スター・ウォーズ』の映画に出ること」と明かし、9歳の少年らしい素顔をのぞかせていた。映画は8日から全国公開。

 <ブリー・ラーソンさんのプロフィル>

 1989年、米カリフォルニア州生まれ。6歳から演技を始め、テレビシリーズ「ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ」(2009~11年)で広く知られるようになる。映画「ショート・ターム」(13年)などを経て、今回の「ルーム ROOM」で、アカデミー賞主演女優賞はじめ、ゴールデン・グローブ賞などを受賞。最新作は「FreeFire」(16年)、「Kong:Skull Island」(17年)など。

 <ジェイコブ・トレンブレイ君のプロフィル>

 2006年、カナダ、ブリテッシュ・コロンビア生まれ。10年から国内外のCMでキャリアをスタート。5歳から映画やテレビのオーディションに参加。映画出演作に「スマーフ2 アイドル救出大作戦!」(13年)など。最新作は「Before I Wake」「Burn Your Maps」「Shut In」「The Book of Henry」(すべて16年)など。

 (インタビュー・文・撮影/りんたいこ)

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