最近テレビやCMでちょくちょく見かけるけれど、実はあんまりよく知らない……。そんな、今さら聞けない“ネクストブレーク芸人”の基礎知識を、本人の言葉を交えて紹介。今回は、数少ない男女のお笑いコンビ「相席スタート」をピックアップする。結成した2013年に「THE MANZAI」認定漫才師50組に選ばれ、15年の「M-1グランプリ」では準決勝に進出した実力の持ち主。特に女性の山崎ケイさんは“ポスト大久保佳代子”と言われ、「ちょうどいいブスって言われます」と自慢げに自己紹介することで知名度を上げている。2人にブレークの心境、結成の由来、最近の悩みについて聞いた。
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よしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属している山崎ケイさん(やまざき・けい。1982年6月13日生まれ、千葉県出身)と山添寛さん(やまぞえ・かん、1985年6月11日生まれ、京都府出身)のコンビで、山崎さんは2007年4月に、NSC東京校に13期生として、山添さんは14期生の1年後輩として入学し、それぞれ別コンビの結成と解散を経て、13年2月から活動している。同年に「THE MANZAI」(フジテレビ系)認定漫才師50組に選ばれた実力派で、朝の情報番組「PON!」(日本テレビ系)の火曜日レギュラーをはじめ、バラエティ-番組などでも活躍中。また、渋谷・よしもと∞ホールにも出演、5月ゴールデンウイークには初めてよしもとの劇場を飛び出し、東京・下北沢タウンホールで単独ライブ3公演を開催するなど、精力的に活動している。
結成前に行ったお試しのお笑いライブでコンビを組むことになったが、お互いが男女コンビを全く考えていなかったことも含め、お試し感覚で「相席」くらいの軽い気持ちで始めたため、どうなっていくか、という期待も込めてコンビ名を命名した。少数派の男女コンビについては「今は意外といるんですが、当時は逆にいなかったからいいと思った」(山崎さん)、「いない分、お手本にする方もいない。一から作っていける」(山添さん)と抵抗はあまりなかったという。
結成は、それぞれの元コンビ解散後の12年に、共通の知り合いである作家にコンビを組むことを勧められたのがきっかけ。当初は当人同士も乗り気ではなく、周りの芸人たちからも「やめとけ」などと言われていたため、断るつもりだったと言うが、「しつこく勧めてきたんで、一度試しにライブをやらせてもらった」(山崎さん)という。同じタイミングで山添さんが、解散芸人の相方探しを追うテレビ番組の取材を受けており、お試しとして行ったライブは、ドキュメンタリーとして撮影された。
お試しライブの手応えあまりなく、2人とも「全然いいネタができなくて、あんまりしっくりこなかった」というが、山添さんは「前のコンビと似たような人と組んでも仕方ない。(山崎)ケイさんは若手芸人の中では面白い人で、僕の全く知らないタイプの漫才をしていたので、その可能性に懸けた」という。
一方、山崎さんは「一期離れた先輩と後輩だと、すごく距離感がある。後輩だから気を使って意見が言えないと思ったら、(山添さんは)すごく意見を言ってくれたんですよ。私と同じ量の意見を言ってくれるこの人とだったら、今までよりもいいネタを作ることができる」と可能性を見いだした。また、テレビの取材が入ったことで「一旦(最終決断をする)期限が決まった」といい、「自分がコンビを組むか組まないかを追ってもらえる機会はない。それがなかったら(コンビを)組まなかったかもしれない」と振り返った。
ネタは、漫才とコントが半分くらい。漫才では、山添さんが「お隣よろしいですか」と尋ね、山崎さんが「どうぞ」と答えて始まり、最後は山添さんが「お席外させていただきます」と返して締める。内容は、男女の恋愛模様をリアルに描写したネタが多い。ネタは、2人の日常会話から「ケイさんが女性に対して思うこと、男に対して思うことを話して、女性側の意見と、僕の男側の意見を合わせてこれならネタになりそう」(山添さん)という形で作るという。
山崎さんの意見について、山添さんは「むちゃくちゃ女性っぽい考え方と、それが行き過ぎておかしい女性の考え方、客観視した女性の考え方がある」と分析するが、「『行き過ぎてますよ!』って僕は(ツッコミとして)言うんですけれど、どうやってその考えに行き着いたのが聞くと、『たしかにそうやな』と思えてくるのが面白い」という。意見がぶつかったことはあまりないが、最終的に分かりにくい、観客に伝わりにくいと判断すると、トークライブの話のネタにするという。
一方、コンビ間の恋愛については「私たち、必ず聞かれるんですよね。そういうふうに見えることも面白い」と山崎さん。「男女間の恋人関係みたいな雰囲気を出しているのは僕らくらいかも」という山添さんも「どっちやと思います?」と笑顔で明言はせず、はっきりとは答えないスタイルを取っているという。
バラエティー番組などで他の芸人たちが山崎さんを説明するとき、「ちょうどいいブス」と表現し、さらに本人も「よく、『ちょうどいいブス』だって、言われます」といい女風の言い方で自己紹介することで話題を呼んだ。衝撃的な自己紹介は「芸人を始めて4、5年くらい前。(前のコンビを)解散する前くらいに、自分がそうやって言われていることを、自分で言い始めた」。初めて人から言われた時は「(嫌だなという思いより)面白いなと思った。芸人じゃなかったら分からないですが」と、心境を明かす。
芸人を始めた当初、「自分をブスだと思ってお笑いをやっていなかった。『自分でいじっていないけれど、ブスだからな!』と先輩に言われて(気づいた)」という山崎さん。ある日、先輩に「ちょうどいいブスだな」と言われて、「それは何か受け入れられた」のだという。その後「ネットで検索したら、Yahoo!知恵袋で質問している人がいて、『酔ったら行ける、ということだと思いますよ』という回答があった。『酔ったら行ける』って、悪口ではないかも、と思った」と納得し、自ら「ちょうどいいブス」を名乗るようになったという。
コンビを組んで半年ほどで「THE MANZAI」認定漫才師50組入りを果たしたことで、深夜のテレビ番組で少しずつネタを見せるようになり、山崎さんの「いい女風」のキャラクターが話題を集めるようになった。本格的に認知されたのは、15年5月放送のバラエティ-番組「アメト--ク!」(テレビ朝日系)の「いい女の雰囲気出している芸人」特集で、「オアシズ」の大久保さん、渡辺直美さんらとともに出演し、いい女ぶりをアピール。ゲストの綾野剛さんを「酔ったふり、してあげようか?」などと色っぽく誘惑して強烈なインパクトを残した。
「アメトーーク!」には、山添さんも「CoCo壱番屋芸人」特集で出演したことがあったが、山崎さんは「私の場合、芸風に直結した内容の回に出させていただいたので、すごくありがたかったですね。今ある仕事はあそこからですよ」と振り返る。
最近は街を歩いていて、顔がばれてしまうこともあるという。山崎さんは「声をかけてくださいという雰囲気ではない。(見つかると)口パクで『エロい人だ』『エロいこと言う人でしょ?』と言われたりしますね。いい女の表現として、セクシーな表現をするだけなんですけれど」と苦笑する。山添さんも「CoCo壱番屋芸人に出させていただいた直後はありました。コンビ格差はありますが」と明かす。
ブレークの一方で、生活について、山添さんは「ギリ生活できへんくらいの給料」と困り顔。山崎さんも「変わるどころか、忙しくてバイトする時間はないんですよ。だから生活レベルは落ちています。前はむちゃくちゃバイトしてたんで、安定していたんですけれど、ひたすら節約、節約、変わっているどころか水準下がっています」といい、「知ってくれている人は格段に増えているので頑張るしかないですね」と語った。
また、人気者となったことで、コンビの売りであるセクシーな内容のネタを自粛しなければいけない場面も増えたという。山添さんは「外での営業で、少なからずお仕事をいただいているので、どうしても、おじいちゃん、おばあちゃん、子供にも分かるネタをやらなければいけない。自分たちのエッセンスを入れつつ、ネタを作らないと」という。一方、山崎さんは「恋愛に対しての興味が少なくなってきた。大変な問題よ。結婚願望はあるし、絶対したいですけれど」と現在の悩みを明かす。
そんな2人が現在やりたいと思っている仕事は、ラジオ番組やインターネットの生放送。リアルで際どい内容の男女ネタであっても、「きつめの方が反応がいい」(山添さん)といい、山崎さんも「お客さんが気を使って笑えないという空気になるが、ラジオなら安心してお届けできる」と笑顔を見せた。さらに、動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」の連続ドラマ「火花」で女優デビューしたという山崎さんは「楽しかった。すごく(スタッフが)褒めてくださったのでテンション上がりましたね」と、今後の女優業にも興味を示していた。