ヒトラーが現代に現れて人気者になるという大胆な設定で大ヒットしたドイツの小説を映画化した「帰ってきたヒトラー」(デビッド・ベンド監督)が17日から公開される。タイムスリップしたヒトラーが、ものまね芸人と間違われて人気を博していくさまを描いたコメディー作。主演は、舞台出身のオリバー・マスッチさん。
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アドルフ・ヒトラー(マスッチさん)は目覚めると、1945年から2014年にタイムスリップしていた。一方のテレビディレクターのザバツキ(ファビアン・ブッシュさん)は、仕事を失って特ダネを探していた。ザバツキは映像に偶然映りこんでいたヒトラーを、モノマネ芸人と思い込んでスカウトする。2人でドイツ全土を旅して国民の不満を聞いて回り、やがてヒトラーはテレビ番組に出演して人気を博していく……という展開。
冒頭は、現代で目覚めたヒトラーが、軍服をクリーニング屋に出したり、テレビの内容に驚いたりするコミカルな展開。ヒトラー役の俳優が七三分けとチョビヒゲの例の姿で街に飛び出し、人々の反応をそのまま映し出す試みもあって斬新だ。さらにさまざまな政党にも乗り込むという、エッジの利いたこともやってのける。だが、映画が進むにつれ、笑いがだんだん凍りついていくのを感じる。新聞を読み込み、国内問題を人々から聞いて回ったヒトラーは、現代の大衆が求めるものを簡単につかんだようだ。そして、70年前にはなかったSNSを駆使し、人気は楽に素早く拡散。そのさまは、軽くポップで、あくまでも楽しげだ。しかし、認知症のおばあちゃんが「こいつはヒトラーだ」と気づき、怒りをあらわにするあたりから、見る側も我に返る。テレビ、ネット、本だけでなく、映画にも登場し、メディアを席巻していく姿が空恐ろしい。
戦後、テレビがあんなに薄くなるほどの年月がたったのだが、人間の本質は変わっていないと気づかされる。社会不安をあおられた末に起きる同調と共感は、いつしか一かたまりになっていく。ヒトラーは言う。「大衆を煽動したのではなく、大衆が選んだのだ」と。「私は人々の一部なのだ」と。ヒトラーのラストの一言と、テレビディレクターの行く末に見る人はゾっとするだろう。17日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。水木しげる先生の「劇画 ヒットラー」を読み返し中です。
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