アプモン:“売れっ子”脚本家・加藤陽一の仕事を聞く 決めぜりふ誕生秘話、放送作家時代の影響も

アニメ
「デジモンユニバース アプリモンスターズ」のシリーズ構成、脚本を手がける加藤陽一さん

 1990~2000年代に人気を集めた「デジタルモンスター(デジモン)」シリーズの新プロジェクト「デジモンユニバース アプリモンスターズ(アプモン)」のテレビアニメ版(テレビ東京系、毎週土曜午前7時放送)のシリーズ構成、脚本を手がける加藤陽一さん。「妖怪ウォッチ」「タイムボカン24」をはじめ数々のヒットアニメを抱え、「もんげー」(妖怪ウォッチ)などつい気になってしまう決めぜりふの生みの親でもある“売れっ子脚本家”が考えていることとは何なのか。作品への思いや決めぜりふを生み出す秘訣(ひけつ)を聞いた。

 ◇“脱デジモン”でも大きな愛情 ちょっと先の未来を見せる

 --「アプモン」に参加することになった経緯は?

 1年半くらい前にバンダイさんから、アプリをテーマとした玩具の企画のベースがあるという相談がありました。クロスメディアの展開にするための企画を一緒に作り始めました。最初は、アニメを作るのはどうしようかな?とも考えていたのですが、人工知能、ネットなどのキーワードが出てくる中で、やりたくなり、自分からお願いしました。

 --玩具の段階から企画に参加するのは珍しいのでは?

 (加藤さんの場合)幾つか参加したことがありますが、珍しいことかもしれません。僕はその方が好きで、土台からやらせていただいた方が楽しいですね。

 --これまでの「デジモン」に対して意識したことは?

 すごく覚えているのは、最初の企画書に「脱デジタルモンスター」と書いてあったこと。少し気が楽になりました。「デジモン」は、歴史のある素晴らしい作品。アニメをもう一度ちゃんと見て、驚きました。パワフルで勢いがある。あれだけのファンをつかんだパワーを秘めている。その系譜の中で新しい「デジモン」の魅力を考えました。そもそも「デジモン」は、子供に対してネットなどちょっと先の未来を見せていた。そこを大事にしようとしました。

 --“脱デジタルモンスター”ということで意識したことはありますか?

 “脱”とは、ルールを作るのではなく、面白いことをやるという意味だと思います。ただ、愛情がないわけではありません。「デジモン」への思いがにじみ出ている部分もあります。

 ◇スマホ世代への思い 現実に地続きなアニメに

 --人工知能がテーマになった経緯は?

 熱いな!と思ったからです。毎日のように人工知能に関する新しいニュースがある。そういう時代なので、今やれてよかったです。今の生活の少し先を意識している。作品の入り口として完全なファンタジーではなく、視聴者と同じ世界と地続きの方が、すぐに理解でき、作品に入っていくことができます。

 --スマホも重要なテーマになっています。

 今の子供はスマホに対する抵抗はゼロですよね。デジタルネイティブの子供たちは、僕らが外で遊んでいたように、スマホを使っている。例えば、このアニメでは、ネットで嫌なことを書かれたら、気にしないで、既読スルーすればいいのでは?などと描きました。ネット教育と言われることもありますが、そういうつもりはあまりないんです。気にしない方が、前向きだよ!とネットだけの問題じゃなくて、生き方の話をしているつもりです。その辺りは、子供たちの方がよく分かっているかもしれません。

 --YouTubeに夢中な子供が多いようですね。

 びっくりしています。コンテンツが無尽蔵で、テレビでできなくなったことができる。テレビほどのクオリティーではなくてもできる。出ている人と自分が近い。同じ目線で見ているお友達感があるから、身近に感じるのかもしれません。スナック感覚の映像が多いように感じています。

 ◇決めぜりふはちょっと変? 「穏やかじゃない」誕生秘話も

 --「アプモン」のガッチモンの「キサマの未来は検索済みだ!」のように、加藤さんの作品は決めぜりふが印象的です。

 作るぞ!と自分に課して、絞り出しています。ガッチモンの場合、ネットに関連しているアプリのモンスターなので、「検索」という言葉を決めた。さらに見えを切るイメージにしました。決めぜりふは作品のテーマを表すこともあります。

 --決めぜりふを作る際に意識していることは?

 ちょっと変か?を考えることもあります。例えば「アイカツ!」の霧矢あおいの「穏やかじゃない」は、おじさんが言うようなせりふだけど、アイドルが言うことで違和感が生まれ、引っかかる。まねをしたくなったり、ツイッターでつぶやきたくなる、日常で使えるかなどを気にします。作品から離れた時も使ってもらいたいんです。すんなり成立してしまうと、頭に残らないので、ちょっと変なことを意識しています。決めぜりふでいろいろなことが突破できることもあるんです。「妖怪ウォッチ」の「もんげー」もそうですね。

 ◇放送作家時代の影響も 子供向きになりすぎないように

 --加藤さんは現在放送中の「タイムボカン24」「妖怪ウォッチ」などの子供向けアニメも同時に手がけられています。切り替えが大変では?

 もともと10代後半から放送作家をしていて、掛け持ちが自然だったんです。5、6番組を掛け持っていても、自然にやってきた。切り替えようと思ったことも、苦と思ったことがないんです。目の前のやるべきことを全力でやっているだけなんですね。例えば、今日は「アプモン」を考える一日。移動時間が1時間あって、その時に「アプモン」のことを考えながら、ほかのことも考えることはありますが。

 --放送作家をしていたことは、アニメの脚本を手がける際に影響はありますか?

 すごくあります。テレビを見てくれる人が一生懸命見ているとは限らない。ご飯食べながら見ている人もいる。一つのせりふを聞き逃した時、話が分からなくなってはいけない。視聴者を信用していないわけではなくて、楽に見ても分かるようにしたいんです。情報の並べ方で分かりやすさは変わる。情報番組をやっていた影響かもしれませんね。

 --「アプモン」を含めて加藤さんが手がけるアニメは子供も大人も楽しめる作品ばかりです。

 大人も楽しめるようにしようとは常に思っています。子供と一緒に楽しめた方がいい。とっぴなことは起こるけど、キャラクターの気持ちの動きはリアルにしようとしています。そこを自然にしないと、何でもありだよね……となってしまう。子供に向けて作っているからといっても、子供向きになりすぎないようにしています。ただ、話の内容が難しい時も、子供も分かりやすくする。子供っぽいネタをやろうとは思っていません。

 --難しいことを分かりやすく説明することは容易ではないですよね。

 そうですね。放送作家時代からかなり訓練をしていました。「ズームイン!!朝!」でニュース原稿を書いていたのですが、聞いただけで老若男女、誰でも分かるように原稿を書いていた。情報加工の特殊技能はあるかもしれませんね。当時は(子供向けのニュース番組)「週刊こどもニュース 」を見たりして、勉強していました。

 --加藤さんはアニメファン向けの作品を含めてさまざまな作品を手がけられています。今後、チャレンジしてみたいことはありますか?

 プロジェクトの立ち上げからやらせしていただくことが増えたので、どんどんやっていければうれしいですね。

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