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坂口健太郎:話題作に続々出演も「普通でいたい」 朝ドラの反響「うれしい」と充実感

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映画「オケ老人!」で“鈍感”な教師を演じた坂口健太郎さん

 荒木源さんの小説を基に実写化した映画「オケ老人!」(細川徹監督)が全国公開中だ。映画は、老人ばかりのアマチュアオーケストラ(アマオケ)に、他の団体と勘違いして入団してしまった主人公による笑いと涙の奮闘と青春を描いている。女優の杏さんが高校教師・小山千鶴役で映画初主演し、笹野高史さん、左とん平さん、小松政夫さん、石倉三郎さん、藤田弓子さん、茅島成美さんらベテラン俳優がオケのお年寄りメンバーを演じている。千鶴の同僚・坂下くんを演じる俳優の坂口健太郎さんに話を聞いた。

 ◇坂下くんの“鈍感力”は自身とは似ていない!?

 家事が好きでお菓子作りが得意という坂下くんという役について、坂口さんは「なんとなくのイメージですけど、坂下くんはきっと(血液型は)A型だろうなと」と笑い、「ちょっとふわふわしたところもあるからB型もありそうな気もする。でも、僕は家事は得意じゃないし、お菓子も作れないし、料理もほとんどしません」と共通点は少ないという。

 坂下くんは千鶴から恋心を寄せられるが、同僚としていい距離感を保っている。「(坂下くんの千鶴に対する)距離感の取り方みたいなものは、少し分かるなというところもあり、意識しながらというのはありました」と理解を示し、「千鶴に対しての優しさは正直なものだと思うし、自ら(生徒の)和音ちゃん(黒島結菜さん)と千鶴の家に行ったりはするんですけれど、絶妙に近すぎないで、でも寄り添っているような人」と人物像を捉えて演じた。

 見ている側としては千鶴の坂下くんへの思いは分かりやすく感じるが、坂下くんは驚くほど“鈍感”だ。坂口さんは「僕は気付いているつもりなんですけど、自分自身が鈍感ってよく言われるんです(笑い)」と切り出し、「プロデューサーにも『坂下くんとキャラクター感が坂口くんって、すごく似てるよね』と言われて、そんなに鈍感というか、ふわふわしているかなと思いながら演じてました」と少し納得がいかない様子だ。

 千鶴のような女性を「好きです」と言い、「坂下くんがもしかしたら気があるかもっていうので、心の底では盛り上がっている感じがもれちゃうような真っすぐさみたいなのは、好きだし可愛いなと思います」と理由を説明する。そして、「千鶴って隠そうと思って隠せていないのに、それに気付かない坂下くんもなあ……とは思うんですけど」と笑う。

 ◇主演の杏やベテラン俳優との共演に刺激

 今作で初共演となった杏さんについて、「楽器を使うという技術的な役作りはすごく大変だったと思います」と気遣い、「(共演)シーンはすごく多いわけではなく、身近で見る時間は長くなかったのですが、真摯(しんし)に誠実に千鶴という役のことを受け止めて、理解してからお芝居にするという形が、すごくすてきだなと思いました」と感銘を受けたという。さらに、「バイオリンの練習もあって大変なはずなのに、そういうことを出さず、しっかりとした強い方だなというのは感じました」とたたえる。

 アマオケのメンバーにはベテラン俳優がずらりと顔をそろえる。共演シーンは「めちゃめちゃでした(笑い)」と坂口さんは楽しそうに振り返る。その理由を、「めちゃめちゃで悪いということではなくて、皆さんすごく“自由”。坂下くんが練習場に行く場面では、台本に沿ってはいるんですけれど、あちらこちらで(本筋とは関係はなく自然なシーンに見えるよう)盛り上がっているのに、うるさくなく、プラスなにぎやかさみたいなものがあって、それは見ていて面白かった」と語る。「でも、その状況を杏さんは座長としてずっとまとめていたから、きっとすごく大変だったんじゃないかなという感じはしました(笑い)」と思いやる。

 ベテラン俳優との共演はインパクトがあったと話す坂口さんは、左さんが大根を切って即席で楽器を作るシーンが特に印象深いという。「とん平さんが大根をバコンと切るのですが、普通に切るものかと思っていたら段取りで包丁を持ってガンとやって、すごいなと」と驚き、「キャラクターに合ってるし、監督が多分、“遊ぶ”のが好きだったんだろうなと思いますけど、監督も笑いながら見ていました」と感心する。

 ◇目標を一つに定めず“普通”でいたい

 映画やドラマ、舞台と活躍の幅を広げている坂口さんは「目標も夢もあまり決めていない」という。「そういうのを一つ決めちゃうと、そこに行く道になっちゃう気がするんです。一つ目標を作って一直線に向かっていくことも、もちろん素晴らしいと思いますが、僕は、もやっとさせておいて“寄り道”をしているほうが好き」と持論を語る。

 続けて、「“寄り道”をしている方が多分、来た道は広がっている気がするし、わりと自分はわがままなところもあったりするので、自分は自分でいいかなと思っちゃうというか。だから目標を決めません」と意図を説明するも、「夢を持たないというと悲しい男になっちゃうので(笑い)。かっちり決めすぎないのは自分の中で大事にしていることかな」とゆっくりとうなずく。

 目標を決めないというスタンスの裏には、「“普通”でいたい」という坂口さんの思いがある。「普通でいることって多分、すごく難しいことだなと思う」と痛感しているという。そうした中で、「プロデューサーの方に、『今はイケメンといわれるような人たちがたくさんいるけれど、坂口くんは、なんだかよく分からないけれどいい』みたいなことを言ってもらえたことがあって、その言葉はすごくうれしかった」と喜ぶ。

 出演作もさらに増えた16年を振り返り、「占いや手相とかって、自分にいいことしか信じないんです(笑い)。それと一緒かもしれなくて、自分がうれしいなと思うことしか聞いてないんです」とちゃめっ気たっぷりに言い、「周囲が僕を見る目の方が、もしかしたら変わったのかもしれないけれど、『よーいスタート!』がかかったら(役に)変わればいいと思っているので、現場でもナチュラルな感じでいることが自分には合っています」とニュートラルな姿勢は崩さない。

 中でもNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」では、“葉っぱのあんちゃん”こと星野武蔵役でも注目を集め、復帰時には高視聴率も記録。「それはうれしいです」と坂口さんは満面の笑みを浮かべ、「『とと姉ちゃん』の場合、いろんな年代の方から声をかけてもらうことがあるのですが、すごく愛されるキャラクターだったので、その役として声をかけてくれるから、それはすごく幸せだなと思いました」と充実感をにじませる。

 ◇坂下くんの天然ぶりに注目してほしい

 今作について坂口さんは「一番元気をくれるというか、パワーもらえるところはお年寄り、そう言うと怒られるかもしれないですけれど(笑い)、『オケ老人!』という中で、年配の方々から力をもらう映画」と表現する。「音楽ものというと若い人向けみたいなイメージが強いかもしれませんが、(対立する楽団のコンサートマスター・大沢義郎役の)光石研さんが曲を聴いて涙するように、積み重ねてきた時間って音楽に反映されると思う。そういうところはすごく魅力だし、ベテランの方々がやっているのにすごく“若い”映画に見えました」としみじみ語る。

 自身が演じた坂下くんの注目ポイントについては、「クライマックスで坂下くんが“ある行動”をしてしまうという天然さ」とアピール。きれいなフランス語も披露しているが、「あんなのぎりぎりです」と苦笑いし、「練習場に通訳として行っているけど、隣で(世界的な指揮者の)ロンバール(役)がカットがかかるまでアドリブで言ってくれたのですが、まったく分からなかった(笑い)」と打ち明ける。

 順調にキャリアを重ねる中で、坂口さんは「お芝居を始めた時は演出家や監督が言うことを100%やることに意識が向いていたのですが、最近は少しそういうところで“自由”になってきた気はします」と実感し、「もちろん監督の話も聞くし、それに合わせようと努力しますが、そこに自分の要素を少し入れてもいいんだなということに気付いた」という。そして「お芝居をするとき100%そのキャラクターになりたいとは思ってなくて、5%ぐらいは自分が残っている方が面白いなと思う。95%の役と5%の僕が合わされば、100%を超えられる気がやっと最近してきたな、というのがあります」と自信がついてきたという。

 それでもなお、「10人見る人がいたら10人それぞれが役に対する感覚は、似ている部分もあるだろうけれど違うから、ずっと終わりがない山道を登っている感じがします。頂上はあるだろうと信じてるけれど、実はもしかしたらないかもしれなくて。でも頂上があるからこそ登りたいみたいな感じは面白い」と意欲を見せつつも、現状については「まだスタートダッシュを切る手前ぐらいで、『よーい、スタート!』の前の靴ひもを結び終わったくらいかなと思います」と謙虚に語った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1991年7月11日生まれ、東京都出身。男性ファッション誌「MEN’S NON-NO」専属モデルとして人気を集め、2014年公開の「シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸」で俳優デビュー。以降、映画やテレビドラマ、CMなどでも活躍。16年は、映画「残穢-住んではいけない部屋-」、「64-ロクヨン-前編/後編」、“月9”ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(フジテレビ系)NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」、「重版出来!」(TBS系)など話題作に多数出演。主な映画出演作に「予告犯」「海街diary」「ヒロイン失格」「俺物語!!」(すべて15年)などがある。17年には出演した「君と100回目の恋」の公開を控える。

 (取材・文・撮影:遠藤政樹)

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