穏やか貴族の休暇のすすめ。
第12話 「リゼルのいない国」
4月1日(水)放送分
「BL(ボーイズラブ)」という言葉や概念が、バラエティー番組や一般誌の特集で取り上げられるケースも増えてきた。しかし、“腐女子”にとっては取り上げられ方に違和感を覚えることも少なくないという。自身も“腐女子”という“オタレント”の小新井涼さんが、その違和感を独自の視点で分析する。
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男性キャラ同士が結ぶ“友情以上の絆”に思わず妄想をかき立てられてしまう、女性人気の高い作品は昔からたくさんあります。少し前だと「TIGER&BUNNY」、最近だと「ユーリ!!! on ICE」などがそうでしょうか。ところが最近、そうした作品を語る際に、一般誌でも「BL(ボーイズラブ)」という言葉が使われているのを目にすることが増え、いわゆる“腐女子”である自分は少し違和感を覚えています。というのも、一般誌やテレビで“普段BLを嗜好しない人が使うBL”と、“BLをたしなむ人が思うBL”とでは、その言葉の意味が違っているように感じるのです。果たしてその違いとは、違和感の原因とは何なのでしょうか。
まずは違和感の原因ですが、それにはBLをたしなむ者の鉄のオキテ「公の場では絶対にBLを語らない」が、関係していると思います。ちなみにここでいうBLとは、公式設定としてBLが描写される“オリジナル・商業BL”というよりも、アニメ作品やマンガなどを元にした“パロディーのBL(前者と区別するため「やおい」と呼ばれることもあります)”のことを指します。
そこで語られるBLは、原作とは違う世界線での出来事、いわば完全な“ファンタジー”です。たとえ原作にBLをほのめかす描写が含まれていたのだとしても、たとえそれが制作者の意図したものであったとしても、それらはBLと呼んだ途端、勝手に妄想したアンオフィシャルな設定になります。BLをたしなむ人にとっては、BLをたしなまない人も目にするような場で、そうした非公式な妄想を語ってしまうのは、完全なマナー違反なのです。作品を語る際に公然とBLという言葉が使われているのをみて、違和感を覚えてしまうのはそのためでしょう。それはBLをたしなむ人にとって、秘密を暴かれるような、必死に隠していた遊び場に土足で入られるような、危機感と羞恥心を抱かせることなのです。
こうした事態が起きてしまうのも、やはりBLを嗜好しない人と、している人との間で、BLという言葉の意味、つまり“何をBLとするのか”に違いが生じているからではないでしょうか。一般的にBLとは、「男性同士の恋愛」を指す言葉とされています。そのためBLを嗜好しない人は、男性キャラ同士の過度なスキンシップや濃密な関係など、アニメやマンガに出てくる“それっぽい描写”をみて、それをBLと判断することが多いようです。
しかしBLをたしなむ人にとっては、そうしたシーンや関係性はあくまで“妄想のための素材のひとつ”にすぎず、それだけではBLにはなりません。そうした描写を素材に彼らの恋愛を妄想して初めて、それがBLとなるのです。たとえキスやハグなどの描写があったとしても、それでBL妄想をする人もいれば、そこにはBLを感じず、純粋な友愛や師弟愛、相棒の絆などとして解釈する人もいます。そうかと思えば、BLを嗜好しない人がみたら絶対にBLとは思わないような、全く絡みのないキャラ同士や何気ないシーンでさえも、妄想次第でBLにできてしまうのです。おそらくそこが、一番の違いなのではないでしょうか。私が思うに、BLをたしなむ人にとって、BLとはアニメやマンガに出てくるそれっぽい描写のように“作品に含まれ、提示されるもの”ではなく、“自分たちで勝手に解釈し、妄想して初めて生まれるもの”なのです。
BLをたしなむ私にとってこうした違和感が生まれるのも、今やBLをたしなまない人たちまで、それっぽい描写を見て「BL的だな」と思えるほど、この言葉が広まった結果なのだと思います。しかしそうだとしても、やはりBLという言葉を使って作品を説明されることには、どうしても違和感がぬぐえません。
BLが作品人気の理由のひとつとされることへの違和感もありますが、なによりそのBLという表現に対して、「ちゃんとそれを“ボーイズのラブ”だと思ってる?」という疑問がどうしても湧いてしまうのです。先ほどBLは“作品に含まれ、提示されるもの”ではなく、“自分たちで勝手に解釈し、妄想して初めて生まれるもの”だと言いました。だからこそ、たとえ男性キャラ同士が濃い絡みをしているからといって、見ている人がそこに“ラブ”を感じないのであれば、それにBLという表現はあてはまらないと私は思うのです。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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