ダンダダン
第12話「呪いの家へレッツゴー」
12月19日(木)放送分
人気アニメ「プリキュア」シリーズの最新作「わんだふるぷりきゅあ!」の劇場版「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ ゲームの世界で大冒険!(映画「わんぷり」)」で、公開日の9月13日に大きな“ネタバレ”が発表されSNSでは話題を集めた。とかく賛否両論が飛び交う“ネタバレ公開”について、それぞれの作品ならではの特性も絡めてアニメコラムニストの小新井涼さんが解説する。
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現在、好評上映中の映画「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ ゲームの世界で大冒険!(映画「わんぷり」)」。その作中の“みどころ”が、公開初日に公式から情報解禁されたことが、先月話題になりました。
最近は、公式が後日わざわざ“ネタバレ解禁のアナウンス”をするほど、公開後はしばらくSNSでのネタバレが自粛されることも多い中、本作のように初日から公式が情報解禁するのは珍しいことです。映画の情報解禁タイミングは、公開当日解禁と後日解禁で何がどう変わって、一体どちらが望ましいのでしょうか。
今回、映画「わんぷり」公開日に情報解禁されたのは以下の2点です。まずはレギュラーキャラクターの1匹であるうさぎの大福が“ついにしゃべり”、そのCVが中村悠一さんであること。さらにその大福が人間の姿になり、マブダチである悟と共に“変身”することでした。
動物たちがプリキュアに変身する本シリーズということで、「いつかしゃべるんじゃないか……」と期待されていた大福が遂に、それも中村悠一さんの声でしゃべるというのですから驚きです。更に、昨年の男子レギュラープリキュア初登場の後とあって、「いつか変身するんじゃないか……」と期待されていた悟とともに変身までするというのもかなり衝撃的な情報でした。
今回解禁されたのは、まさにそんな、テレビシリーズ視聴者には「映画も見逃せない!」重大情報であると同時に、だからこそ「公開初日にそれ解禁しちゃうんだ!?」という驚きの内容でもあったのです。
公開後はネタバレ自粛ムードが漂うことも多い昨今、今回本作で公開日に重要な情報解禁が行われた理由としては、「わんぷり」(もとい「プリキュア」シリーズ)が、キッズファミリー層をメインターゲットとした作品であることも大きいように思います。つまり、あまり出し惜しみをして機を逃すと、ネタバレが解禁されて大人たちが「これは見なきゃ!」と思う頃には、鑑賞できる上映回がなくなってしまう可能性が高いのです。
実際に、公開から約1カ月が経過した現在の本作の上映時間をみていただければよく分かりますが、大ヒットに加えまだまだ上映館も多いとはいえ、既に上映時間は朝か遅くて夕方ぐらいとなっています。ハイターゲット向けのアニメ作品であれば、まだまだ会社勤めの大人たちも行きやすい午後7時以降の上映回もあるタイミングでしょう。しかしそれらの作品と違い、あくまでメインターゲットがキッズ・ファミリー層の作品は、公開後1カ月ほどで、土日はまだしも、平日は完全に“会社終わりに見に行ける時間帯”での上映はなくなってしまうのです。
そうであれば出し惜しみせず、大人たちも見に行ける上映回があるうちに、情報を出してしまうのもひとつの手なのかもしれません。そうすることで実際に、鑑賞を迷っていたけれど、初日の情報解禁で背中を押され、行きやすい上映回があるうちに映画館に行けた自分のような大人もいるのではないでしょうか。
とはいえ、映画館で知って新鮮な気持ちで驚きたかったと、残念に思う人も当然少なくはないはずですので、そこはバランスの難しいところ。今回の初日情報解禁も、恐らくその点には苦慮しつつ、それでもキッズ・ファミリー向けという本作ならではの特性を考えて、より多くの人に作品を届けたいと選ばれた対応だったのかもしれません。
ネタバレでがっかりする人と、ネタバレのおかげで興味を持って見に行きたくなる人。どちらも大切なファンであることは間違いありません。ネタバレ解禁や情報解禁は遅ければいい、早ければいいというものではなく、作品やその主な観客層、上映規模といった様々な要素によって、その作品に最適なタイミングがあるものなのだと思います。
こあらい・りょう=KDエンタテインメント所属、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約10年前から継続しつつ、学術的な観点からもアニメについて考察・研究し、大学や専門学校の教壇にも立つ。アニメコラムの連載をする傍ら、番組コメンテーターやアニメ情報の監修で番組制作にも参加している。
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