家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機、スマホゲームに加え、VRも登場し、ユーザーの好みが多様化しているゲーム市場。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「ワールドワイド・スタジオ」で、ソフト戦略・開発の責任者「プレジデント」の吉田修平さんに、SIEのソフト戦略や復刻ゲームについて聞いた。
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--ユーザーの好みが多様化している。ソフト開発はどこを重視するか。
ファーストパーティー(ゲーム機のメーカー)としては、やはりPS4とPSVRになる。我々が作るのは「PSプラットフォームでしか遊べないゲーム」で、それは初代PSのころから変わっていない。そしてゲーム機には、導入期、普及機、拡大期があり、狙うユーザーや戦略も変わる。PS4は世界的には拡大期だが、日本ではまだ普及期のただ中だ。もちろん並行して人気シリーズの続編も作らないといけないが、同じぐらいの力で、新しい体験ができるソフトの開発に力を向けている。PSVRはその典型で、最初は市場がない中で取り組むなど先行投資をしている。意識して開発のリソース(資源)を割り振っている。
--「ファミコン」の復刻ハード「ミニファミコン」が話題になった。PSの“復刻ハード”を出す考えはないか。
どうだろう。(復刻ハードの発売は)できないことはない。ただ個人として思うのは、(ファミコンやスーパーファミコンの2Dのグラフィックとは違い)初代PSは、3Dのポリゴングラフィックスということ。20年が経過した今は「アンチャーテッド」などのすごい3DCGのゲームがある。その中で、当時の(3DCG)ゲームをそのまま出すのはどうだろうか疑問だ。昔のゲームをそのままユーザーの目の前に出すよりは、手間はかかっても今の技術で作り直して、記憶の中の美しさにするのがニーズに合っている気がする。もちろんユーザーが昔のPSゲームを「懐かしい」と感じるのは理解できる。
--PS4にはリメークタイトルが多く出ている。
PSやPSPの人気タイトルだった「パラッパラッパー」や「ロコロコ」を4Kで作り直して、PS4で出したところ、ユーザーから喜ばれている。やはり私は、どちらかといえばリメーク派だ。一度初代PSの“フィギュア”を作ったときがあるが一瞬でなくなったように、初代PSにはユーザーの愛着があると思うし、それは家庭用ゲームの強み。多感な時期に影響を与える小説や映画と同じで、それがスマホゲームとの違いだと思っている。
ーーゲームユーザーの拡大戦略に手を打っているか。
子会社の「フォワードワークス」がスマホゲームの「みんゴル」を配信し、その後にPS4版の「New みんなのGOLF」を出したところ、うまくPS4版に興味を持った人がいると聞いている。PSのIP(コンテンツ)に興味を持つきっかけになっていると思う。また、小学館と協力している新プロジェクト「キッズの星」では、子供向けのIPを展開するべく動いている。これもユーザー拡大を狙った新しい取り組みだ。
――eスポーツには力を入れないのか。
PS4は、ソーシャルなつながりを持たせ、ゲームユーザー自身が情報を発信して楽しむことを意識して作ったゲーム機だ。そしてPS4のコミュニティー活性化の一つとして、eスポーツは我々の目指す方向には合っている。
例えば「グランツーリスモSPORT」(PS4、10月発売予定)は毎週トーナメントを組み、「7歳から77歳まで楽しめるスポーツ」の触れ込みで、草の根レベルから、FIA(国際自動車連盟)と組んだ世界一を競う大会まで、いろいろなスキルの人が楽しめる。トップクラスの競技的なeスポーツだけに限らず、草野球のように誰でもゲームを楽しめることが大事だと思っている。
よしだ・しゅうへい=1964年生まれ。86年にソニー入社。93年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現SIE)へ。2008年から現職。同社ソフト部門の戦略・開発の責任者。
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